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行き場を失ったモンスターの雇用先はーー

 魔法少女のオフィスには、拘束された7人の男たちが柱に縛り付けられていた。姿こそ人間ではあるが、その頭からは角や触覚が生え、背中や臀部にも何かしらが接続されていた。

 そんな男たちを魔法少女たちと妖精たち、そしてイチたちが囲んでいた。


「で、どちら?」


 葉瑠がディオに尋ねる。だが、ディオは知らない、とばかりにぶんぶんと首を横に振った。

 代わりに葉瑠とは一応顔見知りのナリが口を開く。


「幹部」


「何の!?」


「敵」 


「っ! 私たちが追っていたやつら! いったいどうやって見つけたのよ!」


「倒した」


「あんた会話するつもりないわね!?」


 葉瑠がすかさずナリを追及するも、ナリは涼しげに目を反らした。その目線の先はもちろんイチだ。


「見つけたのは俺やで」


 ウォールがすっと前にでる。魔法少女たちの視線がいっきにウォールに注がれたことに、当人はだらしなく顔を歪めては言葉を続けた。


「なにせ、俺の敵も同然やからな」


「どういうことっ!?」


「俺の天敵の気配を辿った先にな、元悪の組織を尻に引いた俺たちの敵がおったんや。だから、ひと暴れしてこうして連れてきてやったさかい」


「はあ? 悪の組織? 私たちが追っていた敵は、あなたの敵に吸収されていたってわけ? なら、あなたの敵っていったい何?」


 葉瑠がすかさず問い詰めれば、ウォールはくるりと敵に向き直った。


「どこから来たんか言え」


【誰がっ……貴様らの言うことなど!】


 抵抗するかのように男たちがウォールを睨み付ける。そのまま頑なに口を閉ざしていた男たちにあきれたようにウォールがナリを男たちの前に押しやった。

 「触るな」と、一言言いはなったナリが触られた部分をシートで拭い、真顔で敵へと近づいていく。

 ナリを見て身体に仕込まれた恐怖を思い出したのか、男たちがガタガタと震え出した。


【わかった、わかった、話す!】


【ひっ! もうあんな目には合いたくねぇ!】


「早く」


 異常にナリに怯える敵に、一体自分が闘っている間に何が行なわれていたのかと、人知れずディオが首を傾げていた。


【俺らは、ヒーローどもがいる世界からやって来た】


【見知らぬ恐ろしい女に連れられてなぁ!】


 とたんにイチは顔をしかめ、「見知らぬ恐ろしい女」という言葉にケンがイチを指差した。

 その指をナリがポキッと折る。


【ひっ! 人間恐ろしっ!】


「で? 他に情報はないんですか? その恐ろしい女とやらに」


【知らねぇ! 俺らはそもそもヒーローどもから逃げ出すみたいで嫌だったんだ! なのに、そいつが俺らを無理やりこっちにやった!】 


【それからは女の指示どおり、元々こっちにいたモンスターたちを支配して、人間どもをモンスターにして、悪の組織を拡大する手筈でしたぁあ!】


「てことは、増えたモンスターは元人間てわけ?」


 葉瑠が問えば、モンスターたちは大きく頷いた。


【ああ、人間だ。人間をモンスターにすれば、知能を持ったモンスターが増えるからな】


 ショックを受けたように葉瑠がその場に座り込む。亜利砂も顔を真っ青にして口に手を当てていた。


「美乃がいなくてよかったですわ。」


 亜利砂がボソリと胸の内を口にした。

 美乃と文月は負傷したまま目を覚まさず、現在治療の最中だ。人一番優しく、臆病な美乃だ。真実を知れば、きっと立ち直れないだろう。そこだけは安堵しながらも、亜利砂も亜利砂でショックを受けていた。それを他の魔法少女たちがなんとも言えない様子で見つめていた。

 それとは別に、激しく動揺していた男がいる。ディオだ。ヴィーランズが頭脳を持ち、人間と同じように話すということはディオの世界では考えられなかった。自我を失ったヴィーランズは到底話すことも頭を使うこともない。それが異世界ではごく普通に行っている。それも二度もだ。

