2章-5
酩砂が振り下ろした爪は畳に刺さり、酩砂は体のバランスを崩した
「どこに…!?」
突如酩砂の腹から大量の血が吹き出し酩砂は口から血を吐き出した
「おいおい、せっかく久しぶりのこっちなんだ、楽しませてくれよ?」
酩砂の腹に刀を貫いていたのは青い浴衣を纏った慎弥だった
「宗康…出てくるにはまだ早かった…」
「知るかよ、おれはこの身体をもらった時点で好きなときに出ていき、好きなときに暴れるつもりだったぜ?」
慎弥の身体を借りた宗康は右手を腰の方に手をやり空中で髪を撫でるような仕草をしたが刀を引き抜くと同時にその動作をやめ苦笑いした。
「そうか…この小僧は髪短いんだったか…体の質が一体化しすぎて自分のからだと錯覚してたぜ…」
「あなたは…さっきまでのあのこじゃないわね?」
「さすが、悪魔だ、自然治癒能力も高いな、楽しめそうだぜ」
宗康はにやっと笑い刀についた血を振り払うと一瞬で酩砂の懐に潜り腹を貫こうとした。
しかし、酩砂は片手でそれを防ぎ宗康の刀は酩砂の手を刺すだけでとどまった
「綺麗な女は同じ手段はくらわないのよ?」
「俺の時代のときはお前なんかただの町娘だよ」
「それは…侮辱しているの?」
「もちろん♪」
宗康は身動きがとれなくなっていた刀を思いきり押し込みそのまま横振りに振り切った。
そして、その勢いのまま避けられなかった酩砂は親指以外の四本の指がそのまま切断され、宗康の周りに散らばった。
「あーーーーーー!!!!」
酩砂は斬られた片手を高く振り上げ血を撒き散らしながらそのばで叫び回った。
「苦しめ苦しめ、悪魔はそのくらいじゃあ死ねないもんなぁ?」
宗康は再び刀についた血を振り払うと刀を肩に抱え、にやにやと悶える酩砂を見物していた。
「誰が悪魔だ…あんな…人間が創造した下等生物と魔砂様や私を一緒にするなぁ!!!」
酩砂は逆上し指が残っている方の手で宗康に向かって爪を振るった。
しかし、宗康はその爪を一避け一避け無駄に丁寧によけると静かに酩砂の首を振り斬った
酩砂は何が起きたのか理解できておらず首が離れた状態で弱々しく腕を振り回していた。
「俺の目の前であいつの名前を出したお前は苦しむ余裕も与えない、死ね」
宗康は首を斬った勢いのまま一回りすると刀を振り上げ酩砂の肩に思いきり叩き斬りそのまま切断した。
酩砂はそこら中から血を吹き出すとそのまま消滅した。
「ちっ、きたねぇな」
宗康はポケットから白いハンカチを出すと刀と浴衣についた血をきれいに拭き取り出した。
「魔恐の手を解放させずその強さは…もはや異常だね」
「誉め言葉として受け取っとくぜ?」
宗康は刀を拭きながら颯馬の止血をしているJ.Wをチラ見するとにやっと笑った。
「さぁもう満足だろ?数珠に戻るんだ」
「俺が戻ると思うか?い・や・だ・ね♪」
「宗康!」
「俺が手を変えられてから善人だった試しがあるか?答えはない、だよな?ならおれがこのあとなにをしに…!?」
宗康は急に胸のあたりを押さえ、顔を苦痛に歪ませた。
「うそ…だろ!?」
「まさか、伸弥くんが自ら自我を取り戻そうとしてる!?」
「させるかよ…!せっかく出てこれたんだ!そう…やすやす!!!」
宗康は刀を地面に落とし力なくだらーんと全身がうなだれた。
そして、一瞬の間のあと慎弥は顔をあげ、激しく息を繰り返した。
「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」
慎弥の瞳孔は開き胸を激しく上下させていた
そして、徐々に青い浴衣は数珠へと戻り最終的に慎弥の左腕に収まった。
俺はあの訳のわからない戦闘好きの侍から俺の身体を取り戻したのだ。




