表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者さまは無双がしたい(仮)  作者: アイネコ
ダンジョン探索編
61/74

リユート村の長い夜

今週も、よろしくお願いします。

今回は長いです。といっても、4000文字ほどですが……




 リユート村に押し寄せてくる人々が日に日に増えて、俺たちの仕事は大幅に増えてしまった。


 一連の騒動は形をかえて、今現在のリユート村にある問題を発生させています。


 まず、寝るところが足りません。 連日、一〇〇人を超える難民に近い人々が、職と食を求めてやって来るのです。


 次に、ハンターまたハンター志望者ならまだ仕事があるのですが、老人や子供たち、また女性といった人が大半で、すっごく対応に困りました。


 まさか、危険地帯に近いこの場所に、弱者が多くながれ着くなど誰が予想できるのでしょうか。

 こういった状況に、村長をはじめマリーさん、ドワイトさん達も経験が乏しく、ここまで多くの流れ者を聞いたこともないという事で、村の拡張を視野に、可能な野営地をつくりあげ、そこに留まって貰うしかありませんでした。


 最後…… になるかはまだ不明ですが、食料がまったく足りてなくて、魔の森での狩りや、採取できる森芋の栽培を開始しました。


「なあ、妹よ。 なんで仕事が減らないのかなあ!」

「いいから、さっさとお芋の皮を剥いちゃって!」

「はっはっは。 こうも連日連夜いもが続くと、もう食べ物として感じなくなって来ましたね」


 そうなんです。 この魔の森産の森芋は収穫量も多く、畑でも実がなるのも早くて、ここ(ひと)月近くは主食となっています。


 日毎に増える移住希望者たちだけでなく、リユート村に所属する全員が、この()()()を食べて過ごすようになっています。


 いま作っているのは、森芋による『コロッケ』であります。

 ちなみに、昨夜は森芋の『にっころがし』、その前は『マッシュポテト』、そのまた前は森芋版『肉じゃが』でした。


 いまや主食となった森芋には、大変感謝しておりますが、それはそれでかなり苦しく、味も悪くはないが調理が蒸すか煮るかしかないので、飽きてくる人達が続出します。


 現地の人達も、かなり我慢して食べてくれるので、夕食だけは我々の知るレシピを使い、スキルの力で量産して提供することとなったのです。

 ぶっちゃけてしまえば、我々も我慢の()()であったし、うまい飯が食いたいというのが本音でした。



 ◇◆◇



 リユート村の事態が収まったのは、なんと三カ月後の事でした。


 早いか遅いのか、どちらなのかは人それぞれでしょうけど、この地に住まう人々からして見れば、早いといえるでしょう。


 これも偏に皆の協力と我慢、常日頃からの備えと、積み上がって出来た信頼と努力の賜物と言えます。



 リユート村に辿り着いた人達は、約四〇〇〇名となりました。


 流石にリユート村だけで、すべてを受け入れるのは無理と判断して、近隣の村に掛け合い、可能な支援をする旨を伝えて、大半の人々が近隣の村へと移住して行きました。


 近隣の村でも、土地や食料も足りないので、我々の職業スキルの力技でごり押しで乗り切ります。

 あと、近隣の村との仕事を通しての付き合いがあったのも功を奏して、移住者と住民の間に、大した問題も起きずに受け入れは進み、皆のそれまでの協力的な対応が良かったせいか、時間とともに皆は仲良くなって行きました。



 最終的なリユート村への移住希望者は、六〇〇名ほどとなったのですが、結果的にうまくいった事が重なり、運が良かったとしか言えませんでした。


 なぜなら、住む場所はおろか、流れついた先々で拒否された上に、着の身着のままで彷徨う彼らは、まるで死人がごとく虚ろな表情であり、泣き叫ぶ気力もなく、ぐったりとした赤子を見た時は、堪えきれずに泣いてしまいました。


 彼らを、こんな状態にまで至らしめたガラント商会の『ポーション買い占め騒動』ですが…… 

 その回復ポーションの供給もとは俺であって、彼らの状況を目の当たりにして、無縁とは言えません。


『馬鹿なんじゃないか?』

『色ボケしてたからだろ?』

『考えが甘いんじゃないの?』


 そんな言葉をはく邪神(かみ)の、俺を嘲笑う声が聞こえた気がして、この世界に潜む悪意がどんな()()かを思いだし、自分の愚かさを悔やむのでした。


 もう、こんな事はさせない。


 いくら好きな女性を守る為とはいえ、ここまで甚大な被害を齎すこの世界に、俺は改めて心に誓いました。


 今回は偶々、この村まで来れた人々ではありましたが、失われていった人々も多く、その被害者を悼むのであれば、全力で取り組むのが正解だと、学んだ事件でありました。



 ◇◆◇



 一連の騒動により、南方の街は衰退の一途をたどっているらしく、安全に暮らすには些か不安な地域へと為りました。


 いままで、その街を治めていた盟主たちも地位も失い、住民たちが話し合った結果、合議制に近い組織をつくるらしく、多くの人々はその地に残りました。


 こういった情報を持ち帰ってくるマリー商会の人々には、本当に頭が下がる思いがあります。

 資金面だけでなく、彼らが居なければ物資の購入にも困り、どれだけ無駄な時間を浪費したかも、分からないのが実情でした。


 そこで、マリー商会を通じて、その街との取り引きが出来ないかと手紙を送り、多くの産物をつくる見返りに、リユート村に投資をして欲しいと、(したた)めました。



 数週間後、マリー商会を通じて街からの返答が届いたと連絡があり、村長のお宅に集まることと為りました。



「で、どうでした? 結果は……」

「はい。 なんでも、まだ色々と混乱しているらしく、協議をするにも時間と資金が足りないそうなので、また後日に返事をするとの事です。 ただ、食料などの産物については、取り引きがしたいとの答えはありました。 まあ、予想してた通りのお返事でしたね」