 難しげに眉を寄せるディオの肩をウォールが叩いた。


「ま、人間捨てて再び人間ぽくなったわけや。やつらは再び『恐怖』を理解できるようになったんや。それが『進化』のせいかピンクガールの『強制的恐怖治療』のせいかはわからんがな」


「それはそうだが……」


「『恐怖』がわかるんや。つまり、敵との立場は単純な力関係で決まるわけや」


 シンプルでええやんか、と付け加えるウォールに、すかさず葉瑠が非難をぶつけた。


「簡単に言わないでよ」


 葉瑠がきっとウォールを睨み付ける。


「今までだって必死に戦ってきた! だからわかる! そいつらは人を傷つけずにはいられないの! 今はその子がそいつらを脅していても、そいつらは反逆の機会を狙ってんの! そういう生物なのよ!」


 興奮したように、葉瑠が拘束された男たちを指差す。それを岬が優しく制した。


「葉瑠。」


「岬!?」


「あのさ、私たちがはじめてモンスターやっつけたときのこと覚えてる?」


「もちろんよ! みょんを助けて……」


『みょん……』


「あのときはさ、言葉を通じない化け物を相手にしてさ……やりがいはあったけど大変だったよ。それが今は化け物も進化してるんだって……私たちも変わらないと負けちゃうよ」


 葉瑠がぐっと唇をかんで俯けば、亜利砂が遠慮がちに口を開いた。


「私、そちらのパープルさんのお言葉には賛成いたしますわ。自我のある化け物でしたら、姿の変わった人間に違いありませんもの。交渉できる相手には交渉した方が被害は少なくなると思いますの。人を襲い、交渉もできないような相手を私どもがぶっつぶすのはいかいかがかしら?」


「交渉なら私もできる! 私も葉瑠の任務に携わりたいんだ!」


 岬が勢いよく葉瑠の手をとれば、葉瑠は観念したといわんばかりにため息を吐いた。


「わかったわよ……。亜利砂の方針でいきましょ」


 葉瑠の言葉に、岬が葉瑠にガバッと抱きついた。レイと春名もそれに続いて二人に抱きつく。


「二人はいませんが、私たちもですわよ」


 亜利砂がその上から抱きつけば、その下で葉瑠が照れくさそうに笑っていた。



             ◇



「さて、うちらはどうするか。」


 葉瑠たちの増援にかけつけた少女たち15名を代表するかのように、金髪の少女が口を開いた。


「あんたらも魔法少女でしょ?」


 葉瑠が恥ずかしげにいえば、金髪の少女は苦笑いでそれに答える。


「いや、うちら、最初戦う意図すらなくて、あんたらに頼りっぱなしだったろ」


「前はそうでも今は!」


「ありがとよ。でもな、うちら、実際足手まといだった。いまだにあの戦いの恐怖は湧いてくるしよぉ」


 金髪の少女が言えば、他もウンウンと頷いていた。


「だから、魔法少女継続はやめとくわ」


「そう……」


 葉瑠が頷いたときだった。


「よく見たら、人型のモンスターってイケメンなのね。」


 金髪の少女の後ろにいた一人がボソリと呟いた。それに反応するかのように他の少女たちもモンスターたちを見つめる。


「あら、本当だ」


 よく見ればモンスターがイケメンだと判明したとたん、元魔法少女たちは興奮したようにはしゃぎ出した。もはやその露骨な豹変の仕方は素直とでも言うべきほどである。

 少女の一人が興奮したように叫ぶ。


「やっぱり、異世界ではイケメンありきよねぇ!」


「上院様と引き離されてから、本っっっっ当に毎日くそゲーだったもの!」


 「上院」という言葉に反応したのはイチとケンだった。やはり、彼女たちはあの仮初めの乙女ゲームの世界を経由していたのだ。  

 そして、イケメンたちに持て囃されるという幸せを一度は味わった彼女たちのことだ。急に異世界にて、魔法少女としてモンスターと命懸けで戦うことを受け入れられるはずがない。魔法少女として称賛されることだけがモチベーションになるのは仕方がないことだった。

