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またたきのあいだ‐5‐
女は胸ポケットの中から、一枚のハンカチをだす。見覚えのある、まだ忘れるには早かったものだ。昨夜、鏡太郎が女に貸したハンカチだ。洗剤の匂いが香った。心なしかフワフワになっている気がした。
「フワフワだ」
「あたりまえだ。私は貸しをキッチリ、それ以上にして返す女なんだからな。態々の手荒いだ」
「ありがとう──」
そこまでやる必要はなかった。それこそ昨夜の状態のまま返されてもよかった。鏡太郎は、ハンカチは返されないだろう、と前提で貸したのだ。ほとんど譲渡したものだった。




