公爵夫人との世間話
定期報告:特になし。投稿の継続に努める所存。
魔術がある世界だと戦い方とかも僕が知ってるものとは全然違うんだね。
結界かぁ〜〜、僕も使えたりするのかなぁ。
僕:「……このお屋敷の結界を作った人って、やっぱり凄い人なんですか?」
思い返してみると、僕はゼオくん以外のちゃんとした魔術師に会ったことはない様な気がする。
セトさんも魔術は一つだけしか使えないみたいに言ってたし。
この広いお屋敷全体に結界を張る魔術師って、きっと凄い人だと思うんだけど。
ビオラ:「…………今から約500年前、アトラーネ・フラーケイルという魔術師がいたの。」
……ん?無視された?
僕:「そうなん、ですか。そういえばさっきセトさんがその人のことを話していた気がします。」
ビオラ:「セトが……?そう……」
戦乱の魔女、だったかな。
歴史的偉人みたいだけど、500年も昔の人だったんだ。
ビオラ:「世界中を戦争に巻き込んだ、歴史の分岐点となった魔術師よ。この屋敷に張られている結界は彼女の魔術論を基盤としているわ。」
魔術論!論文みたいなものかな?
僕:「へぇ〜、(よくわからんけど)そうなんですか。」
よくはわからん!
けど500年経った今でも利用されてるってことは、凄いことなんだと思う。
戦乱の魔女、もろに戦争に関係のある魔術師だったんだね。
戦争…………
僕:「その、アトラーネ・フラーケイルって人はどうなったんですか?」
ビオラ:「戦死したと、歴史書には記されているわね。」
戦死か……ファンタジーの世界にもまあ、戦争ってあるよねやっぱり。
寧ろあって当然かな。
……………………
僕:「この国も戦争に巻き込まれたんですか?」
ここがどんな国なのか全く知らないけど、聞いた感じではその戦乱の魔女と結構関係がありそうだよね。
ビオラ:「……この帝国は、戦乱の魔女を討ち取って成された国よ。ついでに言えば、このディオルネス公爵領は元は彼女の故郷だった場所。」
僕:「え?」
故郷!?関係あるどころかもろ現地!?
ビオラ:「このことはよく覚えておいた方がいいわ。ディオルネス公爵領の住人というだけでも煙たがられるから。」
ちょっと待って。
最近待ったばかり使っている気がするけどちょっと待って。
ビオラ:「息子の側仕えが長く続いたら…………他の貴族と接触する機会も増えるでしょう。粗相のないようにしてちょうだい。」
怪しい匂いがプンプンするんですが?
腹黒そうな公爵に、ここは世界的に恐れられていた魔女の出身地で、このお屋敷の結界とやらはその魔女の魔術を応用したものってことでしょ?
僕:「……このお屋敷って、貴族の人を招かれたりするんですか?」
ビオラ:「………………」
僕:「……見られたらまずいものとかがあった、り……?」
ビオラ:「………………まあ、あるでしょうね。私は知らないけど。」
言質が取れたぞ、取れちゃったぞ。
これ犯罪、国家反逆とかそういうのなのでは?
いやそれどころか、禁忌的なアレとかもあったりするのでは?
この屋敷の結界とか……
ビオラ:「貴方が詮索したところで何にもならないわよ。」
うわっ!出たよその言い回し。
今日2回目だ、君じゃどうにも出来ないよっって言われたの。
ビオラ:「不安も焦燥も、意味がないなら全部忘れて、長生きすることだけを考えなさい。」
……………………
僕:「…………なんか、他人事というか、何回も人を見殺しにしてる様な言い方ですね。」
僕の吐いた嫌味に、公爵夫人の足が止まった。
ビオラ:「…………その性分、無自覚かしら?貴方はしぶといけど危うそうね。」
そう口にした彼女は振り返らなかったけれど、顔を顰めている様な気がした。
…………やっちまったかもしれない。
そうだ、この人は公爵夫人だ。
偉い人!権力者!
流石にさっきのはまずかった……!
僕:「…………申し訳ございません、失礼なことを言って。」
直ぐに謝った。
僕の頭は軽い……いや重い!重いからいくらでも下がっちまうぜ!
ビオラ:「…………こういう時は、「発言を撤回します」と付けるものよ。」
僕:「あ、はい、発言を撤回し」
とそこで僕の言葉は遮られた。
ビオラ:「いいわ、撤回しなくて。」
僕:「え。」
え?じゃあなんで言ったの?
いやこれはまさか、謝罪なんてしても許さないということ……!?
僕:「あのッ……!」
もう一度謝ろうとした瞬間、別の思考が頭をよぎった。
僕:「…………それって、もしかして認めるって意味ですか?」
ビオラ:「そうよ。」
夫人は呆気なく認めた、人を見殺しにしていると。
誰を?いつ?今も?僕みたいに?なんで?
僕:「振り返らないのって後ろめたいからですか?」
ビオラ:「…………それは、少し違うわね。」
なんだか不穏な空気になってきた。
薄暗い廊下歩いてる時点で元々不穏なんだけど、そうではなくて。
この家は闇が深すぎる。
僕:「見殺しっていうのは……旦那様が、人を殺すってことですか?」
今度は僕の質問に答えず、また靴音を鳴らして歩き始めた。
薄暗い廊下にさっきよりも深く靴音が鳴り響く。
もしかすると更に怒らせてしまったかもしれない。
ビオラ:「貴族なら珍しくもないわ。特に、夫は国の重鎮だもの。」
僕:「…………」
今すぐ退職したい。
職場が物騒すぎて吐きそうです。
そんな何一つ救いのない話を聞きながらようやく僕はカルネさんと合流した。




