第108話 このジャガイモをサニム近隣の畑全部で栽培しよう
神聖歴583年 春の中月 3日
「そういうのはイールィスよりもうちに頼みなさい、タロゥ君。うちぼ組合は酒屋も扱ってるから」
「それは分かってるんですが、今ある流通網に影響が出ないかと思ったんですよね」
「まぁ、既存の酒を造っている酒造は短期的には困るかもしれないね。だが、カルデラやハルノートとの取引が増加するのが見えている以上、新しい酒というのは見逃せない」
エリザと会話してジャガイモの在庫がちょっと多すぎるという話をした翌日。食品関係だしサニムの法律だとどうなるかの確認のために食料品ギルドに聞きに行ってみると、声をかけた受付の人が90度くらいのお辞儀をしてギルド長の執務室へと案内された。食料品ギルドはサニムの食品流通を一手に担う生活の要のような組合で、俺達孤児院への支援品なんかもここが取り扱っている。つまり、孤児院というかレンツェル神父に多重の意味で借りがある組合だ。
俺としてもその件があるからあんまり無下にされないだろうなと思ってたんだけど、無下にどころか下にも置かない扱いで最敬礼されてギルド長室に案内されるとは思わなかった。
食料品ギルドのギルド長であるパブ・グンラルさんとは色々と仕事の話しもした事があったし、それを受付の人が知ってただけかもしれないけど。
「それで、新しい酒というのは何を使ったものだい。果実? それとも穀物かな」
「あー、一応穀物というか。ほら、外の畑でレンツェル神父が育ててる芋があるじゃないですか。あれが大量にとれたんでそれをつかって酒を造ろうかな、と」
「なるほど」
流石に法的にどうなのか確認に来ただけなのにいきなりトップとの会談になるのは想定してなかったから、俺としても予想外である。まだ現物も出来てないのに話す事なんてほとんどないぞ。
とはいえ、パブさんには以前のカップラーメンの折から色々と世話になってる。交易なら兎も角食料品の流通に関してはイールィス家よりも専門であるのも間違いないし、ここは腹を割って話す場面かもしれない。
俺は大まかに、記憶にあるジャガイモを使った酒の製造方法を伝えて、誰か職人を紹介して欲しいと頼み込む。技術の秘匿とかもちょっと考えたがどうせ自分では作れないんだ。だったら技術が外に出るのを織り込んで腕のいい職人を紹介してもらった方が良い。
「ふむ。結構な手間暇はかかりそうだが、面白そうだ。分かった、こちらで腕が良くて口の堅い職人を紹介しよう。それと、だな。レンツェル神父が夢中になったという原料の芋も食べてみたいのだが」
「あー、了解です。それじゃあ幾つか持ってきますね。注意事項とかはその時に」
俺の予想通り、パブさんはこちらの意図を見こして都合が良さそうな職人さんを紹介してくれることになった。まぁ、口が堅いというのは外部に対して、という意味合いだろうけどね。レンツェル神父のあのハマリ具合を見るに多分孤児院の畑はジャガイモ専用になりそうだし、複数の酒造が立ち上がっても原料不足にはそうならんだろ。
ただ、一つだけ予想外だったのがパブさんがジャガイモを食べたいと言い出した事だ。まぁ原料を知るのも必要といえば必要か。ジャガイモはレンツェル神父のチート技(光魔法)がないと連作障害が起きるから同じ畑で連続栽培は出来ないけど、収穫量も多いし味も良い作物だからな。レンツェル神父が毎食食べたがると聞いて、パブさんとしても気にはなったのだろう。
ふむ。俺としては作り過ぎた作物をきっちり消費できれば良い程度の考えで、取り扱いに難しいところがあるジャガイモを食品として流通させるのはまだ早いと思ってたんだがべ。流通のプロが注意喚起した上で販売してくれるならそのまま売っても問題はない。仮に問題が起きた時はそれも含めてグンラル家が巻き取ってくれるならアリではある。
フライドポテトあたりなら単純で作りやすいし、ケチャップは無理だが塩を振るだけでも十分以上に美味い。ジャガイモを持ってくるときについでに作ってジャガイモ料理として紹介してみようかな。油はちょっと高いけどグンラル家なら簡単に用意できるだろう。
「なるほど。このジャガイモをサニム近隣の畑全部で栽培しよう」
「待って???」
塩だけをかけたフライドポテトを食べたパブさんは、全て食べ終えて空になったお皿をじっと見つめた後にそんな世迷言を口にした。曇りなき眼だった。世界の真理に今気づいたと言わんばかりに真っ新で、透き通った瞳だ。
「これは素晴らしい。素晴らしいぞタロゥくん。ああ、何故私はこんなにもあっさりと、味わいもせずにコレを食べてしまったんだ! タロゥくん、おかわり!」
