私の好きな人は
林さんが断言した言葉が、ずっと頭の中をグルグルと回っている。
「チョコー!おーい!」
だから、目の前に真田くんがいると気付いたのは、だいぶ経ってからだったみたい。
「ぅわ!な、なに真田くん」
「何って。珍しく眉間に皺、寄ってるからどーしたのかなと思って」
さわやかな笑顔で、その元凶本人が聞いてくる。
「どうせ彼女と何話したのか聞きたいだけでしょ?」
(そんな事言いたくないのに、なんで自爆発言するかなぁ、私よ。)
「まぁ、それもあるかな」
「それもってーーー」
「お前が元気ないと気になるから」
「え・・・」
ほらね。
またそうやって。
笑顔でそんな台詞をさらっと言う。
ただの友達相手に・・・。
「別に。おたくの彼女に一方的に惚気話聞かされて、不愉快だったから、とかじゃないから」
「え、アイツ惚気てた?ウッソ、なにそれ、すげぇ聞きたいんだけど」
嬉しそうに目をキラキラさせて真田くんが顔を近づけてくる。
(さ、殺傷能力がえげつないよ・・)
「言わないよ、守秘義務」
「なんでだよーチョコのケチ」
目を逸らすと、真田くんが大袈裟にリアクションする。
「そんなに知りたければ彼女に直接聞いたら?」
「いやいや、面と向かっては恥ずかしいでしょ」
「彼氏なのに?」
「うん」
林さんの言葉が脳裏をよぎった。
100%フラれない自信・・・あるってすごいな。
そんなに思われてるのか・・・。
真田くんの表情見たら嫌でも分かる。
「大好きだねぇ、ほんとに林さんのこと」
「まぁなー」
照れたようにはにかんだ笑顔で、私はまた、まんまとやられているというのに。
−−−私の好きな人は天然たらしです。




