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スクイーズに夢中なリンスは置いといて、自販機を見て回る。

一応、銀貨を投入してみたが、またしても戻ってきた。

こんなにいっぱいあるんだから、使えないなんてもったいない。

どうして専用コインが見つからないんだろう?


「ねぇ、リンス、迷宮のどこかにコインって存在してるよね?」


「えーっと、コインですか?まあ、何枚か持っていますよ?」


そして見せてくれたのは銀色のコイン。

いや、これって………ゲーセンのメダルじゃん!

重さも手触りもまんまだと思うよ!?

それに『FOR AMUSEMENT ONLY』って書いてあるもん!


「時々、宝箱に入っているでしょう?」


「1度も入ってなかった…」


「おかしいですねぇ、上層階ではよく出るんですけど」


シロクマちゃん達は顔を見合わせた。

もしかして、メダルはハズレで『LUK(運)』カンストのナナでは絶対に出ないのでは?と…


「次からはー」

「ジャンケンでー」

「負けた人にしよー」


「異議なし」



「では、これはこのキュートな小動物のお礼です」


あ、いや、お返しが欲しかったワケじゃないんだけど…


「ありがとう」


素直に貰う。

12枚貰ったので、シロクマちゃん達にも3枚ずつ配る。


「好きな物買っといで」


「わーい」

「リンスー」

「ありがとー」


ぴょんっと飛びついてハグする3匹にでれでれリンス。

私もさっき見て欲しかった物を買おう。


「それ、どうするんです?」


「え?自販機で買った事ないの?」


「買えるんですか?」


おぅまぃがぁ!

メダルを持っていても、自販機と結びついてなかった!?

まあね、買い物といえば売店や露店だもんね。

無人で買い物なんて想像もしないだろうねぇ。


「これで買えるんだよ…」


リンスをドリンクの自販機の前に誘導した。


「ここにメダルを入れる」


1枚投入すると、今度はちゃんと飲み込まれていった。

やっぱり使えるんだ。


「で、メダルの枚数によってボタンが光る」


缶ジュースはメダル1枚、500mlのペットボトルは2枚。

あ、コーラの350mlペットボトルがある。

こっちは1枚ね、これにしよう。

炭酸大丈夫かな?

ビールあるし大丈夫か。


「ちょっと硬いけど、反時計回りに捻ると開くよ」


2本買ってリンスに1本渡し、開けて見せる。

プシュッと美味しそうな音を立てる。

甘い匂いも鼻に届き、懐かしさに鼻がツンとした。


リンスもプシュッとして恐る恐る1口飲む。

カッと目を見開いたと思ったら、すぐにゴキュゴキュ飲みだした。

冷えてて美味しいもんね。


「ぷはーっ!何ですかこの爽快な飲み物は!?」


ああ、糖分とカフェインの大量同時接種でハイになってる…


「コーラだよ。飲み過ぎると糖分の過剰摂取で病気になるから週に1、2本にしときなよ」


言ったら絶望の表情になったリンス。

でも、これくらい大袈裟に言った方がいいだろう。

だって、この世界で栄養について話している人と出会った事ないんだもん。


「ところで、この文字が読めるのですか?」


あ、もろ日本語と英語で書かれているもんね。

言い訳は…もういっか。


「まあ、スキルがあるからね。私が読めるのは内緒にしてね?」


「………はい、私達だけの秘密ですね!」


なんで嬉しそうなんだろう?


「そうそう、端から1本ずつ試そうと思ってるだろうけど、中にはただの水もあるからね」


キョトンとするリンス。

しゃがんで私の頭を撫でてきた。


「優しいんですね。私がガッカリしないようにしてくれたんですね?」


だって、リンスってば感情が豊かだから、誰もいない時にガッカリしたら可哀想なんだもん。


「んじゃ、ついでにもう一つ。ボタンの上の赤い色はドリンクがホットって意味だから。取り出す時にあちってならないようにね。あ、ドリンク以外に食べ物もあるけど、どれも食べるには特殊な工程をはさまないといけないから、その時はまた教えてあげるよ」


「はい。その時はお願いしますね」


なんでそんな事を知っているのか、追求しないでいてくれるリンス。

リンスになでなでされていると、ほくほく顔のシロクマちゃん達が戻ってきた。

300円で満足するとは、かわいいんだから。



リンスとはメダル集めをする為に1階から周回するというのでここで別れた。

私達はのんびり休憩する。

セーブクリスタルを手に入れたので、もう急がなくていいのだ。


久々のコーラ、おいちぃ。

シロクマちゃん達も好きな飲み物でまた~りしてる。


「あ、連絡ってどうやって取るんだろう?」


「たぶんー」

「ぶんちょうがー」

「運んでくれるよー」


伝書鳩の文鳥版かな?

異世界だし、鞄を背負って飛ぶのかな?

