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僕の彼女は王子様  作者: 朱音小夏
二年生

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3/9

壁ドン

「ねぇ、壁ドンってまだアリ?」

「壁ドンかぁ......そう言えばあんま聞かなくなったよね」

「旬は去るのが早いですからなぁ」


 女子のそんな何気ない会話が入ってくる。

 きっと、麗さんは"される側"より"する側"がピッタリだろう。

 ......となると、僕が壁ドンされるのか?


「麗様はぁ、壁ドンする方だよねぇ」

「なぁに? してほしいの?」


 そう言うと麗さんが櫻井さんに壁ドンをした。

 ......うん。モヤモヤするな。

 そんな僕の胸中とは別に、女子達はキャッキャとはしゃいでいる。


「女子はいいよな。あれだけで楽しくなれて。オレらがしたら『キモイ』で終了だぜ」

「......涙流すほど?」

「......いや、ワンチャン月城となら......」

「キショ!!」


 僕は友人の荒井の発言を一刀両断して次の授業の予習をする。

 ......壁ドン、かぁ......




 ***


 今日は天気が良いので屋上で昼食をとることにした。


「麗さんは今度のデートで行きたいところとかある?」

「で、デート?!」

「最近行けてなかったじゃん? そろそろ行きたいなぁって」


 僕がそう言うと、麗さんは顔を赤くしていた。

 ? どこに顔を赤らめる要素が?


「麗さん? 嫌だった? また今度にしておく?」

「い、いやじゃない!! 行く!! 絶対!!」

「お、おぅ......」


 麗さんの思った以上の食いつきに、僕は驚いてしまった。

 ......なんだかんだ、"王子様キャラ"でいても女の子なんだよなぁ。

 僕しか知らない麗さんの一面がある。

 そう思うと、なんだか嬉しかった。


「――麗さん」

「? 何? さく、や?」


 ―― ドンッ!!


 僕は麗さんがもたれかかっている壁に壁ドンをやってみた。

 ――さぁ、一体どんな反応を見せてくれるかな......?


「~~!! ズルいズルい!! 私の朔弥がかっこよすぎる!!」

「......そんなにいいの? これ?」

「女子の憧れだよ!! 廃れとか関係ない!! ......いつもはやってあげる側だったけど......される側がこんなにドキドキするなんて......」


 やっぱり麗さんは"王子様"といわれていても女の子。

 この一面は僕だけが見られる、特権。

 ――可愛いなぁ。


「な、なにさ! そんなにニヤニヤして!!」

「いやぁ? 別に何でもないよ? ただ、皆の"王子様"は僕の前では可愛い女の子なんだなぁって思ってさ。嬉しいんだ」


 麗さんは僕の言葉に顔を真っ赤にした。

 ――王子様の赤面なんてレア物だ。


「壁ドンしてほしくなったらいつでも言ってね? 僕で良ければしてあげるから」

「......朔弥、揶揄ってるでしょ?」

「そんなことは......?!」


 まさかの形勢逆転。

 今度は僕が麗さんから壁ドンを受けた。

 ――なるほど。これはこれは。


「......悪くない」

「~~なんなのさ! 全然効いてない!」


 麗さんは悔しかったようで、そっぽを向いていじけてしまった。

 僕はそんな麗さんの顎をクイッと持ち上げた。

 そして――

 チュ。


「これで機嫌なおしてね?」

「......」


 麗さんは完全に固まってしまった。

 ......あれ?


「......ズルい」

「え?」

「......朔弥、ズル過ぎる......」

 耳まで真っ赤になった麗さんを見て、僕は思わず笑ってしまった。

 ――やっぱり可愛いなぁ。

 皆の"王子様"は僕の前ではただの可愛い女の子だ。


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