前へ目次 次へ 17/94 ひとりぼっち‐17‐ 「あっ……はい」 「またね」 名前も知らない女はそのまま去った。彼女の背中が夜の闇の中へと消えてゆく。狼首の手足は、いつまでも、その月のような瞳を、夜の闇へ消えてからも鏡太郎を睨み続けていたのを感じた。 (……俺はどうして彼女を、助けたいと思ったのだろうか? 明日も会う、んだよな。誰かと接するのは苦手だ。……嫌だな) 少し、体が震えた。暦のうえでは春はすぎていた。だが今だ外は寒いままだ。しかし鏡太郎の体を震えさせたのは、寒さとはまた違うものだった。