「おかわりは持ってきますからちょっと落ち着いてくれますか。深呼吸しましょうね、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
ガタっとギルド長の椅子から立ち上がったパブさんを座らせて、冷静になるように促す。フライドポテトが素晴らしく美味しいのは分かるが、ラーメンと違って正気を失うほどではないだろうに。ジャガイモ料理でもフライドポテトはいわばスーパーサブで、大体の料理の付け合わせになれるが主役にはなれない料理だろう。
「なるほど。確かに、肉料理と一緒にこれを食べるのは。うむ、想像しただけでお腹が空いてきた。タロゥくん、おかわり!」
「今揚げて貰ってるんでちょっと待ってくださいね」
肉とジャガイモは相性抜群の相棒だ。フライドポテトじゃなくても蒸した芋を十字に切って真ん中にバターを乗せて塩コショウを一振りするだけで美味くなるんだからジャガイモは凄い食材ではあるんだよな。流石に毎食食べるのはレンツェル神父かドイツ人じゃないとキツイけど(偏見)
っと、大きく脱線する前にこのジャガイモの注意事項を言っておかないとな。ええと、連作で作ると土が悪くなって病気が発生するから輪作で同じ畑では数年に一度だけしか取れない。そのため農家の人には畑を分けて作ってもらう必要がある事と、しばらく置いておくと芋から芽が出て芋毒が発生するから食べられなくなる、と。
芽が出たすぐならそのまま種芋としても使えるから、保管と管理が大事な食材だ。ここを理解してもらえなければ流通に出すことは出来ない。俺の言葉にフライドポテトの脂で嘴を油まみれにしたパブさんは、鳥人種特有の丸い眼をキリっと細めて頷いた。
「うむ、それらの取り扱いは重々承知した。取り扱いが難しい食材は他にも扱っているから、任せてくれ」
「そう言って頂けると安心しました」
「酒造で使う分と孤児院で食べる分を除いたジャガイモはこちらで引き取ろう。これまでになかった食材だ、色々と試して市場価格を決めたい」
「助かりますけど、結構量ありますよ?」
「構わない。たかが畑一つ分の作物、扱えなければグンラルの名が廃る」
俺の疑問にパブさんはそう言い切って不敵な笑顔を浮かべる。その笑顔からは仕事が出来る男の凄みがにじみ出ていて、油まみれの嘴が物欲しそうにカチカチ音を立ててるのにカッコいいと言い切れるものだった。
フライドポテト、レンツェル神父には暫く出さないでおこう。下手しなくても一年中毎日たっかい油を使ってフライドポテトを作りかねないからね。
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タロゥ(10歳・普人種男)
生力65 (65.0)
信力123 (124.2)UP
知力49 (49.0)
腕力71 (71.0)
速さ67 (67.0)
器用55 (55.0)
魅力61 (61.0)
幸運36 (36.0)
体力70 (70.0)
技能
市民 レベル4 (65/100)UP
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (48/100)
剣士 レベル6 (15/100)
木こり レベル2 (70/10
楽士 レベル3 (48/100)
教師 レベル3 (62/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (84/100)
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絵師 レベル3 (89/100)
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執事 レベル3(100/100)ー
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スキル
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直感 レベル4 (87/100)
パチン・コ流格闘術 レベル6(84/100)
パチン・コ流武器術 レベル6(84/100)
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フォークマスター レベル1 (100/100)
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