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目が覚めると明るくなっていて、隣にはツチノコみたいに寝そべっているハイエナがいた。
全身を乾かしてもらったあとの記憶がない。
昨日は獣姿で二人で寝たらしい。
人の姿になろうと服をくわえて廊下に出た。
服を床に落とす。ゆっくり息を吸い込みながら、身体を変化させようとしたら、昨日人の姿のまま散々撫で回された感覚を思い出してしまい、鼻からぷしゅーっと空気が抜けて、犬のままへたりこんだ。
マズルを両方の前足でおさえて、ムズムズする鼻先をなだめる。
全然収まらない。
だいきもまだ家にいるし、明日は学校だし、そんなに落ち込んでいられないのに。
走りたくなって、視界に入った細長いしっぽを追いかけはじめた。狭い廊下なので、ぐるぐるしてるとすぐに壁にぶつかった。めまいがする。
身体の気持ち悪さに浸って、気持ちが少し落ち着いたので、全身ぶるぶるして調子を整えると、服を拾って部屋に戻ることにした。
「どっかぶつかった?大丈夫か?」
ベッドであぐらをかいているパンツ一丁のだいきに声をかけられる。
僕は大丈夫じゃない、という気持ちを込めて首を振りながら服を投げ捨て、ベッドに飛び乗り、掛け布団に頭を突っ込んでふて寝することにした。
カサカサとシーツが擦れる音がして、背中にポンと大きな手がのっけられた。
この手のせいで戻れないのに!
少しうつむくと、喉の奥から勝手にうなり声がもれた。
背中にのっていただけだった手が動いて、背中をポンポンされる。困ったことに嫌じゃない。だけど、だからなおさら腹が立つ。
掛け布団からのろのろと顔を抜いてから、身体を横に倒すようにしてだいきの方を振りむき、キャンと吠えた。
だいきはさすがに驚いたようでびくっと体を強ばらせて、目を見開いた。いつも眠そうなだいきの顔が、一瞬キラキラおめめのハイエナの顔に見えた。
眠そうというより困ってるような顔のだいきとしばらく見つめあっていたが、向こうが先に目をそらした。今回はあっさり引かれて、着替えはじめてしまった。
犬の格好をしているせいか、途端に撫でてもらえないのが悲しくなってきた。このまま帰ってしまうかもしれない。
だいきはトップスを着ると、今度はズボンをはくためにベッドから降りてしまった。だいきの背後にまわって見上げる。
どうしよう。
キューキューと鼻が鳴った。
すっかり着替え終わっただいきがやっと気づいてくれた。気まずくて耳が下がる。ちょっとキョロキョロしてからまた見上げると、だいきは優しい顔をしてくれていて、僕は嬉しくなってゆっくりしっぽを振った。
頭に手が伸びてきて、目をつぶった。しっぽはもうとめられない。眉間を撫でられて思わず口があいた。
「ポンポンじゃなくて、撫でろってことだったのか?」
だいきが呟きながらしゃがんだ。
そういうことじゃないんだけど。犬のときはいいんだ。毛皮の上からならいいんだ。
僕はだいきの肩に前足をのっけて、あごものっけて、抱きついた。肩幅広くて厚みまであって、なんて素敵なひじ掛けだろう。だいきの喉元にスリスリしていたら、肩まわりをわしゃわしゃ撫でられてから抱き上げられる。
背中を支えられてお腹側がぴったりだいきとくっついた。
ドクン、ドクン
ドクドクドク
だいきの鼓動は僕より落ち着いていた。背中もゆっくり撫でられて、気持ちが落ち着いてきた。
「犬はこういうたて向きの抱っこ、あんま良くないって本に書いてあったぞ。まだ大丈夫か?」
そんなこと知ってるなんてびっくりして、頭を持ち上げた。器用に片方の眉だけ上げただいきと目が合う。大丈夫だというかわりに、さっきより強く抱きついて、しっぽを振った。