想像したらかわいかった。



第6階層のボスはゴリラ風エイリアンだった。

まあ、シロクマちゃん達が瞬殺したんだけども。

宝箱はジャンケンして負けたイチゴちゃんが開けた。


「やったー」

「メダルー」

「8枚ー」


探索者達の間ではハズレと言われるメダルでも、幼女+3匹は嬉しみのダンスを踊りまくった。



今日はここまでにしよう。

クリスタルを差したから、これで次は7階から始められるんだよね?


拠点に戻ると夕飯には早いという事で、シロクマちゃん達は部屋に戻らず1階のプールに直行した。

元気だなぁ。

温水プールだけど、誰もいなくて貸し切り状態だった。


私はプールサイドで迷宮でダウンロードしてきたデータをゆっくり読むことにした。

施設の説明では『人工的に天使を造ろうとした』と書いてある。

あれ?何か初っ端からよくわかんないぞ?


実験資料もさっぱりでつまんないな。

魔法を介さないで肉体を造る事が重要だとかなんとか。

この世界にはせっかく魔法があるのに科学で勝負しようとしたの?

まあ、私がまだ日本にいた頃でも、iPS細胞で臓器は培養出来ていたもんね。

研究を続けていたら、その内、人造天使ができたのかな?

培養液の中の生物は化け物だったけど、この世界の天使の概念は現代日本人とは違うのかな?


後、この人の手記だけど、これはちょっと毛色が違うんだよね。

途中から始まっているけど、実験とは関係ないのか、自分は考古学者だと言っているっぽい。

迷宮とは誰が何の為にどのようにして創り出したのかを考察していた。

正直、緑の魔女さんに全部聞いていたので『そこはそうじゃないんだよなぁ』などとツッコミいれながら読んでいたが、ハタとなった。

人間は先に仕入れた情報を正解だと思いがちだ。

この件に関しては現代人は真実を誰も知らないと言ってもいい。

ならば、この考古学者の考察が全部間違いだとは断言できない。


『地上の人々は罪人で、迷宮という試練を乗り越えなければならない。』

『人々が心を入れ替えない限り魔物は湧き続ける。』

『神の試練を乗り越えた時、迷宮は消滅する。』


学者というより宗教家みたいな解釈をしているけど。

たぶん、まだ1度も迷宮が踏破されていない時代の人だろう。

迷宮は消滅してもまた生まれ変わるらしいから。

でも最後の一文、これは……


『大陸の中央にある13番目の【碧落迷宮】に、秘密がある筈だ。』


すっごい気になるところで終わっている。

【巨大迷宮】を8番目って言ってるし、この考古学者は全部の迷宮を回ったのだろうか?

手記の続きはあるのかな?

最初の方もないし、気になるなぁ…


「ナナー」

「お腹すいたー」

「ごはんー」


「……………………」


シロクマちゃん達が水着を着て、水泳帽子(耳付き)にゴーグルにビート版、シュノーケルに足ヒレ、浮き輪という恰好をしていた。


「きゃ~ぅ、かわいい!写真撮っていい!?」


急遽グラビア撮影会になった。

シロクマちゃん達もノリノリでポーズ撮ってくれた。


結局1時間もご飯が遅れた。

お腹へったよね。

すまぬ…



それからゆっくりと迷宮に挑んでそろそろ上層を終えようとしている頃、世間では年末ムードに包まれていた。

さすがにクリスマスはなかった。


今年もあと1週間かぁ……

振り返れば、この世界に来てまだ3ヶ月ほど。

濃い毎日だったなぁ………


「ナナ、ちょっといいか?」


支部でも食堂では専用の席を用意してもらっていた。

お腹も満足し、部屋に戻ろうとしたらレスターに呼び止められた。

1階のラウンジに来て欲しいというのだ。

シロクマちゃん達と一緒に向かうと、そこにはどこかで見た顔がいた。


「………グレアムじゃん、おひさー」


「お久しぶりです。その節はご迷惑をおかけしました」


「え、いやいや、お世話になったのはこっちだよ。シロクマちゃんを助けてくれてありがとね」


暗黒団のその後は敢えて聞かなかった。

盗賊は捕まったら極刑である。

彼らも例に漏れず、だろうから…


「で?私達が呼ばれたのは何で?」


アデルに聞いたら、私が来たら全部話すと言われたので知らないと言われた。

むむっ?面倒事の予感が…


御付きを従えたグレアムの向かいのソファに座る。

シロクマちゃんを1匹膝の上に乗せると羨ましそうに見るから、カリンちゃんに目配せしてグレアムの膝の上に行ってもらった。

嬉しそうに撫でている。

正解だったようだ。


「2番目の兄が、【庭園迷宮】を落とそうとしています」


グレアムが言うが、それドコ?なんですが…


素直に首を傾げたら、説明が続いた。

オーランド帝国の皇太子は現在空席である。

皇帝はまだ若く、戦時でもないと言って決めようとしない。

順当にいけば普通に第1皇子の筈だが、第2皇子がきな臭い動きをしている。

兄弟仲はかなり悪いが、第2皇子より第1皇子の方がまだマシ。

止めたいので力を貸して欲しい、と……


いやいやいや、幼女に何言ってんの!?

