↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/4

序章 青い記憶と沈黙の船

昔話『浦島太郎』を、私とAIの相棒達と協議しながら、SFに仕立て中です。


舞台は、昭和57年の三浦半島。深海に眠る未来人の都市「竜宮城」と、地上の小さな港町を行き来する、愛と葛藤の物語です。


【登場人物】

・浦島小太郎:十五歳。三浦半島の港町で育つ少年

・ユキ:母

・千春:町の修理屋

・康児:漁師。ソラの父

・ソラ:小太郎の幼馴染

・シロ:白い雑種犬

・乙姫:竜宮城の主

・クロード:竜宮城の参謀

・ジェミニ:竜宮城の天才頭脳

・ジャック:竜宮城の特殊部隊リーダー


遥か昔、崩壊の危機に瀕した未来の星から飛び立った巨大な影があった。


それは重厚な装甲と異様な曲線を持ち、あたかも巨大なカブトガニの姿を模した無機質な宇宙船だった。幾光年もの孤独な漂流の果て、その船が辿り着いたのは、蒼く輝く太古の地球——その深く静かな海底であった。


未来人たちは深海の底に光り輝く密閉都市「竜宮城」を築いた。

自らの存在を隠し、地上世界の文明の営みをそっと見守るため、彼らは各地に「工作員」を配置した。


——そして時代は流れ、昭和57年(1982年)。神奈川県、三浦半島。


夏の太陽が眩しく照りつける港町に、けたたましい蝉時雨と潮風の匂いが満ちていた。


「小太郎くん! 早くしないと置いてっちゃうよ!」


「待てよソラ! シロが勝手に走っていっちゃうんだよ!」


麦わら帽子を飛ばしそうになりながら波打ち際を駆けていく15歳の少年、浦島小太郎。その隣で弾けるような笑顔を見せるのは、幼馴染のソラだ。白い雑種犬のシロが、嬉しそうに二人の前をタタタッと走り抜けていく。


夕刻になれば、小さな平屋から香ばしい夕飯の匂いが漂う。


「おかえり、小太郎」


エプロン姿のユキが温かい笑みで出迎え、小太郎は大盛りのおかわりを口いっぱいに頬張る。

町の修理屋である千春は、タバコの煙を燻らせながら壊れたラジオのハンダ付けをし、ソラの父親である漁師の康児は、豪快な酒焼けした声でその日の漁の成果を語る。


そこにあるのは、どこにでもある、けれど何にも代えがたい「昭和のささやかな日常」だった。


だが——その日常のすぐ裏側で、深海の影は静かに蠢いていた。


漆黒の深海700メートルに佇むカブトガニ型の巨船——海底都市「竜宮城」。

その最奥の玉座で、美しい女性乙姫が静かに瞳を伏せていた。


「ねぇ、クロード。実はね……地上へ逃がしていた王子を連れ戻す計画があるの。あなたが指揮を執ってくれないかしら」


重鎮のクロードは、静かに頷く。


「承知いたしました。……ただし、実行部隊の隊員は私が選ばせていただきます。よろしいですね?」


「ええ、任せたわよ」


乙姫様はそう告げると、傍らに控える天才頭脳へ視線を向けた。


「ジェミニ。王子の『帰国計画』の立案を始めなさい」


「——了解いたしました、乙姫様」


そして、二日後


「乙姫様、王子の帰還準備が整いました」


冷徹な参謀クロードが淡々と報告を口にし、傍らでジェミニが膨大な未来データを青い光として空中に弾き出す。


「王子・小太郎の持つ遺伝子コードと血統権限なしには、我が都市の維持システムは数年以内に限界を迎えます。海底に暮らす何万人もの民の未来と幸せを守るため……今こそ王子をお連れ戻しせねばなりません」


「……あの子を、地上へ逃がして15年」


乙姫の瞳に、切ない母性と指導者としての重圧が揺れる。


「あの子は地上で、人間として育っています……。けれど、民の未来を背負うのもまた、我が王家の宿命……」


指令を受け、冷徹な特殊部隊リーダージャックの隠密潜水艇が、静かに深海を蹴って三浦の海へと向かう。


地上で小太郎を育ててきたユキ、職人の矜持を持つ千春、そして三浦の海を知り尽くした海上工作員の康児。

彼らは皆、竜宮城の血と技術を知る者たちだ。そして何より、小太郎を心から愛している大人たちだった。


「小太郎の幸せな日常を、冷たい海底へ渡してたまるか」


「しかし、乙姫様の使命も、海底の民の平和もまた偽りではない……」


「……なら、大人がやるべきことは一つだ」


全員が小太郎の幸せを願っている。

けれど、背負う使命と守りたい未来が違うからこそ、彼らは譲れない正義を胸に激しく衝突する。


15歳の少年・小太郎が直面する、あまりにも残酷で巨大な選択。

昭和57年の青い海を舞台に、地上と深海を巡る「愛と葛藤の物語」が、今まさに幕を開けようとしていた——。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。