 マリー商会を通して送った俺の手紙は、無事に届けられたようで、この返事がきた時点で街の実情も好転してないと分かりました。


「そうですね。 でもまあ、今後も取り引きは出来そうなので、ひと安心できました」

「それはそうですよ! タツヤさんがつくる薬品もですが、今も作らている農作物がなければ、街は冬を越せませんからね」


「ははは、ちげえねえ。 あんちゃん達が居たからこそ、この村は町に発展したんだしな!」

「そうです。 私達の暮らしは、みなタツヤ殿の指導と、その教えがあったればこそです。 リユート村を…… いや、町を代表して、みなの想いを述べさせて頂きます。 本当に、ありがとうございます」


 街からの返答しだいでは、物資と人の往来が途絶えたかも知れなかったので、俺は胸に抱えた重しがひとつ取れた気がしました。


「なあ、村長。 来年あたり、住民が一〇〇〇人を超えるんじゃないか?」

「うむ、確実に一〇〇〇人は超えるだろうな。 ドワイト、お前さんには悪いが、引退は先延ばしにさせて貰うからな」


 村長からの要請に、ドワイトさんはドンと己の胸を叩き、いい笑顔で啖呵を切ってみせました。


「はっはっは! まかせろ! まだまだ若いもんにゃ負けねえ! オレの身体が持つ限り、働き続けるぜ」

「ふっ、それは私も同じだよ。 私の夢は、孫をこの町の立派な盟主へと、育てあげる事だらからな」


「あら、では私たちも負けないように頑張りませんと。 ねえ、タツヤさん?」

「えっ? ……そ、そうですね。 出来るだけ早めにダンジョンを攻略しますので、もう少しだけ待っていて下さい。 は、ははは……」


 村長さんの夢を聞いたことで、マリーさんは俺の脇腹をつついて、何かを伝えたい様な雰囲気を醸し出します。


 色々とまわり道やトラブルも起きたことで、マリーさんとの結婚話も有耶無耶となっていた事を思いだしました。


 この世界にきてから、本当に何度も世話になったし、その好意に応えられなかった事もあって、『神のお告げ』を理由に先延ばしにしている事も、俺の抱える問題のひとつとなっていました。


「なあなあ、あれってあれだよな」

「ん? なにいってんの? お兄ちゃん」

「ははは、徹くん。 流石にまだ結婚はしてないんだから、尻に敷かれてるとか、言わないであげてね」


「おお、それだそれ。 尻に敷かれるってやつだ」

「何言ってんの。 達也さんとマリーさんの仲は最高じゃない。 あんなに仲睦まじく分かり合えるなんて、羨ましいな」


 そんな感じな話が辺りの空気を支配しだして、お互いの夢や希望の話をしながら、ここまでの苦労を語り合い、労いの宴会へと突入して行きます。


 そんな村をあげての宴会は、たくさんの人達が参加することとなり、大人やこども達からもお手伝いにかり出されて行きます。


 総人口九〇〇近くまでになった村人たちは、今ではすっかり元気となって日々の仕事をこなし、元の住人ともうまく過ごせるまでに為りました。


 そんな彼らの努力に対して、村は備蓄していた物資を開放して、これまでの鬱憤をはらす為にも、お酒とごちそうを用意して宴を開催しました。


 老若男女、ところかしこで労いの言葉と、お互いを称賛する声があがり、宴会場は笑い合う姿で溢れていきます。


 ごちそうが並んだテーブルの周りには、子供たちが集まり嬉しそうに肉を頬張り幸せそうに食べています。

 一方では、自分たちが仕留めた獲物を酒の肴にして、大人たちは酒盃を打ち鳴らし、今日まで頑張ってきた自分たちに対して、祝杯をあげます。


「しっかし、一時はどうなるのかと思ったけどさあ、やれば何とかなるんもんだな」

「そうだね。 なんだかんだで、私たちも成長してるんだよ。 ここにいる人達と一緒にね」

「皆さん、お疲れさまでした。 明日のことは忘れて、今夜は楽しみましょう」


 田上兄妹や木村さんにも何時も通りの光景が戻ってきて、しばし彼らとその会話を楽しみました。

 労うことはもとより、出した功績についても称賛を送り、ダンジョンやこの村の未来について、夜遅くまで語り合いました。


 時は深夜へと変わり、人々は宴会場から自分の居場所へと帰って行きます。


 そしてこの日は、リユート村の最後の夜として、住人たちの記憶に残ることになります。


 なぜなら、この日を境にしてリユート村は、町として急速に発展し始めるからです。





正直にいうと分けようとは思ったのですが、頭が働かず断念しました。すみません。

あと、気付けば評価下さり、ありがとうございます。

改めて頑張ろうと思った次第です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