第110話 復讐者エルヴィン
神聖歴583年 春の中月 9日
リフレッシュ休暇を終えてバイクで海を渡りカルデラへと戻る日がやってきた。日数が少し伸びたのはダリルウさんの船が戻るのを待ってたからだ。風が良くないらしく少し日にちが伸びてしまったらしい。
「向こうは残ってる指導員たちが良く働いてくれてるから問題はない。荒事にはザンムも居るしな」
ダリルウさんの船に乗ってきたコーケンさんからもこういう風にお墨付きを貰ってるから、帰りのバイク旅はちょっと遠回りをしてカルデラへと帰ろう。直接港に着けると目立っちゃうからね。
サニムとカルデラの間の海域には数か所の水が湧く無人島があるからそこで休憩をしながらの帰路だ。最初に着いた島はネトラ島という場所で昔は人も住んでたらしいんだけど海の魔物に襲われて村が壊滅したんだって。小屋の残骸とか井戸は残ってるから、近隣の船乗りは専ら水補給用に使ってるらしい。
まぁ、途中の休憩ポイントで風景を楽しみながらのんびり走れるのが一人バイクの良い所でもある。廃墟好きってわけじゃないけど滅びた村の中で井戸水を飲むってのもある意味風情があって良いかもしれないな、なんて事を考えながら島に近づくと、島の船着き場に幽霊船と見まがうような外観の船が停泊しているのが見えた。
あれ、先客かな。随分とボロボロだし遭難してようやく島にたどり着いたって感じだろうか。
こちらはバイク旅とはいえ、海の上の作法はダリルウさんに教え込まれている。遭難している船に助けを求められたら、たとえ敵のものであろうと港まで送ってやらないといけないのだ。助けを求めた時点で降伏したって扱いにもなるらしいからね。そして遭難した船乗りは助けられた恩義を金銭か働きで返すまで拘束されることになる。まぁ、これも戦争の捕虜みたいな扱いだね。基本的にはその船の所属先の組織が金銭で払って解決する事が多いんだって。
今回は向こうは自力で島までたどり着いてるから、そういう面倒な事後はない。が、無人島に着いちゃってるしここで船の修理は難しいだろう。サニムまではそれほど距離もないし、サニム港まで牽引していくのはやぶさかじゃない。そう思って船に声をかけるも返事がない。どうやら誰も乗っていないみたいだ。まぁ、水を飲むついでに村の方に居るなら声をかけるか。
そのままバイクで村の跡地に向かうと、その中の廃屋の一つに入っていく漁師風の男の姿が見えた。廃墟とはいえ勝手に入って良いのかとも思ったが、まぁ壁と屋根がある場所の方が休みやすいか。元の持ち主ももう居ないだろうしなぁ、と思っていると。
「おおぅい! 旦那様のお帰りだぁ! ハッハー、相変わらず美しいなミカエラ! お前は俺の自慢の嫁だ! うん? 学校にいったリッケルが中々帰らない? おいおい、リッケルは学者様になるんだぞ? 勉強で忙しいのは分かってるだろうが! なぁに、俺がたまに顔を見てきてやる! お前は安心して、この家を守っていてくれればいいんだ! ハッハー!」
廃墟の中から聞こえる陽気な大声が、村中に響き渡るほどの声量で聞こえてくる。いや、これは実際の声量がデカいんじゃないな、信力が声に込められていて、それが響いてくるのだ。
無線機なんかないこの世界の船戦では、基本的に隣の船に合図をする場合は手旗信号になるらしい。が、一部非常に優秀な水軍の指揮官は隣の船に聞こえるほどの声を張る事が出来るという。いや海上に居る船同士で話し合うってよっぽど近くに居ないと無理だろうと思っていたんだが、こう言う事か。これなら信力が届く範囲で声を送る事も出来るだろう。
しっかしこんな廃村だから良いけど、これ人が住んでる場所でやってたらすんごい迷惑だろうな。真似しようと思えばできそうだけど、使う場所と練習する場所は気を付けないと。
ん。そういえばこの廃村には人が誰も住んでないはずなのに、この声の持ち主は誰に挨拶したんだろうな。前に立ち寄った時は誰も住んでないのは確認してあるんだけど。見た目的に幽霊とかも普通に出そうだし、もしかしたらこの声の主も含めて……?
