3.仲間⑤ 光と闇を纏いし中二病
……うーむ。
どう攻めるべきか。
俺の攻撃はどちらかと言えば、肉弾戦よりのものが多い。
女子を組手とは言え殴打するというのも気が引けるし…。
そんなことを考えていると、中二病全開女子、福山は右手に巻いていた包帯をほどき始めた。
そして、包帯をほどいた手を前にかざす。
あれは……仕込み魔法陣か?
福山の手のひらには、魔法陣のようなものが描かれており、それが光り始めたと思ったら魔法陣から先端に銀色のマナストーンがはめ込まれた杖の形をしたSギアが表れ、福山はそれを手に握った。
「ふっふっふ……、我が力の前にひれ伏すがいい……。白く輝く光よ、聖なる力を持って敵を討て、“ライトニングジャベリン”!」
福山が杖をかざし、詠唱を唱えると幾つかの魔法陣が空中に表れ、そこから複数の光の槍のようなものが俺めがけて飛んできた。
「くっ……!」
防ぐよりかは避けた方がましだと判断した俺は、すかさず飛んでくる“ライトニングジャベリン”を全てかわしていく。
「我の攻撃をかわすとは中々やるではないか」
「そりゃどうも!」
俺は全ての攻撃をかわしきると同時に、前に突っ込んで攻撃態勢に入る。
光属性の魔法には少し驚いたけど、避けられない攻撃じゃない。
「“疾風波”!」
そこから、右の手のひらの照準を福山に合わせ、突風の衝撃波を放つ。
これで場外まで飛ばせればラッキーだけど……。
「守れ。“プロテクト”!」
しかし、福山は“プロテクト”で俺の“疾風波”を防ぐ。
「ふっふっふっ……。その程度の攻撃、我には効かぬ……!」
このやろう……何かちょいちょいイラッとくるな。
「地獄より這い上がり闇へと引きずり込め、“デーモンハンド”!」
今度は闇魔法か!
俺の周囲の床が急に黒く染まったと思ったら、そこから無数の黒い手が表れ俺の足を掴んできた。
そして、そのまま足下の黒い闇へと引きずり込もうと引っ張ってくる。
というか、これちょっとやばくね?
「はっ!」
俺はフォースを開放し、レッドモードになる。
「はっ……かっこいい!」
何か向こうから聞こえた気がしたが、俺はそんなのお構い無しに、この“デーモンハンド”を突破するため右手に波動を溜め、拳を握った。
「“メテオスマッシュ”!」
そして、真下の黒く闇に染まっている床に向かって拳を思いきり降り下ろした。
拳が直撃すると、その衝撃で爆風が起きて“デーモンハンド”は消え去った。
「……ふう」
「……ふっ、ふっふっふっ。我が“デーモンハンド”を打ち破るとは中々やるではないか……。その紅蓮に染まりし眼に紅蓮の炎……貴様、選ばれし者か…。ふっふっふっ、面白い! ならば、我も少し本気を出そうではないか!」
こいつが中二病というところから、俺のフォースが朱雀の力とわかって言っているのか、それとも単に出まかせだけで言っているのかわからないが、何となく後者のような気がする。
とりあえず、福山が見せたのは今のところは光属性の魔法と闇属性の魔法の2つ。
これだけでもかなりやっかいである。
別に、軽い組手だから正直なところ勝敗はどっちでもいいが、中二病のやつに負けたとなればなんか嫌だし、何より福山がテンション上がって本気出すとか言ってるので俺も手を抜いてはいられない。
ふと、タイマーの時間に目をやると3分を切っていた。
残り時間、俺的にはあいつの攻撃をどうにか流してタイムアップを狙いたいところだが……。
「黒き闇の魂よ、その力を持って敵を破壊せよ、“ダークキャノン”!」
「“火炎刃”!」
黒い闇属性の砲弾が発射され、俺はそれを両手の“火炎刃”をクロスさせてガードする。
しかし、“ダークキャノン”の威力は想像していたよりも重く、中々弾くことができない。
「ふーはっはっ! 我が攻撃を前に苦戦しているようだな!」
さらにテンションを上げる福山。
「そんな貴様にさらなる絶望を与えてやろう!」
そう言って福山はSギアの杖に自分の魔力を流し込み、Sギアを起動させる。
「我が最強魔法を喰らうがいい!」
Sギアの先端にある銀色のマナストーンが輝き出し、福山の全身から魔力が溢れ始める。
「―――天より舞い降りるは輝く希望の白、地より這い上がるは暗き絶望の黒―――」
おい待て、なんだそのちょっと大技出しそうな雰囲気の詠唱は。
あいつ、これが組手だってこと忘れてないか!?
そう思い、“ブラックキャノン”に何とか耐えつつ福山の顔をチラッと見る。
……完全に忘れてるなこれ。
福山の顔は上がりきったテンションのせいなのか、目は瞳孔が開き、表情は歓喜の顔で、完全にいっちゃている顔だった。
「2つの力ぶつかり合いし時、世界は混沌に導かれる。その先に訪れるは吉か凶か……、その目で確かめるがいい!」
「オラァッ!」
福山が詠唱を唱えると同時に、俺は“ブラックキャノン”を弾き飛ばし、すぐさま迎撃態勢に入る。
ひしひしと感じるこの圧倒的な力は間違いなく上級クラスの魔法。
……あの技じゃないと防ぐのは厳しそうだな。
そう思い、技を出す構えに入る。
「“ヘヴンズヘ……」
「そこまでだ」
「あうっ!?」
福山の魔法に合わせ、カウンターでフォースを発動しようと構えていると、いつの間にか審判をしていた六花先生が福山の後ろに回り込み、後頭部にチョップをかましていた。
「やりすぎだ。日向を殺す気か」
冷静に、そして諭すように六花先生は言う。
福山は我に帰ったのか、一瞬で赤面し、小さくはわわと慌てふためく。
そして、ビーッと鳴り響くブザー。
タイマーの数字が00:00になり、組手終了の合図を鳴らしていた。
「ふ……ふっふっ……わ、我としたことが……少し……や、やりすぎてし……しし…しまったようだ…な…」
明らかに動揺しながらもキャラが崩れない福山。
「はあ……」
とりあえず、難を逃れることができた俺はレッドモードを解除し、気を緩める。
「大丈夫か日向?」
「ええ、まあ」
「ふっふっ…」
六花先生が俺の心配をしてくれていると、福山はぎこちなく笑いながらコートから離れ、そのままどこかに行ってしまった。
「先生。福山、どっか行っちゃいましたけど…」
「頭でも冷やしに行ったんじゃないか? 試合の時以外は自由でいいって言ったし、まあ大丈夫だろう」
その凛とした見た目や声とは裏腹に、割とフランクな六花先生。
「さ、次の組、出てこい」
そして、次の試合の組が呼ばれ、俺はコートから出た。
……何だろう、たった5分のことだったのにどっと疲れた。
その後、俺の後に行われた試合は滞りなく進み、レクリエーションは無事に終わりを迎えた。
ちなみに福山であるが、しばらく経ってから特訓場Aに戻ってきて、Ⅰ組の試合を体育座りで見ていた。
時々、俺の方をジーっと見てきたりもしたが、特に話しかけてくる様子もなかったのでスルーした。




