41/94
わからないきずかない‐7‐
くすり、と椛の唇が引き上がる。……そんな気がした。彼女は無貌の仮面を張っている、鏡太郎の目にはだが。
「……鏡太郎」
「何だ?」
「何も聴かずに一晩、ここに泊めてくれ」
「かまわない。だが濡れたスーツや下着はどうするんだ」
「来る途中にコインランドリーを見つけた。放り込む」
「……スーツだぞ……?」
「かまやしないさ」
狼が首をもたげていた。椛の無貌の仮面は、まっすぐと鏡太郎を見据えていた。しかし下の狼群れらは、部屋が気になるのか首を伸ばす。頭を低く、見知らぬものを嗅ぐ。少し緊張があり、居心地の悪さを感じた。




