私の中に眠るもの⑥
「あれ好きなの?あれ古いのに……」
「でもあの3D映像はあの時代でも屈指の良さでしたから見る価値はちゃんとありますよ。それにちゃんと面白いですよストーリー」
「わかるよ。あたしもその気持ちはわかるだけど、あそこのストーリーはえっと……」
「コホン」
どうやら熱中しすぎていたらしく、クールなメイドさんのことを忘れていた。
ちなみに元気なメイドさんはお名前はくうちゃんというらしい。
メイド名というものらしいとくうちゃんは言っていた。
そんなくうちゃんと話しが合いすぎて話しこんでしまったけれど、こうやって誰かと直にこういう会話をするのが楽しくて仕方ない。
今までは隠していた自分が出てきているようでなんだか変な感じもしないわけでもないけれど、そんな自分の変化もなんだか自分だからかなんだか楽しい。
そんなことを考えてからクールなメイドさん、メイド名はレイレイっていうらしい。
くうちゃんが苦笑いしながら言っていたのでたぶんそうなんだと思う。
「どうぞ、ご主人様」
「ありがとうございます」
「それでは、少し失礼します。はい、あーん」
「えっと……」
「このメニューの特典みたいなものだよ。口を開けなさい」
なるほど……
これがメイド喫茶での魔法の呪文なのかな?
それじゃ、定番の萌え萌えオムライスとかならケチャップで何かを描いてくれたりするのかな?
気になる……
気になるんだけどそれを試せないよね、今は……
そう思いながらもいっちゃえなんて横で言うくうちゃんを少し無視すると、ケーキをあーんで食べる。
「あ、美味しいですね。このケーキ……」
「でしょー」
「はい、生地もこだわっているみたいだし、生クリームも癖がなくて美味しい。」
「わかりますか?」
「はい」
ショートケーキの美味しさを語ると、それにレイレイさんがくいついてくる。
「これいいですよね。私もついつい食べちゃうんです。店長がいつも作ってくれてるんですけど……」
今度はレイレイさんが語りだしたところでくうちゃんが逆に逃げるようにしてこの場を離れていった。
私は口調にはいつものように気をつけながら話しを続ける。
時には目の前にあるショートケーキを食べたりしながらその話しをしているとだんだんと時間が過ぎていった。




