第一話 前史
前史
突然の出来事だった。
それは異次元からの侵略者。
空が大きく割れ、そこから現れ出たのは巨大な要塞だった。
『空中要塞ガルグラシア』。
それは自らを『神聖ヴェルガル帝国』と名乗り
満天に映し出された立体映像を通して、全世界に宣戦布告を行った。
同時にその内部から、触角と鋭い角を持ったイトマキエイ
後に【α(アルファ)】と呼ばれることのなる生体兵器が出現、
地上に向け攻撃を開始した。
それに対して各国政府、軍部もすぐに動き出した。
空軍主力部隊による一斉攻撃。
戦艦による海上からの長距離ミサイル攻撃。
陸上部隊による対空砲撃。
だがそれらは全て、ガルグラシアから放たれた
閃光『神罰の光』によって無効化され、
実質、近代兵器ほとんどは戦力を失った状態に陥る。
加えて新たに現れた、翼を持った獣
グリフィンや、ペガサス、キマイラのような
生体兵器【β(ベータ)】によって市街地、ゲリラ戦においても
苦しめられることとなる。
絶望感だけが、次第に人類を支配していった。
そんな中、彼は現れた。
フルフェイスの黒い鎧を身にまとい、
背には一対の漆黒の翼、
身の丈はあろうかという黒鋼の大剣を手に
次々にアルファ、ベータを切り倒して行く。
天使の加護を受けたその鎧を身につけた彼は
自らのことを『悪天使アポストール』と名乗り
単身ガルグラシアに乗り込んでいった。
間もなく彼は、世界に平和をもたらした。
世界を救った英雄となったのである。
戦いが集結してから3年。
街の復興も進み、人々は少しずつ日常を取り戻しつつあった。