第85話 稽古しろ、稽古
神聖歴581年 冬の始め月 24日
ハラールさんの屋敷で歓待を受けた次の日。俺はロゼッタとザンムを引き連れてスワトンにあるパチン・コ流の道場へとやってきていた。
「おお、お前がコーケンの愛弟子か!」
「はい。お初にお目にかかります、オーマ師範代。こちら、パチン・コ師範からの手紙になります」
「うむ。役目、ご苦労」
「それと、こちらはコーケン師範代からとなります」
「うむ」
パチン・コ流の道場はサニムを中心にスワトン、レキストン、それに海を越えたカルデラの4か所に存在する。それぞれの道場管理はコーケンさんを含めた4人の師範代によって行われており、オーマさんはその内の一人でスワトンの道場を取り仕切っている。
彼に連れられて道場に入り、奥の方にある来客用の応接室へと通される。途中に道場を通ったのだが、サニムよりも規模が小さい町なのにスワトンの道場はサニムと同じくらいの門下生を抱えているようだった。
これは停戦したとはいえスワトンは対帝国の最前線となる場所であり、武の需要が多いということだろう。道場で稽古していた人たちも熱心に打ち込んでいるようだったし、扉を挟んだ今も門下生たちの声は聞こえてくる。
旅の最中も型稽古やらの時間を取らない稽古は行っていたが、流石にそろそろしっかりとした鍛錬を行いたい。オーマさんにちょっと頼んでみるかな?
「うむ……返書は急いでしたためるから、少し道場で待ってもらってもいいかな?」
「もちろんでございます」
「ああ、それと。体が動かしたいと顔に書いてるぞ。うちの若い者をつけるから、少し遊んでいくといい」
オーマさんはそう言ってニヤリと笑顔を浮かべた。あれ、表情は隠してたつもりだったけどバレていたか。斜め後ろからロゼッタが笑う気配を感じる。笑うなよ、他所の人に見られてるんだから。
オーマさんが声を一声かけると、扉を開けて体格のいい狼人種の青年が中に入ってきた。パッと見た感じ、見事な身ごなしだ。スワトンの道場は出来てからまだ5年くらいの筈だが、サニムの道場で指導員についている人たちとも遜色ない身動きに見える。
「こいつはフェンダー。うちで指導員をしている。フェンダー、こっちはサニムのコーケンの愛弟子とサニムの門下生二人だ」
「タロゥです」
「フェンダーです」
「長旅で体が鈍っているらしい。道場の一部を貸してやってくれ」
「分かりました」
立ち上がり、フェンダーさんに向かって頭を下げるとあちらもぺこりと頭を下げてくる。立ち振る舞いをしっかり値踏みしてくる。ただ、学ぶ師は違えど同門だ。立ち振る舞いだけである程度の所は見えてくるから、フェンダーさんも途中からは目じりを下げて俺たちを道場へ案内してくれた。
フェンダーさんに案内された先に居た数名の門下生に声をかけて、スペースを開けてくれる。うん、久しぶりに外部の目を気にせずに稽古が出来そうだ。
「サニムかぁ。俺は一度だけ、指導員の試験で行ったけど大きな町だったなぁ。劇場に行きたかったんだが、その時は旅費だけで手いっぱいで」
「確かに、あそこはちょっと庶民には手が出ない値段ですからね。外街にある見世物小屋なら手ごろな値段ですが、そっちだとやはり芸人の質が悪い。まぁ、今のサニムだとそれ以外にも見ておくべきものがいくつかあるんですがね」
「ほう。タロゥくんは芸事の方で食べているのかい?」
「そういう訳ではありませんが、まぁ。昔取った杵柄というもので」
折角だから一緒に組稽古をしよう、と誘われたためフェンダーさんと超低速での組稽古を行う。互いに一度の攻防を超スローで行うやり取りになるため、どれだけ効率的に攻防を行えるかが勝敗のカギとなるのだが20度ほど攻防を繰り返しても決着がつかなかった。
その間、互いに世間話を行っていたのだが、この会話が結構いい情報になるというか、スワトン近隣の情勢にフェンダーさんが結構詳しかったので、つい話し込んでしまったのだ。
現在、このスワトンの町には3名の豪商がいる。昨日世話になったハラールさんもその一人だ。で、この豪商たちはもちろん帝国との交易で富を築いたのだが、その3名でも若干の違いがあるらしいのだ。この違いとは、帝国側とどのような繋がりを持っているかという物である。
