第56話 キンタロの熊さんをザンムって呼ぶのは止めような、シ
神聖歴579年 冬の終わり月 5日
由々しき事態だ。
うちの妹が天才だという事が世間にバレてしまった。
「タロゥくんとシスティちゃんは絵師になるべきだ! 物事の特徴を捉え独自性を織り交ぜた描写! この繊細な色使い! この兄妹には芸術の神が微笑んでいる!」
「いーや! 二人とも芸能ギルドに入るべきだね! 紙芝居は新しい演劇の形! サニム発の紙芝居が世界を席巻するんだよ!」
わざわざ孤児院まで来て、子供たちも居るというのに大きな声でがなり立てる大人げない大人たち。建築ギルドのギルド長であるハイラル・スカトゴオメと、芸能ギルドの長であるレイラ・カルホトラはさも自分が正しいと言いたげに互いを悪し様に貶し、自分が如何に正しいかを周囲に向かって主張している。
周囲っていうのは孤児院にいる子供たちであり、レンツェル神父であり、俺であり、そして二人が奪い合っている我が妹である。この二人はなんとかしてうちの妹の気を引こうと、周りの迷惑を顧みずに騒いでいるのだ。大の大人が。しかも、サニムを運営する5大商家の当主2名が、だ。
「いや、そうは言うがねタロゥくん。私は、君たちが書いた紙芝居を見て、居てもたっても居られないのだよ! 才能の原石を! しかも極大の宝石になる原石を見つけたんだ! このときめきは最早恋を通り越して愛すら感じるほどだ!」
「うるさいよハイラル! 君、呼ばれても居ない分際で引き抜きかけようとはどういう神経してるんだい!? 絵に関わるからって連れてきてやったら恩を仇で返して!」
俺の視線に反論するようにハイラルさんが声を張り上げると、彼の言葉が気に食わなかったらしいレイラさんがまたハイラルさんに噛みつき始めた。
これに関してはレイラさんが正しい。今回つくった紙芝居は来月には孤児院を出て芸能ギルドの芸人になるピッグスへの餞別代りに渡すものだから、そのまま芸能ギルドで取り扱ってもらう予定なのだ。
紙芝居が完成した後ピッグスに紙芝居の演り方を叩き込み、ネネとザンム、それに孤児院の子供たちの前で実際に話をさせ。最低限必要な技術は叩き込んだと判断した段階でレイラさんに見て貰おうと連絡を取ったら、何故かハイラルさんも一緒についてきた。つまり、ハイラルさんは本来この場には居ない員数外の存在なのだ。
それがちゃんと招待されてきたレイラさんの目の前で、新しい芸能ギルドの飯のタネの作成者を引き抜こうとしている。これはレイラさんがキレるのも納得の暴挙だろう。
「兄ちゃ。おえかきたのしーね!」
「そうだな、システィ。次は何を描こうか」
「ザンム!」
「キンタロの熊さんをザンムって呼ぶのは止めような、システィ。ザンムがちょっと泣きそうだよ」
とはいえ、天才たる我が妹にはそんな大人たちの喧騒など知った事ではない。そもそも将来的にどうなるかはともかく、まだ3歳の妹に過度な期待や押しつけがましい事は止めてもらいたいものだ。俺? 俺は冒険者ギルド所属だから。
「一番システィに期待しまくってるタロゥがそれ言う?」
「俺は事実しか言ってないからな。ところで豚。お前に渡す予定の紙芝居をハイラルさんが強奪しそうなんだがそのままで良いのか?」
「よくねぇよ! ブッヒィ!」
余計な事を言おうとしたピッグスに親切心から商売道具(予定)が奪われそうだと伝えると、ピッグスは悲鳴を上げてハイラルさんの元へと走っていった。一応本日の主役だし、ピッグスの語り口は中々良い出来栄えだったんだが妹の才能の輝きが凄すぎたな。ピッグスは完全に割を食ってしまったのだ、可哀そうに。
「ところでタロゥくぅん。私ぃ、ラーメンが食べたいかなぁって」
「えぇ……もう帰ってほしいんですけど」
「なんか君、私にだけ当たりが強くない……?」
紙芝居を巡る騒動は、一先ず決着した。決着というか、そもそも紙芝居自体は芝居と名がつく様に演劇に通じるものがあるため、芸能ギルドが取り扱うのが筋。そもそもその前提で作ってるし、芸能ギルド所属になるピッグスに餞別として渡したものなんだから当然の帰結だろう。
