第2章(2-2)
「で、具体的には何をすればいいんだ?まず、いつから始めるんだ?」
「んーと、来週ぐらいかな。泰造のおじさんを中心にやるらしいから、何をするかはおじさんに聞いてくれ」
「了解―。実際に作業始めるときになったら言ってくれよ」
「おっけー」
手伝いをするのは多少面倒くさいが、泰造おじさんに久々に会えるようだからよしとしよう。
変人だから、相手にしていると少し疲れるが、俺はおじさんのキャラが好きだった。
「……………………」
「……………………」
平和だ。今日も俺の一日は何事もなく終わろうとしている。
だが、やけに何かが頭に引っ掛かる。いったいなんだ……?
「…………」
まあ、いいか。
「あ、そうだ、清水。聞いた話なんだけど、この間安藤さんちのにわとりが――」
「ってよくなーーーーい!!!!」
「え、なに!?この話つまらなかった?そうだ!! なら、この間吉田さんちのイノシシが逃げ出した話は……」
「どうでもいいわ!!いや、あんまりどうでもよくなったが……でも、やっぱどうでもいいわ!!」
中島の話を聞いて、重大なことを忘れていた。本来この話をするために、来たというのに……
「あ、待って。俺も一つ思い出したわ」
「後にしろ!!」
なんか再び中島が俺の話に水を差そうとしてきたが、同じ過ちは繰り返さない。今度こそ無視する。
「ビックニュースだ!!俺もビックニュースがあったのを忘れてたよ。いろいろあって忘れてたが、思い出した。いいか、聞いて驚けよ……」
これから話される内容を知らない中島は、よくわからずにぽかーんとした顔をしている。
「……?」
「なんと、あの……あの佐々原が帰って来たんだ!!」
「……………うん、知ってる。俺もさっきそこで会ったし……ごめん、俺のさっき言った思い出したことってそれなんだ…………」
「な……………………」
……開いた口が塞がらなかった。あまりの驚きで、口が“お”を発音する形で固まる。
「いやー、ごめんごめん。でもあいつ、ほんと全然変わってなかったな!!ははっ」
「なにがおかしいいいいいい!!ついさっきのことだろ!?忘れるなよ!!」
「いや、だからごめんって……」
「猫や牛やイノシシより、こっち先に思い出せよおおおおおお!!」
「牛じゃなくて、にわとりな」
「そこどうでもいいから!!」
疲れる。中島と話してると、やけに体力を消費させられる。
すでにツッコミ疲れて、肩で息をしている始末だ……
「もういいや……伝えるべきことは伝えたし……」
役目を果たし終えた(果たす必要はなかったようだが)俺は、もう大人しく家に帰ることにした。
「もう帰んの?」
「そうさせてもらいます………」
完全に憔悴しきった俺は、よろよろと立ちあがる。
「それじゃあ、ちゃんと建設の予定わかったら知らせろよ?」
「おう。それじゃあなー」
「んじゃ……」
適当に手を振って、部屋を出る。
部屋を出たすぐ先に玄関があり、そこで靴を履いて家を出る。中島の家にはもう何度も来ているため、この動作にも慣れている。
だが、今回はいつもより疲労感が強い。
当然、ツッコミで疲れたのもあるが、ほとんどは今日一日で蓄積された疲労だ。
朝家を出て、奈央ちゃんに会って、神坂に出会い、そしてまた奈央ちゃん会って、そして佐々原に会った。
これら全て今日一日の出来事だ。充実し過ぎてパンク寸前のスケジュールだった。
帰ったら早く寝よう……
そんなことを考えながら家に向かう。と言っても歩いて3分程度だが。
佐々原に会った。村の手伝いをすることも決まった。
神坂のことは気になるが、今後の生活が充実していきそうなことが2つも起こり、少し浮かれた気分だった。
それが現れる様に、歩幅が普段よりも広い気がした………