ムリーナスト帝国は現在、皇帝を頂点とした君主制を敷いているんだが、その中にも結構色々な派閥がある。皇族閥に貴族閥、貴族閥でも北部と南部といった具合に幾つか枝分かれしている感じだね。
その中でもムリーナスト内海に近い場所にあるハルノート市を拝領するハルノート侯爵が帝国側では交易に積極的らしく、ハラールさんはこのハルノート侯爵に直で面会した事があるという。つまりこの近隣の貴族閥とハラールさんは繋がりがある。
一方。帝国の経済と政治の中心は帝都シフラクトであり、最高権力者である皇帝の一族である皇族が当然強い権力を持っている。この皇族にパイプを持っている人が豪商の一人であるレックル氏だ。帝都は内陸部にあるのだが彼は帝国内でもある種特権階級である皇族の注文を直接受けているという事で都市国家連合の人間でありながら帝都向けの商隊を運営しているらしい。
もう一人の豪商は都市国家連合側に強い地盤があるメイアー氏で、彼は都市国家連合最大の都市であるカルデラに本店を構えるライゼン商会からのれん分けを受けてこの地に根付いた商人であり、当然その商いは帝国からの荷物をカルデラで捌くというものになる。
帝国側が2人に都市国家連合側が1人か。そう考えるとちょっと不安に感じるが、まぁ国境沿いの交易都市なんてこんなもんだろ。
「止めましょうか」
「そうだね」
そう声をかけると、ピタッと互いの拳が止まる。そのまま振り抜くと俺の拳がフェンダーさんの顎先を捉えて、フェンダーさんの蹴りが俺の鳩尾に入る事になっただろう。まぁ、引き分けと言っていい。
互いに体の緊張を残したまま、開始場所に戻り礼をする。ふー、流石は最前線スワトンの指導員、バリバリ実戦的な動きだった。
さて、良い運動したしザンムたちの稽古でも見るか、と顔を上げると、周囲にいた門下生たちがぱちぱちと俺とフェンダーさんに向かって拍手を送ってくる。
……ああ、うん、見稽古か。サニムでもよくやってるけど、拍手なんてもらったのは初めてだな。気恥ずかしい。
というかザンム、ロゼッタ。君らは俺の組稽古をよく見てるでしょ。一緒に手叩いてんじゃないよ。稽古しろ、稽古。
タロゥ(8歳・普人種男)
生力38 (38.0)
信力99 (99.9)ー
知力37 (37.0)
腕力43 (43.0)UP
速さ38 (38.0)UP
器用38 (38.0)
魅力37 (37.0)
幸運24 (24.0)
体力37 (37.0)
技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル3 (100/100)ー
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (40/100)
我流剣士 レベル4 (100/100)ー
木こり レベル2 (70/100)
楽士 レベル3 (35/100)
教師 レベル3 (28/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル5 (100/100)ー
テイマー レベル1 (10/100)UP
絵師 レベル3 (41/100)UP
語り部(紙芝居) レベル5 (41/100)UP
水兵 レベル1 (1/100)
執事 レベル2(16/100)UP
スキル
夢想具現 レベル2 (100/100)ー
直感 レベル4 (8/100)UP
格闘術 レベル5 (16/100)UP
剣術 レベル5 (100/100)ー
弓術 レベル5 (84/100)UP
小剣術 レベル5 (84/100)UP
暗器術 レベル5 (84/100)UP
斧術 レベル4 (78/100)UP
飛行術 レベル0 (82/100)UP
フォークダンス レベル5(40/100)
フォークマスター レベル0 (40/100)
念話 レベル0 (88/100)UP
女たらし レベル3 (100/100)ー
サニム流マナー レベル1 (65/100)UP
取得可能スキル
素人○貞 レベル5(100/100)ー




