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クズの婚約者にさよならと制裁を  作者: 佐古鳥 うの


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20/52

後宮じゃなくて迷宮でした (1)

本日は2話更新です(1/2)

 


 影からの報告が届いたので確認してみると後宮の方で動きがありました。


 後宮入りするご令嬢達が決まったそうです。その中には他国の貴族の名もありました。


 遅れて王命で『後宮入りするご令嬢のお住まいを案内せよ』という通達が来ました。

 後宮が実は魔法学校だということは影のお陰で知っていましたが、その事には一切触れずに案内をしろというのは少々横暴だなと思いました。


 当日変わり果てた姿を見てショックを受けて涙するわたくしの姿が見たいのかもしれませんね。悪趣味ですが。


 それから魔術師団の封蝋付き手紙には『近日中に後宮に付与魔法を施すように』とありました。

 こちらは何の付与魔法をかけるのかも書いてありません。わざと情報を減らして困らせたいのでしょう。



「これまた不躾な手紙が届きましたね」


 呆れ半分、憤慨半分のヴァンが今にも二通の手紙を燃やしそうな顔で睨んでいました。


「案内は仕方ないにしても問題は付与魔法よね。付与魔法ならあちらでもできるでしょうに」


 何が悲しくて奪われ変えられてしまった無関係な建物に付与魔法を施さなくてはいけないのかしら。

 行きたくもないわ、と不満を言えば行くだけ行ってみては?となぜか薦められてしまいました。



「けれどわたくしが設計に携わった部分も勝手に変えられているのよ?そんなの見たくないわ」

「いっそ清々しいほど変わっていれば心残りもなくなりますよ。それを見届けるのも一興かと」


「……そういうものかしら」


 見たらショックを受けてまた気絶してしまうのでは?と不安に思いました。だって心血注いで練り上げた設計だったのです。


 初心者が暴発させても壊れにくい強い壁、迷子になりにくくわかりやすい教室配置。配置は陣の役割もあり暴発の軽減、結界を作動させるというものです。

 付与魔法は結界の強化や子供達が使いやすく心地よい空間作りにするために使うつもりでした。


 生徒達の想像を阻害しない多種多様の本を図書館に入れるべくこれにも手をつくしました。

 その本は今わたくしの邸にあって出番を今か今かと待っていたのです。


 そう考えるだけで胃がネジ曲がりそうな痛くなり悔しくて泣きそうになるというのに。

 今までの過保護ぶりはなんだったのかしら、と少しムッとしてしまいました。


 付与魔法だけでも知らんぷりをしてしまおうかしら。



 当日後宮に向かうと門前にズーラ帝国の紋章とオパルール王家の馬車が並んでいました。

 書面に書かれていた時間よりも三十分早く来たというのにです。


 嫌な予感がして急いで通してもらえば、先にいた貴族達が振り返り冷たい視線でわたくしを睨んできました。



「遅刻とはどういう了見ですかな?!ミクロフォーヌ侯爵令嬢!私は口頭でも書面でも時間厳守とお伝えしたはずですぞ!!」


 そう叱りつけるのは魔術師団長のクエッセル侯爵です。

 彼は自分の仕事にプライドを持っていてわたくしを目の敵にしていました。

 彼自身も強い魔法使いなので仕事を全うしてくれればそれで良かったのですがご子息と同じ年齢の小娘が対等に話してくるのがとてもお嫌だったのでしょう。


 さすがに他国の方の前で恥をかかせられたのは初めてで思わず動揺しました。もしかしたら王妃様に定められたいつもの格好だから余計に萎縮してしまったのかもしれません。


 嘘の時間を教え、会ってもいないのに時間を告げたなどとでまかせを言うのも名のある貴族がしていいことではありません。


 ですがその事を責めるよりも賓客として来られたご令嬢達への挨拶です。彼女達に向かって深くお詫びするとなぜか王子が先に反応してきました。



「申し訳ない。この者は私の婚約者なのですがその地位から蹴落とされそうだと知り、なんとかして僕の気を引こうとこんな愚かなことをしでかしたのでしょう。

 これでも一応教育を施しましたがまったく身にならず、下位貴族を無闇に苛めたり無断で学園を休んだりする始末で。このように場を弁えず爵位を顧みずに迷惑や不敬を働くためほとほと愛想が尽きていたのです」


「このご令嬢が第一夫人の座を追われるのは決定しておりますのでご安心ください」


「貴女方のような聡明な女性を迎えることができてオパルールの未来は明るくなったと断言しよう。よく来てくれた」


 歓迎する、と堂々と嘘をつく王子と侯爵に開いた口が閉じれなくなりました。


 気を引こうと?無断欠席?迷惑や不敬を??愛想???第一夫人????


