前へ目次 次へ 40/94 わからないきずかない‐6‐ 鏡太郎は、椛から目を離せなかった。それは美しい女性だから、という理由だけではないのだ。彼は誰にでも優しくあろう、との心をもっている。だがだからと言って、『人でないものが怖くない』というわけではないのだ。それはつまり鏡太郎の見る椛のわけで……人でないものの姿形の世界を完全には受け入れていないわけだ。恐怖を良い人の一面で隠したのが、鏡太郎という男だ。 「温かくて甘いな」 「苦めのほうが好みだったか?」 「いや、好みの味だ、パーフェクトだ、鏡太郎」