私の記録④
「愛美寝たのか?」
部屋に入ってきた雅人君はそう言ってから笑う。
「うん」
私も愛美を自分にもたれかけながら頷く。
雅人君は少し悩んでから私の正面に座った。
「なぁ、無理はすんなよ」
「何が……」
「いや、だってさ目が赤いだろ、だから泣いてたかなってな。」
「むー、そんなこといいでしょ」
「ま、そうだな。」
どうやら雅人君は心配してくれているみたいだ。
だけど、なんだか素直になれない私はつっけんどんな態度をとってしまう。
「それより、なんか俺に対して言葉遣い雑じゃない?」
「そんなことないよー」
「なんで目をそらす?」
「なんとなく」
そう、自分でもわかっている。
隣に愛美がいて正面に雅人君がいるのにも関わらずに私はほとんど意識していないのだ、赤の他人として……
本当の赤の他人だったら自分のことを知られたくなんかないと塞いでしまう私だったけど、今はなんとなく大丈夫って感じてしまう。
その理由がなんなのかそれはよくわからないけれどそれはそれでいいのかもしれない。
「ま、もう少しゆっくりしていけよ」
「うん、そうするね」
雅人君は愛美が私の服を寝ながら掴んでいるのを見てそう言うとその部屋を出て行く。
私は一人になったところでようやくまぶたを閉じた。
優しい香りがする。
なんだろう懐かしい?
そう思って目を開けると愛美が顔を覗き込んでいた。
「※○×∑β……」
そして目が開いたのを確認した愛美は変な言葉を発しながら離れる。
どうしたのだろう?
っと物思いにふけるまもなく、愛美がコホンと咳払いをすると早口で言った。
「よかったら、今日うちに泊まりませんか?
あ、よかったらでいい……」
「うん、泊まる」
「え、いいの?」
「うん」
嬉しそうに言う愛美はなんとなく可愛らしい。
正直なところ、私はまださっきの話しをひきずっていて、あの家に帰りたくない。
それにこんなに泣きはらした顔を見せたくない。
それは大切だからこそ私の心情なんかで迷惑をかけたくなかったからだ。
それは愛美も同じだったけど……
あの時、ホントはちゃんとした話しをせずにごまかすはずだった。
だけど雅人君を部屋の外にやって二人になって優しさに触れて、そして支えてもらえると少しでも思ってしまったら、なんとなく言葉があふれてきていて、気づいたらあんなにも話してしまっていた。
ホントは少し後悔している。
あんな話しをするんじゃなかったって……
でもそれを聞いても笑っている愛美を見ると、本当は言ってもよかったのかなって思える。
それに愛美に言われた言葉……
私自身のことは大切じゃないのって言われた時にすごく図星をつかれたって感じだった。
だからそんな愛美に少し甘えてみたいというのも今の気持ちであった。