 は?ふざけてるの?なんのジョークかしら?と危うく声を荒げそうになりました。此方は未だにお見舞いのカード一枚も貰ってませんけど??

 怒りのあまり腕輪にヒビが入った音が聞こえたような気がしましたが気のせいでしょう。


 クエッセル侯爵を見ればニヤニヤと隠しもせずわたくしを見ているし、己の嘘が露見しないと本気で考えているご様子。

 魔法学校を作ることになり顔合わせをした時からこういう小さな嫌がらせや嫌味をされてきました。


 大人げないと憤りながらも我慢してきたのに懲りずにこんな場所でまでやらかすなんて。後ろについていた侍女も苛立っているのが伝わってきました。



「それは難儀なことですわね。お察しいたしますわ」


「ディルク殿下と婚約を結べるほどなんですもの。それなりの教育と爵位をお持ちなんでしょうけど…あなた、わたくし達を誰かわかった上での狼藉なの?

 場合によってはあなたもあなたの一族も首が飛び潰されてもおかしくないのよ?!」


「…申し訳ございません」


「まあまあ、ルテネフォール様。この方はわたくし達に敵わないと知り苦肉の策を選んだのでしょう。いかにも小者がしそうなことじゃありませんか。

 それにこのズーラ帝国の王女であるわたくしマルティーナ以上の高位など此の世に存在しませんもの。自暴自棄になるのは仕方のないことですわ!!オホホホホっ」


 マルティーナ様の高笑いはよく響き王子が顔を歪めていました。丁度後ろにいたのでマルティーナ様に見られることはありませんでしたが。

 ですがこの御方のお陰でメリッサ・B・ルテネフォール様は怒りを収めてくださいました。


 命拾いをしてホッと息をついたのも束の間、早速中に入り案内することになったのですが。


「ではミクロフォーヌ侯爵令嬢。付与魔法をお願いいたします」

「……どんな付与をなさるのですか?」


 玄関ホールに入った途端に言われて無表情でお聞きしました。

 そう聞いたは既になんらかの付与魔法を施していている可能性があり、それを妨害しない、または同じ付与魔法をかけないようにしなくてはならないからです。


 なぜならば先にかけた魔法や他の付与を消してしまう可能性があるからです。弱い魔法使いが後から付与をかけると弾かれた際に怪我をすることもあります。


 さすがにそれを狙ってではないと思いますが―――それ以前に侯爵よりもわたくしの方が魔力量は上ですが―――彼に恥をかかさないためにも確認しておく必要がありました。しかし。



「はあ。それもお伝えしたはずです。なぜもっと真面目に取り組んでくださらないのか。これでは本当に婚約を白紙にされてしまいますよ?」


 わざとらしく溜め息を吐いたクエッセル侯爵は杖を取り出し玄関ドアに結界を張りました。


「玄関前に外敵の侵入禁止の付与魔法です。こんなこと誰に聞くまでもなく幼子にだってわかることです。ここに我が息子が居れば直ぐ様魔法をかけたでしょうに。

 まったく同じ侯爵家とは思えませんな。まるで危機感がない」


 いえ待って。「これで安全です」とは?

 今から襲撃者でも来るのでしょうか。さもひと仕事を終えたようににこやかに微笑む侯爵に首を傾げましたが王子は手を叩いて誉め称えました。



「素晴らしい!!さすがは我が国きっての魔術師団長だ!お二方ご安心ください。これでもう賊は入りませんよ!」


 え?賊が礼儀正しくドアからしか入れないと思ってらっしゃるの?え??


