ダンジョンの不思議 その3
三階層での戦闘も慣れてきたことで、資源調査を始めました。
大蛇との戦い方はまだ確立されてませんが、職業レベルが20代後半となって、ゴリ押し気味で倒し切ることに成功します。
とくに徹くんが持ち出した、土木用の大型ハンマーは奴に大打撃をぶち込み、頭に喰らわせれば一方的に攻撃し放題と為りました。
そこからは俺もハンマーを装備して、タコ殴りの祭りが始まります。
完全にノックアウトなるまでが大変なので、ハンター達だけで挑み、倒し切るのには難しく、やはり何らかの武器が必要なので、今のところ俺たちだけで倒すしかない状況です。
なので、資源調査に入った訳ですが、これも既に場所も判明しているので、あとはどれだけ採取出来るかの調査だけです。
まず、三階層に下りてすぐに東側に行くと、通路が二つに別れており、それを南へと下ると採掘できる場所に辿り着きます。
そこで取れる素材は、念願の『石炭』でした。
発見して小躍りしてしまい、他のメンバーに引かれてしまいましたが、『コークス』が作れると知るや、誰もが納得しました。
現状、良質な鋼をつくる事が難しく、コークスがあればそこを解決させる事が可能となり、また新しい技術の幕開けとなることに、皆は喜びました。
「なあなあ、線路とか作って列車とか走らせられるんじゃね?」
「えーっ! 発電所が先よ! 戦争とか起きたら、どうすんの?」
「まあまあ、まだそこまでの話にはならないでしょう」
「そうですよ。 戦争とかの話はまだ聞いてませんし、列車は行き過ぎでしょう。 それよりも、荷馬車や台車の強化が先でしょうね」
「「なるほど」」
「私なら、毎日風呂に入りたいので、本格的なボイラーをつくりたいですね」
「「それだ!!」」
という感じで、なにを作るかについて語り合いました。
◇◆◇
新しく造った高熱炉に色々と細工を施し、耐火性の高い煉瓦をつくりつつ、三階で石炭を採掘しては持ち帰る日々を繰り返しています。
コークスはスキルで製造して、大量につくる為の施設は後回しにしました。
今はまだ白炭でも間に合うので、まずは試験的な製造にコークスを使います。
何よりも、三階層に出現する大蛇対策の武器を揃えないと、ハンター達での活動もままならないので、鋼鉄製の武具をつくる事にしました。
大蛇は硬くてタフな魔物なので、まずはその身体を貫く杭をつくりました。
試しに奴の身体に打ち込みましたが、これが殆ど効果がなく、体力すら削れない失敗作と為りました。
そこから、ハンマーの重さを増やしたり、肉厚なバスタードソードをつくったりしましたが、やはり大差もなくいまいちな成果しかありません。
なので、これはあまり使いたくはないのですが、鋼でつくったパイプを何本も用意しました。
察しの良い方なら分かると思いますが、一本のパイプを真ん中辺りで斜めにカットします。
そうです。 巨大な注射器の針といった感じです。
この巨大な注射器の針の使い方は、アレなアレするゲームや漫画でたまーに見かけるアレなアイテムと一緒です。
これを奴の身体にぶっ刺してしまえば、血は流れ続ける上に、場合によっては更に大量の血を流す結果となり、失血死を免れないでしょう。
「うわぁ、この人やべぇ奴だったわ。 こっわっ!」
「達也さん。 あなたって人は……」
「はっはっは! これは酷い。 容赦がないですね」
「ふっ、何とでも言って下さい。 今こそ、溜まりにたまった鬱憤を晴らす時なのです! ふっふっふ」
奴に対峙し続けて、どれだけ楯がおしゃかになり、殴られ続けた俺の鬱憤を晴らす為にも、大蛇の身体に打ち込んでやると、不敵な笑みを浮かべてしまいます。
「毎回ボコボコに殴られては、何度も作り直すハメになった装備の損害、俺の喰らった痛みもすべて倍返しだ!!」
「「ああぁ、はいはい」」
俺は思わず思考をダダ漏らしにしてしまい、気付けば皆から白い目で見られていました。
◇◆◇
そんな達也たちが、大蛇対策を進めていた頃、ダンジョンの奥底で活動する二人に進展がありました。
「やった! レベルがあがったのね!」
「おめでとうございます。 マイマスター」
達也たちの活躍で、ダンジョン内で倒された魔物達が一定数に達して、ダンジョンがレベルアップした様です。
元々ダンジョンとは、モンスターの封印の地となる様に設計されています。
過去、『魔神』の眷属たちの暗躍により、この世界に魔物が溢れ出し、その大半の『魔神の眷属』たちはダンジョンへと封じられて行きました。
それでも、ダンジョンに収まりきれずに溢れ出す小物の魔物たちは、時の流れと共に各地へと散らばり、マナの濃い場所に根付いてしまいます。
こうして、かの『全能の神』を自称するこの世界の神は、過去の不手際をごまかし、ダンジョンをつくって魔神侵攻を無かった事にしようとしたのが、ダンジョンシステムの誕生でした。
そんなごまかしも、現状を鑑みれば失敗しているのは明白であり、その対応にも他の世界から人々を誘拐、解決させようと画策する始末です。
そして、達也たちがこの世界に転生された経緯もそれに沿った流れであり、現状に至っても嬉々として楽しみながらつくられていく、システムへと変わって行きます。
「これでまた一歩前進よね」
「はい。 ダンジョンのレベルが4となった事で、さらに領域は拡張されて、新たな強者を喚ぶことも可能となります」
ダンジョン発生時にはなにもなかったこの地に、魔物たちを引き寄せ喰らう事しか出来なかったのですが、ダンジョンのレベルが上がる事で産み出されるモンスターは増えて行きました。
そんなダンジョンがレベル2を迎えたころ、この地に住まう強者が現れ、尾形のりこはダンジョンマスターとして喚ばれました。
「じゃあ、じゃあさ、新しいアイテムも増えるのよね!」
「……はい。 おめでとうございます。 マスター」
目を輝かせるのりこは、まりあに新しいアイテムをねだる様に訴え掛けます。
その問いかけの眼差しに負けて、恭しく俯き肯定するまりあでした。
「うふふ…… やる気が出てきたわ。 まりあもそうでしょ!?」
「はい。 マイマスター」
部屋の中をはしゃぎまわる主人と、それを見守るメイドの日常は、こうして新たな局面を迎えるのでした。
次回は少し遅れるかも知れません。
色々とたまった用事もあり、忙しくなるのでご了承下さい。