ただ、レイラさんがハイラルさんを連れてきたのにも理由がある。紙芝居には立ち絵が必要であり、この街で絵を用意できる芸術家はほぼ全てハイラルさんが後援している画家になるからだ。
そのため、レイラさんは俺たちが用意したものが絵を使ったお芝居であると聞いた段階でハイラルさんに話を通して一度現物を見てみよう、と孤児院にやってきたわけだ。そこで終わっていれば大人としての尊厳を失わなくて済んだんだけどね。実物を見たハイラルさんは二つ返事で自分が抱えている芸術家たちに依頼して平絵を描いてくれることを了承してくれた。ただ、元になった三組の紙芝居は手本とするために暫くハイラルさんが預かる事になったけどな。
ピッグス。哀れな。
さて、いきなり商売道具を強奪されたピッグスの事は良いとして、ラーメンだ。用意するのはやぶさかではない。レイラさんはもう立派に俺の後ろ盾の一人だから、彼女に対してもスキルをある程度開示してあるし。問題は一緒に来ているハイラルさんなんだが。
「うんうん、そこの描き方はとってもグゥゥゥッド! システィちゃんはとぉっても筋がいいねぇ。末はおえかきの大先生かなぁ」
妹に向かってにんまりと下心満載の笑顔で妹に絵の指導をしている姿を見るに、なんか大丈夫そうだな。あの様子ならこっちの事なんてミリも見てないだろうしパパっとラーメンを創り出すか。
さて、冬も終わり月になったとはいえまだまだ寒い日が続いている。こういう時にはアレだろう。
ドン、とレイラさんの机の前に夢想具現でラーメンを取り出す。
「ホルモンラーメンです。豚の骨を煮込んで作ったスープに中太の麺。その上に辛い味付けのホルモンを乗せたこいつを食べれば、冬の寒さもバッチリです」
「おお! もしかしてこれがダリルウくんが自慢してた奴?」
「いえ。あの豚のえさげふんげふん。ジローラーメンは女性にはちょっとキツイ量なので」
「そっか! たしかに私じゃぁダリルウくんほど食べられないしね! これ、結構辛い?」
「はい。おすすめの食べ方は一度ホルモンをスープに沈めてから食べる方法ですね。そのままホルモンを食べるとかなり辛いですがスープの脂が辛さを中和してくれます」
「なるほど、じゃあ早速…………辛っ!?」
そう言いながら、レイラさんはホルモンラーメンに舌鼓を打ち始めた。くくくっ、この寒い日には体を温めてくれるホルモンラーメン! 汗を流しながら辛いは美味いという事を体に叩きこまれるがいい! はっはっはっはっ!
あ、システィは辛いからこのラーメンは食べちゃダメだよ。舌が痛い痛いなっちゃうからね。
タロゥ(6歳・普人種男)
生力26 (26.0)
信力94 (95.3)UP
知力25 (25.0)
腕力31 (31.0)
速さ26 (26.0)
器用27 (27.0)UP
魅力26 (26.0)
幸運18 (18.0)
体力30 (30.0)
技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (33/100)UP
狩人 レベル3 (75/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル2 (33/100)
薬師 レベル1 (92/100)
我流剣士 レベル2 (81/100)UP
木こり レベル2 (32/100)UP
楽士 レベル1 (80/100)
教師 レベル1 (35/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル2 (50/100)UP
テイマー レベル0 (20/100)
絵師 レベル2 (45/100)UP
語り部(紙芝居) レベル4 (31/100)UP
スキル
夢想具現 レベル2 (48/100)UP
直感 レベル2 (52/100)UP
格闘術 レベル1 (30/100)UP
剣術 レベル3 (13/100)UP
弓術 レベル1 (100/100)―
小剣術 レベル1 (100/100)―
暗器術 レベル1 (100/100)―
斧術 レベル0 (50/100)UP
フォークダンス レベル5(35/100)
フォークマスター レベル0 (35/100)
念話 レベル0 (20/100)