そうだとするとチェックしておかないといかんな。この世界には死した後に未練を残した者がアンデッドという魔物or魔族になる事があるらしい。どっちかになるか決まってないのはアンデッドには理性があるものとないものが居るからだ。理性がないアンデッドは確定で魔物扱いになるんだよね。
この村が壊滅してからもう数十年経つらしいからこの村の元の村民がアンデッドになる事はないと思うが、港に停泊しているおんぼろ船の乗組員がアンデッドになってるってのは十分以上にあり得る話だ。
もし魔物になってこの島に住み着いてしまったら、水の補給に訪れた船に被害が出る可能性が高い。一応名目上とはいえサニム海軍の長の上役でもあるからには、確認する義務がきっとあるはず。あと、純粋にアンデッドを見てみたい。
まぁ、普通に言葉を話してる以上は魔族の可能性が高いけど。あとは、この可能性は低いんだけど極限にまで追い詰められた船乗りがここを我が家だと思って錯乱してる場合だ。この場合は早く救助してやらないと危険かもしれない。幻覚に幻聴まで起きてるって事だからね。
たださっきの信力の使い方と力強さを考えるにこの可能性はほぼないだろう。そこまで追い詰められてる人にはそんな余裕がないから。
「たのもう!」
まぁ、今はいちいち考える前に声をかけた方が手っ取り早い。何があるか分からないから一先ず水分補給だけは済ませたあと、わいわいと誰かが騒ぐ廃屋に向かって外から声をかける。たとえドアが朽ち果てて開け放たれた廃屋であっても、いきなり入ったり覗き見るのはマナー違反だからね。
俺が声をかけると、先ほどまでワイワイと家族のだんらんが繰り広げられていた廃屋の騒ぎがピタリととまり、ギシッ、ギシッと誰かが家の中を歩く音が聞こえてくる。床板が大分朽ちているな。誰かが住んでるなら早めに直した方が良いと考えながら待っていると、朽ち果てたドアの向こうから全身傷だらけの初老の男が姿を現す。
ダリルウさんの配下に居る水夫のような格好だ。おそらく頭に大がつくベテランの海の男なのだろう。彼が現れた瞬間、周囲に海の香りが広がるような錯覚を受けた。
そして、どうやらアンデッドではないらしい。彼からは過剰なほどの生の匂いがする。
「……若いの、どこの誰だい。見ない顔だが」
「サニム総督、キンタロゥ・サニムだ。水を補給するために島に立ち寄ったが港に随分と痛んだ船を見かけたんでな。なにか困りごとがあるかと思い船の主を探していたが、旦那さんがあの船の主かい?」
俺と初老の男の視線が交差する。互いに直接対峙して、言葉を交わして、そして分かる事が世の中にはあるんだが、今まさにそれを再認識している気分だった。まさか、こんな所でこんな奴と対峙する事になるなんて、ってな。
この爺さん、英雄スキル持ちだ。その上、俺よりも強い。実際に目の前に居るからこそわかる。この爺さんからは強い海の香りと、それ以上に全身に満ち満ちた信力の力強さを感じるのだ。そしてこの近隣で英雄スキル持ちの船乗りなんて、俺が知る限りたった一人しかいない。
黒鯨狩りの幽霊船の主、復讐者エルヴィン。
それがこの男の名前だ。
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タロゥ(10歳・普人種男)
生力65 (65.0)
信力123 (125.8)UP
知力50 (50.0)UP
腕力71 (71.0)
速さ67 (67.0)
器用55 (55.0)
魅力61 (61.0)
幸運36 (36.0)
体力70 (70.0)
技能
市民 レベル4 (66/100)UP
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (48/100)
剣士 レベル6 (15/100)
木こり レベル2 (70/10
楽士 レベル3 (48/100)
教師 レベル3 (62/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (85/100)UP
テイマー レベル2 (78/100)
絵師 レベル3 (90/100)UP
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (45/100)
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(20/100)
スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル4 (87/100)
パチン・コ流格闘術 レベル6(85/100)UP
パチン・コ流武器術 レベル6(85/100)UP
飛行術 レベル3 (25/100)
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター レベル1 (100/100)
念話 レベル2 (57/100)UP
女たらし レベル6 (55/100)
野獣の眼光 レベル0(15/100)
サニム流マナー レベル3 (37/100)UP
英雄スキル
夢想具現仏恥義理
カルデラ近隣地図
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