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その手を取って

sideリリス


化粧品の準備をしながら私がアイリス様が偽物だという事実に気づいたことに気づかれないように鼻歌で気分を誤魔化す。


司教のことだ。

私が事実に気づいたということが分かった途端何をするのか予測が出来ない。


化粧品の準備をしながらチラリとアイリス様の様子を伺う。

その表情は暗く、ぼーっとしていて何かを思い出しているようだった。


私はいつも通り振る舞えているはずだ。

早鐘を打つ心臓をそっと押さえると深呼吸をして一拍置いてから化粧の準備ができたのでアイリス様〜と声をかけた。


化粧が終わるとやっぱりいつものアイリス様とは違う反応を返してきた。


あまりに警戒心のなさそうな純粋な感想を言われた私はつい口走ってしまった。


「アイリス様じゃないですよね」


そう言った瞬間、アイリス様の目がを泳ぎだしたのを見てあぁ、やっぱり。

と思うと同時に、今からでも否定してほしいと願っている自分がいたことに驚いた。


「ずっと一緒に育ってきたようなものだから分かります。今のアイリス様が偽物ってことぐらい」


アイリス様の口からひゅという音が聞こえ表情筋が固まってしまっているのが分かった。


「……やっぱり偽物なんですね」


このまま偽物のアイリス様に殺されるのかななんてことを考えながら意味もなくぽつりぽつりとこれまでのことを話していく。


その間にアイリス様が殺そうとしてくる気配はない。

かと言って抵抗する気力ももう湧いてこない。


――アイリス様が私の全てです。


昔アイリス様にこうは言ったが本人が居なくなって痛いというほど実感させられた。


アイリス様の表情を見る気にもなれずただ俯いていると唐突にアイリス様が話し出した。


この世界がゲームの世界であることや今のアイリス様が異世界人であるという荒唐無稽な話だ。

普段の私ならそんな事あるわけないと一蹴するような話だ。


だが、


「だから、貴方が私を信じるならこの先に起こる事を教えるわ。例えば…ヴォルテール公爵と繋がっている教会の人間のことやアイリスを戻す方法を、ね」


今は失ってしまった子供の頃のアイリス様のような輝いている目を見て


「えぇ、でも貴方が居なかったら私、この世界で生きていけないわ。それに、アイリスの見た目をしている私を放置することなんてできないでしょう?」


確かにその通りだと思いながら惹かれるようにその手を確かに、しっかりと握った。

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