7話 魔王
ファンタジーといったらこのお方。
作「……どーも。……今日もなろう異世界のみんなに、……インタビューをしていきたいと……思います……。……普段は聞けない、……知らない本音が聞けるかもしれません……」
作者はボソボソと小声でインタビュアーを演じている。
ガクガクブルブル震えており、まるで産まれたての小鹿のようだ。
しかしながら今回は相手が相手だ。
流石にこれもしょうがないかもしれない。
もちろん、依頼先であるスポンサーは秘密である。
いったいどんなスポンサーなんでしょうね。
女「おいっ!!!!!」
作「ヒィィィィィッ!」
作者はあまりの迫力に完全にブルっている。これはもう詰んでしまったか?
作者はこのときのために用意された精神高揚する薬を飲んだ。
少ししてから青ざめていた作者の顔色が赤みを帯びてきた。
作「TAKE2です! どーもー。今日もなろう異世界のみんなにインタビューをしていきたいと思います♪ 普段は聞けない、知らない本音が聞けるかもしれませんね♪」
作者はノリノリでインタビュアーを演じている。
クスリの効果は抜群だ!
あまりの変貌ぶりに今回のインタビューのお相手も呆れているようだ。
作「では、どうもお待たせしました。今回のインタビューのお相手の魔王様です。諸事情により女性化していらっしゃいますが、よろしくお願いします」
女「あ、ああ……。それはいいんだが、おまえ、大丈夫なのか?」
作「大丈夫大丈夫。無問題。なんでもどんとこいちょーじょーげんしょーです」
女「おまえがそれでいいならいいんだが」
作「ご心配ありがとうございます。それでは質問にうつりたいと思います。ファンタジー小説のほぼすべてといっても過言ではないぐらい魔王様という存在が登場しますが、魔王様という存在はいったいどういったものになるのでしょうか?」
女「小説の設定のある限り異なると言えるな。一般的には魔族を統べる王であり、勇者と対になる存在であり、世界を脅かすといわれる存在だ。といっても勇者の敵は魔王と魔族やモンスターだが、魔王の敵は世界という違いはあるな。他の設定としては魔法の頂点として君臨するといった意味の魔王だな。他には各魔族の王として扱われる魔王がある。この場合は魔族の数だけ魔王が存在する。ゴブリンの魔王しかり、オークの魔王しかり、種族の数だけ魔王が存在するな。これは魔王に転生した場合に、魔王同士で争いすべての魔王の頂点に立つという設定でよく見かけるな。他にも古くから魔王として設定されている大罪シリーズの魔王もあるな。怠惰の魔王ベルフェゴールとかそういうやつだ。さらには、魔界という別世界が存在し、その魔界の王で魔王、とそういう場合もある。まぁ、とにかく魔王は小説の設定の数だけいるといっても過言ではないと言える」
作「なるほどー。実に多種多様な魔王様が存在するんですね」
女「作品によっては魔王と勇者は一対のものと定められ、一度に存在する魔王は一人だけというものもあるぞ」
作「魔王さまの存在の仕方だけでも様々なファンタジー要素になりますね」
女「また、今のように女性の魔王の場合は、なろう小説の場合、ほぼ確実にヒロイン、主人公、仲間のどれかになることになっている。まぁ、それでも殺される場合もあるんだがな」
作「勇者と魔王が仲良くするって作品もありますもんね」
女「勇者が魔王になるって話もあるぞ」
作「実は歴代の勇者の成れの果てが魔王だったとかそんな設定もできそうですねー」
女「魔王という存在の扱い方次第で物語も色々と膨らむな」
作「なるほど。色々と考えされられますね。魔王様の目的っていうのはどんなものがあるんですか?」
女「これに関しては案外ないんだな。そもそも目的自体がない場合が多い。他には世界征服。他種族(主に人族)を滅ぼす。神を殺す。だいたいこれぐらいしかない」
作「確かに少ないですね」
女「そもそも魔王になるってこと自体、継承で魔王になる場合を除いて、魔族で最強になるってことだからな。魔族はほぼ脳筋だからな。強いものにだけ従うってな。だから領地とか統治とかあまり重要視されていない。気に入らないやつをぶっ殺すみたいな感情だけで動いているようなもんだ。だから人間みたいに領地を求めて争うとかがない。人間を襲うのも、奪うために襲うとか食料的な問題で襲うとかそういう理由だな。ある意味災害みたいなのが魔王だ」
作「弱肉強食的な論理だと魔王様のほうが正しいんですよねー。強いものが勝つ。強いものが食べられる。ある意味、世界にとっては人間が不純物なんでしょうね。それとそれに肩入れする神がかな」
女「そもそも神自体が世界をゆがめているんだがな。一方に肩入れすること自体、問題しかない。まぁ、魔王側にも魔神が肩入れするならバランスは取れているな。その場合だと神の代理戦争だな」
作「まぁ、召喚や転生でチート能力とか与えてるしw」
女「それこそ反則だろ。こっちは自力で頑張ってたのにあっちは力を与えるとかひどい話だ」
作「まぁチートって言葉自体、不正やズルって意味持ってますからね」
女「それが人気なのがなろう小説なんだな。不正な能力で俺TUEEEがなろう小説か」
作「そう言ってしまうと身も蓋もないんですが、内容としてはそうなってしまいますね……」
女「なろう小説は魔王に優しくないな」
作「魔王様に転生するなろう小説もありますから。魔王様が主役なのもありますから。そういうのばっかりじゃないですから!」
女「まぁ、世界や神を相手にするんだ。それぐらい当たり前かもしれんな。だがそれにしてもなんだかなぁと思わんでもない」
作「ほんとすいません。なんだかチート主人公よりも魔王様のほうを応援したくなってきますね」
女「謝罪やおべっかはよい。強さがすべてなのがこの世界だ!」
作「おお! 流石魔王様、かっこいい! 俺、結婚したら魔王様を主役にした小説を書くんだ……」
女「魔王の前でそういうフラグを立てるセリフを言うのが流行りなのか?」
作「おふざけが過ぎました。では今日はこのあたりで。インタビューに答えていただきありがとうございました」
女「かまわんよ」
話してみると人気のなろう小説の設定を貶めるような話になってしまいました。
まぁ、設定だし? 作品自体は面白いし?
ただチートって言葉や能力を使って無双すること自体がなんだかなぁということかもしれませんね。
うん。面白いし好きですけどね。それ。
ファンタジーな設定を話しているはずが、なぜかなろう小説の否定っぽいことに。
どうしてこうなった。
この話は独断と偏見でできています。
当然のことながらこの物語はフィクションです。
フィクションっていったらフィクションです。
おかしいな? なろう小説を否定するような話にするつもりはなかったんだが。
理不尽な世界に反逆する理不尽な力を持ったのが魔王様。
あれ? これ魔王様が主人公じゃ……。