 さすがにそれはないわよね?と考えながらも勝手に案内し始める王子と侯爵についていきました。

 わたくしが案内せよ、と手紙にありましたがどうでも良かったようです。



「我が息子は私の次に優秀でしてな。今はエクティドに留学しているのです」


「まあ、魔法大国エクティドに?それは素晴らしいですわね!エクティドで学べばオパルールは更に魔法強化されることでしょう」


「……ハハハ!勤勉な息子なのですよ。()()に行っても学ぶことなどないでしょうに。私を追い越したいと考え苦肉の策を選んだのでしょうな!」


「オパルールの魔術師団は強いからな!クエッセル侯爵に習えば最強になれたというのにエクティドなんぞに学びに行くとは!肩透かしにならぬよいが」


「まったくですな!」



 二人のハハハ!と笑う声が玄関ホールによく響く。

 それを聞いていたご令嬢達はそれぞれ目配せしましたが表面上はにこやかにしていました。エクティドがどんな国か知っているのでしょう。


 今日は二人のご令嬢の入居日だそうです。

 部屋は日当たりが良く一番広い部屋を充てがわれましたが正妃用に用意された部屋ではありませんでした。その説明はしていないので後で問題になるでしょう。


 知れば盛大な結婚式を話しているズーラ帝国のマルティーナ様や、先程烈火のごとく叱りつけた同じ立場であるメリッサ・B・ルテネフォール様も黙っていませんもの。


 表面上は仲良くされていますがどちらも他国の王女様です。早く訪れたのも順位を気にしてのことでしょう。


 それはそれとして。


 玄関ホールや二階に続く階段は図面通りでした。基準に則っているので問題はなかったのでしょう。

 ですがあのシャンデリアは少々豪華すぎて品がありません。


 嫌な予感がするなと考えていましたがそれはすぐに的中しました。廊下が左右対称に作られていたのです。

 予定では片側はでこぼことした形にしていたので景観はよろしくなかったですがその分アーチ状にして見映えを保つよう考えていました。


 そのアーチ部分もまっすぐになり、反対側に置かれるはずだった銅像が絵画に変わっていました。

 その絵画も王子や王家の肖像画、それに恋愛を表現した絵ばかり。


 それはまあ趣味なので仕方ありませんが、『王子()のみを愛し尽くせよ』と押し付けがましく訴えてるようにしか見えず気味が悪かったです。



「クエッセル侯爵の魔力は国内随一を誇ります。いえ世に知らしめていないだけで恐らく大陸一でしょう」

「まあそうなのですか?」


 いきなり自慢話を始める王子にメリッサ様が愛想よく反応しました。


「いえいえ私はまだまだ若輩者です。魔法使いとは人生を賭けて魔力と技術を高めていきます。全盛期はまだまだこれからですよ。

 自分の実力を何一つ理解せず喚くことしかできない無能な青二才とは違います」


 鼻息荒く胸を張る侯爵がチラリと此方を見ましたが、わたくしはあまりにも出来の悪い建物に気分が悪くてそれどころではありませんでした。


 配置を考慮しない建て方のせいで平衡感覚が奪われ、既に瘴気が集まり始めているのです。進めば進むほど足下が淀んで見えます。


 意図せず侯爵は簡易的な迷いの森を作り上げてしまいました。この症状は魔力が高いものほど早く出てきます。侍女も少し顔色が悪くなってきました。



 そのことにまだ気づかない侯爵は顔色の悪いわたくしを見て得意満面に笑い、魔法披露をしたいがために次々と付与魔法を放ちました。

 聞こえる名前はまあまあ必要なものですがこんな廊下の真ん中でバンバン使うものではありません。むしろ瘴気を吸い寄せる装置になっています。


 配置ひとつ変えるだけで意味が逆転して恐ろしいことになるとあれだけ散々図面を見せながら説明したにもかかわらず侯爵はなにひとつ聞いてなかったのですね。


 扇子で瘴気を払いながらわたくしは侍女に待機しているヴァン達と連携して後宮に居る者すべてを外に出すようそっと指示を出しました。

 頷いた侍女は静かに下がり、もう一人の侍女はわたくしを包むように結界を張りました。







読んでいただきありがとうございます。

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