前へ目次 次へ 9/94 ひとりぼっち‐9‐ 夜の街を一人で歩いた。昔と比べれば今の夜は随分と明るくなった。しかしそれでも今の時刻は夜遅く、車も人もその通りは少なかった。街灯の明かりがまだらに照らす道を歩いていれば、たまに前を横切る居酒屋からはにぎやかさしが漏れ聞こえてきた。 どこにでもあるのだろうその光景。しかしそれさえも、鏡太郎には違うのだ。普通ではあたりまえのはずのものが、鏡太郎には見えなかった。人は生まれながらに社会にいられる生き物だ。──だが人として生まれた瞬間から孤独な人間もまたいるのだ。