しかも他国のお家騒動にただの平民を巻き込まないでもらえます!?


無言で隣のアデルを見ると、すんごい白けた顔してた。

その思い、ぶちまけてくださいな。


「帰れ」


あ、一言で終わったね。

そゆことで、と立ち上がろうとしたが、カリンちゃんがグレアムの膝の上に。

しまった、人質みたいになっちゃった…


「話を聞いてください。あなた達にちょっかいを出しているのは第2皇子です」


「……その話、詳しく聞かせてもらおうか?」


カリンちゃん、今のうちに帰ってきて。

小さくおいでおいでをすると戻ってきてくれた。

ふう、変に気を回すのはもうやめよう。


「私達4兄弟は全員母親が違います。第2皇子は後ろ盾が弱いので何より資金が欲しいのです」


しかし帝国にある【庭園迷宮】を管理しているのは第1皇子、もう1つの【巨大迷宮】を管理しているのは第4皇子のグレアムである。

そこで邪魔な第1皇子を蹴落としつつ資金源を得る為に仕掛けた。

他国から強者を集めて迷宮踏破報酬をちらつかせて【庭園迷宮】のダンジョン・コアを手に入れ自分の治める王領に迷宮を出現させようとしている。

ナナ達の事は噂で規格外だと知り、手ゴマに加えようとしている。

他国の国民なので王命は使えないが、子供なので力づくで言うことを聞かせられると思っているらしい。


「その割には、接触してこなくない?」


そう言ったら、アデルが変な顔をした。

なんなの?

じ~~~~~~っと見つめたら、諦めたように呟いた。


「オレが影で排除してた…」


わぁお!?全然知らなかった!


「それは、なんというか…ご迷惑をおかけしてすみません?」


「いや、オレが勝手にやってたんだ。謝罪なんかいらねぇ」


「んじゃ、ありがとう。助かった」


「ん」


照れちゃって、かわいいじゃないか。


「疑問なのは、グレアムもその第2皇子も、私みたいな幼女に何を期待してるのかってコト」


「お前、自覚ねぇのか?」


めっさ呆れた顔ですね、アデルさん。


「お前、自分が思ってるより有能だぞ」


「…………私がノーコンなの知ってるクセに」


「アレは有り得ねぇがな」


鼻で笑うな、こんちくしょう。


「で?こいつに何を望む?」


アデルが私のマネージャーになった。

全力で乗っかる。


「【庭園迷宮】のダンジョン・コアを先に手に入れて欲しいのです」


「無理」


誰が考えても不可能です。

お帰り下さい。


「オレらが欲しいのは【巨大迷宮】のコアだ。他のに構ってられるか」


「いいですよ。コアと言わず、土地ごとまるっとお返しいたします。ただし私が皇帝になれたら、の話ですが。まぁ、天地がひっくり返っても無理でしょうけどね」


にんまりグレアム。

あ、これが本当の狙いか…

まだ子供なのに、恐ろしいコ!?

私の事はどうでもよくて、自分が皇位につく為にアデルを通じてノア王国に後ろ盾になって欲しいのだ。

国内に味方が少ないのだろう。

国は小さくとも、武力だけはあるノア王国を頼らなければならないくらい、彼もまた、後ろ盾が弱いのだ。

それにしても、あの言い方は…


「皇帝になりたいの?なりたくないの?」


「別に、どうでもいいかなぁ」


本心を隠した笑顔。

確かに、アデルが前に言ってた通り、何を考えているのかわかんないコだね。


「そんな無責任な気持ちなら、ならないでくれる?」


私は不敬罪を承知でぶちまけた。


「平民はね、誰が王になろうとどうでもいいの。理不尽に税を上げたりせず、少なくとも日々の生活をまともに送れれば、それだけでいいの」


グレアムを正面から見据えた。

驚いた顔をしていたが、怒ってはいないみたいなので続けた。


「あなた達王侯貴族は自分達が尊敬されているから平民が言う事を聞いていると思ってる?人があなたに首を垂れるのは敬意を抱いているわけじゃないのよ。平民だったら暴力沙汰にもならない様な事でも、あなた達は簡単に人の人生を奪うでしょう?だから下を向いて災害が去るのを待っているだけよ」


グレアムだけじゃなく、アデルも顔を曇らせた。

でも、口が止まらない。


「だからね、そんないい加減な気持ちで人の上に立つのはやめて欲しいの。平民に媚を売る必要はないけど、雑に扱う人はみんなが困るの。平民は権力に逆らえない。文句も意見も言えないんだもの、地獄だわ」


シンとした。

人が行き交うロビーの一画にあるラウンジなのに、無音である。


「私達を口説きたいなら。素敵な口説き文句を勉強してきてちょうだい」


幼女+3匹が席を立っても、誰も咎めなかった。


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