 数名の少女がキャッキャッと騒ぎながら人型のモンスターへと駆けよっていった。


「お兄さん、乱暴してごめんね。」


「大丈夫? ここ怪我しているよー。」


 少女たちが怪我したモンスターたちに優しく寄り添う。いくら拘束されているとはいえ、まるでナンパをするかのようにモンスターに近づくのは、彼女らが元魔法少女だからだろうか。

 そして、それに困惑したのはモンスターたちである。今まで、蔑んだ目で攻撃をぶっ放してきた少女たちが、180度変わって優しく触れてくるのだ。当然、モンスターたちが怒り、拒絶するのも当然なのだ。


「なんだ、貴様ら、気持ち悪い! 急に態度を変えるとは「お兄さん、口元切れてる……!痛くない?」……へへ、だ、大丈夫だ」


「おい! 情けないぞ! こいつらは敵「お兄さんの手大きい! キャァ! 格好いい!」そうだろう」


 怒るのも当然なはず、なのではあるが、いかせん根は欲望に忠実なモンスターだ。思いがけないモテ期に、モンスターたちが顔をだらしなく緩めていた。

 それに葉留や亜利砂たちが顔をひきつらせていたのはいうまでもない。


「なんなのよ、あの子たち」


「不潔ですわ! 男の人ってだけでも汚らわしいのに、あれらはモンスターですわよ!?」


「まるでホストと客じゃない。いや逆かしr「「それよ!!」」


 葉留の呟きに、一斉に女子たちが反応した。

 モンスターの行き場が決定した瞬間だった。

       

         


            ◇



「まずは、ホストとは何かを学んでもらいます。」


 モンスターのホスト化が決まってからというものの、モンスターたちはホストとしての修行が第一課題となった。ホスト候補としては7人の幹部たちと、顔を人型に変えられる能力持ちのモンスター21体だ。不毛な争いの終止符を打つべく、彼らはホストとして人間界に貢献する約束が交わされた。一応、魔法少女たちが監視に徹することにはなってはいるが、約束を破ればナリがまた来る、ということで、彼らは必死でホストになりたがった。顔が人に変えられないモンスターは、時期を見て徐々に接待の場に馴染ませていく戦法だという。

 女型のモンスターは男装カフェを開くのだと張り切っていた。

 そしてそんなモンスターたちにホストの心得をレクチャーするのは管理人たちだ。

 正装に身を包んだイチがホワイトボードの前に立ってモンスターたちを見渡した。


「まず、ホストに一番大事なこと。それは何でしょう?」


「顔だろ」


 すかさずそう口をこぼすモンスターたちに、イチがチッチッと前に出した人差し指を横に降った。


「某ホスト業界の帝王によれば、ホストに大事なのは顔よりも相手を楽しませる力。すなわち、トーク力、会話力、対人能力、キャラの維持! 顔は二の次なのです。そもそもあなたたち能力持ちは顔を変えられるんですから、大事なのは前者です! ちなみにーー」


 くだらない、といわんばかりに顔の半分がモンスター化していた緑のクリーチャの頭に、ナリが投げたペンがぶっ刺さった。


「顔を維持できなければこうなるぞ」


 瞬間移動したナリがモンスターの耳元でそう呟く。真っ青になったモンスターがすっと人間の顔に戻っていった。意識が崩れたからか、その顔はイケメンではない。


「ちなみに、規定の姿を維持できなければーー」


「こうなるぞ」


 ナリが再びモンスターの頭にペンをぶっ刺した。


「なんやかんや言いましたが、慣れるが早し! 女性型モンスターたちを練習相手にうちの男性スタッフが模擬営業を行うので見て学ぶように!」


 イチの言葉に、ケン、ウォール、ディオ、隆平が頷いた。

 小説のルールを破っていたことを最近知って、今回から気をつけてみました。徐々に今までの分も修正していきます。読みにくかったですよね……すみません。

 

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