順位表とメデューサ
久しぶりの更新です。宜しくお願いします*
打ちひしがれる庵子を横目に高橋がこっそり順位表を見に出かけると、あったあった、これ見よがしに掲示板のど真ん中を白い紙が占めていた。
「な…かむら…っと。あった。」
下から順に目で追っていくとすぐに庵子の名前は見つかった。
「こりゃぁ追試決定だ…。めげるな庵子…。」
保健室で傷心の少女に心の中でエールを送る。
「夏休みがちょっと短くなるだけだって。死にゃーしない。」
うんうん、と一人で頷く高橋は少女にとって夏休みが減る事が死活問題であることに気がついていない。
ふと、この前の保健室受験の少女が再び頭に過る。
一夜漬けの可哀想な少女、きっと自分と同じタイプであろう女の子。
「林茂奈香」という名前を再び下から順に目で探す。
「も…なか…っと。な…い…?」
一番上まで一通り目を通し、もう一度ゆっくりと名前を確認していく。
「林…茂奈香…ん?えっ…ええっ!!!」
廊下に響き渡る高橋の奇声。
そして突如開け放たれる向かい2-Bの教室の扉。
「高橋先生、静かにしてください。」
運も悪く、職員の間でも生真面目で有名な小阪教員が高橋の事を睨みつけていた。
ひっつめた額には神経質そうに血管がぴくぴく動いている。
教室の奥から覗く生徒達は哀れみの目で高橋をじろじろ見ていた。
「保健室の管理はどうなさったんですか、高橋先生。生徒の成績は保健教員には余り関係ないかと思いますが。」
すらりと伸びた両腕を胸の前で組み、黒いタイトなスーツをびしっと着こなすその姿はまるでメデューサのように威圧的で、同年代の高橋といえど萎縮してしまう迫力である。
それに加え、高橋の次に整った顔立ちをしているものだから(高橋談)その冷淡なオーラは倍増である。
「ご自分のお仕事をなさってください、高橋先生。」
「あ…はは、失礼いたしますわ。」
余りの小阪教員の迫力につい普段使わないような言葉遣いになってしまった。
小阪教員がぴしゃりと2-Bの扉を閉めてしまうと、ふぅっと高橋は大きなため息をついた。
もう一度順位表に目をやる。
1位 林 茂奈香 ……… 900 点
まさか!
どうしても信じられない気持ちで一杯であったが、高橋は小阪教員が再び現れる前に保健室に戻る事にした。
林茂奈香、彼女は一体どんな少女なのだろう。
高橋は持ち前の好奇心がむくむくとわき上がるのを胸に感じていた。