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00話  回帰

 ――祝福の歌が聞こえる。


 目を閉じて耳をすませば、より一層はっきりと。

 優しいピアノの音色と、ソプラノが強調された合唱。

 放課後の校舎内に、澄み渡るよう響いている。


(そういえば……コンクールが近いんだっけ)


 誰もいない教室の中、静かに目蓋を開く。

 少し伸びた前髪が、睫毛に掛かって邪魔に思えた。


(……最期だし、せっかくなら髪切っとけば良かったかな)


 思ったが、すぐに思い直す。

 別にこだわりがあったわけではない。

 ただ、一生に一度だけしかないイベントだ。

 どうせなら、と特別感を抱きたくなってしまっただけだ。

 それでも過ぎてしまえば、全て関係ない。

 未練も、後悔も、等しく無になるのだから。


(上手くできるか心配だな……)


 見下ろせば、椅子に乗った足。

 見上げれば、カーテンで作ったロープ。

 不安だ。これだけは失敗したくない。


(……これで良し、と)


 カーテンを首に巻き付け、しっかりと固定。

 大きく息を吸い込んで、深く吐く。

 自分にとって、最後の呼吸だ。

 これで、いつでも終え(はじめ)る準備はできた。

 もう何も惜しくはない。

 心置きなく、逝こう。


 少年は、ゆっくりと目蓋を下ろした。



 まだ、祝福の歌が聞こえる――






『――これは、僕が自分で〝選択して終わる〟物語だ』



5月15日

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