Episode23「ヴェルサンド」
ヴェルサンドは、噂に聞いた通りに華やかな街だった。マルカスへ潜入したときと同様、闇深い真実が隠れているようには思えなかった。
「わあ、すげぇ…」
「さすがは貴族の街…」
だが、もたもたしている時間はない。正午の社交パーティーの時間が近づいていた。
「本日はお集まりくださり、誠にありがとうございます。それでは優雅な一時をお楽しみください。」
周りの貴族たちは演奏に合わせて社交ダンスを初めた。
「(いい?優雅な振る舞いを意識するのよ。)」
四人は振る舞いに十分に気をつけながら、事前に練習した社交ダンスをした。
すると、隣にいた貴族たちが話しかけてきた。
「あなた方、どちらのご令息で?」
ノアは軽く胸を張って言った。
「はじめまして。私はルーヴェン伯爵家の者で、地方の発展のためにヴェルサンドを視察に来ました。」
続いてローラも語り始めた。
「ここの流通システムには非常に興味がありますわ。特に、話題になっている『特別な取引』について知りたくて……。」
「ルーヴェン家か…聞いたことがないな。まあいいや。」
「でも、地方の貴族がヴェルサンド市場を語るなんて、ね…?」
「ところで、ここへは初めてお越しで?」
気がつけば、周りは他の貴族たちで囲まれていた。
「地方貴族とおっしゃっていましたが、どこの地方からお越しになられたのですか?」
貴族たちは四人をさらに問い詰めた。
「(くっ…)」
「まさか、答えられないなんてことはないでしょうね…?」
To be continued…




