6章―8 乖離の闇
久々の更新です!
「合成魔獣か。なかなか厄介な怪物を」
自分の何倍もある巨体を見上げ、ちっと舌打ちとともに毒づく。それに対し、猛禽のような眼光がソルファを睨む。
「魔界の中でも特に荒れている場所に生息していた奴らを寄せ集めたものだ。何体も失敗を繰り返してきたがこいつは成功例。してつまり」
合成魔獣がその巨体で地を蹴った。そこはひどく抉られていてどれほどの衝撃なのか想像が及ばない。
ソルファは宵闇の聖剣で受け止めようとして、
「ッ! 速い!」
瞬時の判断ですんでのところで避ける。しかし避けきれずに鋭い痛みとともに左腕から血が滴り落ちる。
「最強の生物だ!」
黒外套が叫ぶと同時にソルファに息付く暇を与えないように、間髪入れずに獣は獅子の咆哮をあげながら突進してくる。
次は避けきれないと判断したソルファは出力をあげた聖剣で迎え撃つ。受け止めることは出来たものの、ジリジリと押されていく。右腕全体の筋肉が骨が悲鳴をあげる。
そこに追い討ちとばかり幻獣鳥の翼による暴風が襲いかかる。二重にかかる圧力に耐えきれずソルファは飛ばされる。
「どうした、執行者はそんなものか!」
形成が逆転したと見るや嘲笑を交えた声をあげる。合成魔獣にしても主人に似たのか同じように余裕をもって仁王立ちの如く佇む。
「確かにあれはめんどくさいわね。でも」
レイシアは刀身を光らせながら言う。
「あなたならいけるでしょ? 私さえ攻略してみせたのだから」
「………ああそうだな。あれと同じような奴らは数多に屠ってきた」
歯噛みしていたソルファはレイシアの言葉でまたも記憶を蘇らす。強大な魔族、魔獣、ときには人間が対象だったこともある。その時も簡単な戦いではなかった。そしていつも隣にはレイシアがいた。
体内の神素がぐつぐつと沸騰するように熱く湧き上がり、全身を巡る。全ての神経が研ぎ澄まされていく。
「話は終わったか?」
「ああ、ここからは本気でいく」
「まだ本気でなかったと? 調子になるな!」
黒外套は柄にもなく叫んだことに気づかないほどに興奮をあらわにする。それに呼応するように合成魔獣がソルファへ襲いかかる。
獅子はその鋭い牙を丸出しに、幻獣鳥は暴風を吹かせ、蛇は毒の瘴気を撒き散らす。暴風に乗ってソルファへと集中的に向かっていく。
ソルファはそれに敢えて避けようとせずに、あまつさえ直進していく。そして右手に持つ剣で一閃。ただそれだけで瘴気は消え去り、暴風は相殺される。聖剣に纏った風系統の神光術によるものだ。
しかしそれに怯むことなく獅子はソルファへと突進する。牙だけでなく鋭利な鉤爪をもって。
とてつもなく速い突進も今のソルファにはしっかり捉えることが出来る。
間近に迫った瞬間、最低限の動作で避けきる。流麗な回避に続けざま合成魔獣の右前脚を削ぎ、翼を半ばから斬り落とす。蛇は合成魔獣の身体から完全に斬り離す。
それも僅か数秒にも満たないほどの速さ、絶技。
正しく目にも留まらぬ速さ。
遅れて合成魔獣は自身が斬られたのだと気づいた。そして怒りを含ませて吼えたてる。
「何が起こった……?」
絶対的な勝利を確信していた黒外套は目の前の光景をただ見つめる。
合成魔獣は全身を斬り刻まれながらもなおもソルファへ突き進む。本能では逃げ出したくとも命令に逆らうことは叶わない。
最後の猛攻。それは今までとは格段に違う圧力を放つ。更には周囲には闇色の焔を纏う。
「まさか魔素を使うか」
その焔は一つの巨大な焔へと収束されていき、ついには合成魔獣そのものに勝るとも劣らない大きさへとなる。そしてそれをソルファへと放った。片翼を失いながらもあらん限りの暴風をもって強大さは増していく。
高温の熱波がジリジリと肌を焼く。
「だがここで終わりだ」
そう言ってソルファは剣を前に突き出す。直後剣の先端に神素が収斂されていく。そして言葉が紡がれる。
「闇を呑み込む闇 虚無さえ消えさる混沌 一切合切は存在せず 世界との乖離を現す【万物乖離す闇】」
虚空から溢れ出す闇。それは焔を一口に呑み込み跡形もなく消してしまう。留まることを知らないそれは合成魔獣の体さえ丸呑みにして、この世界から乖離された。
「なんだそれは」
認識の及ばないうちにことは進み、黒外套は誰に投げかけるでもなく呟く。瞬く間に消えてしまった合成魔獣を探すように周囲へ目を巡らす。俺の最高傑作はどこに。
「忘れていたな。彼も」
そして声をあげる隙さえなく呑まれて行った。
お久しぶりです!
少し間を空けての更新となってしまいました。
なんとか書こうとしているんですが(電車内などで)部活があったりするとやはり書く時間は少なくなってしまうものですね。
ソルファは一体何者なのか!?
今後の展開をお楽しみに!
ブックマーク等よろしくお願いします!




