疲労
カルネ:「掃除!」→セト:「指導」→入眠
カルネ:「掃除!」→セト:「指導」→入眠
カルネ:「掃除!」→セト:「指導」→入眠………………
あれから早二週間が過ぎようとしていた。
毎日毎日変わり映えのない過酷な修行の繰り返し。
というわけで修行シーンは割愛します!
基本的に掃除で吐きそうになってるか温室でぶっ飛ばされてるかだけだし。
公爵ともアルシエラくんともビオラさんとも接触なし。
わからないことが何もわからないまま、日々だけが目まぐるしい速度で過ぎ去ってゆく……
カルネ:「明日、坊っちゃまと共に別館に戻ります。」
僕:「……………………へ?」
それは夜、カルネさんと一緒に見回りに行って仕事を終えた後のことだった。
別館?戻る?
僕:「…………治ったんですか?」
カルネ:「ええ、ですから身支度を済ませておくように。」
それはつまり、本館の掃除やシーツ替え、物資の運搬も、在庫チェックも計算もなく、なる?
いや戻っても仕事はなくならないか。
はぁ〜〜…………いや待てよ、セトさんの指導は?
カルネ:「それから旦那様からの言伝で”別館に戻った後、夜に書庫に向かうように”とのことです。」
はいゼオくんによる指導のフラグが立ちました!
そんなこと言ってた気もするけど僕に休みはないんですか?
カルネ:「返事は?」
僕:「了解しましたぁ!カルネさん!」
カルネ:「声が大きいぃ!!」
ハンカチでバチコーン!
僕:「すみません!!」
この人マジめんどくせぇ!!
やってられねぇぜ!!
…………ふぅ〜〜、落ち着こう。
ここニ週間で漸く仕事にも慣れてきたタイミングでの異動は少し遺憾だけど、現状ここにいても得られるものはおそらくない、と思う。
僕だって毎日無意に与えられた仕事をこなしていたわけじゃあありません!
ちゃ〜んと色々調べてはいた。
……まぁ殆どはカルネさんから得た情報だけど。
まず、ビオラさんについては何も聞き出せなかった。
食事とか掃除の合間に無理やり聞き出そうとしたらすんごい形相で睨まれた。
次に、どうしてアルシエラくんが別館で暮らしていたのかについて。
カルネさんは、坊っちゃんの成長に本館の空気は合わないからだと言っていた。
それは…………まあ、そう。
なんというか、本館は雰囲気がちょっと暗いというか……アレだから、子供向けではないのは間違いない。
それから、アトラーネ・フラーケイルについても。
これはセトさんからも話が聞けた。
なんでもこの国、世界唯一にして最大の統一帝国家“カデラ”はもともとは五つの大国だったらしいんだけど、その大国のうちの一つがこのディオルネス公爵領だったらしい。
元王族って聞いた時は驚いたような、すんなり納得できたような…………僕のイメージだと戦争に負けて王様から公爵に格下げって認識。
でもビオラさんも言っていた通り凄い魔術師だったらしい。
戦乱の魔女、その人が属していた国を除いた残り四カ国が協力しないと打倒できなかったとか…………
四つの大国が共闘しないと倒せないって聞くと確かにとんでもない感じがする。
最後にゼオくんについて。
(アルシエラくん以外)皆んな知ってるけど、知らないフリしてるんだって。
なんで?って聞いたら、「明らかに旦那様の意思を感じるから」らしい。
たまに厨房の食べ物が減ってたり、夜中に本を読み漁ったりしてる音が聞こえるらしいけど、全部無視してるらしい。
ビオラさんと、ゼオくんの立ち位置がイマイチ掴めない。
特にゼオくんが謎。
本人はなんて言ってたっけ?居候だっけ?にしてはいつも偉そうだけど。
あと乱暴…………そういうところはアルシエラくんと通じそうなところを感じるけど、流石に兄弟とかではないよなぁ〜〜顔も髪色も似てないし。
カルネ:「…………聞いているんですか?」
僕:「……あ、はい。」
カルネ:「…………?……それでは、私はこれで。明日の準備を忘れないように。」
カルネさんはそう言って僕の部屋を後にした。
…………え?僕、いつから考え事してた?
カルネさんにハンカチで打たれたくらいから?え?
やばいやばいやばい、仕事と指導で脳が麻痺して、あぁ早く寝ないと。
いやその前に明日に備えて荷造りしないと。
この部屋にあるもので必要な物を集めて、クローゼットにあった鞄に……
僕:「………………僕、何やってんだろう……」
ああ大変幻聴幻覚が見えてきた。
変なおじさん達が僕を励ましながらオペラみたいに大きな張りのある声で何かの歌を歌ってる。
どうしたのおじさん達?なんでそんなギョッとした目で僕のことを見てるの?
「杉の子“起きなさ〜い!!”」
カルネ:「起きなさーーーい!!!」
僕:「ハッ!?」
え、え??
カルネ:「今何時だと思っているんですか!?もう出発の時間まで二十分もありませんよ!?」
え、寝てた?ベッドにも入らず寝落ち…………気絶!?
やばい、怖すぎる!本当に?
しかし、残念ながらカルネさんは僕に落ち着くための猶予すら与えてくれない。
カルネ:「五分で用意なさい!さもないと……さもないとぉお!!」
僕:「はい!はいはい、すぐに準備いたしますです!」




