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終末世界の生き残り 抗う果てに巡る旅  作者: 鷹鴉。


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48話 牙を剥く凍風

「おい。なんか俺の扱いが雑じゃないか?」


 天空城から地上に戻り、これからどうするか話し合っていると、ルシフェルがそんなことを言い出した。


 天使たちからフルボッコにされたルシフェルだが、先王直々に、これ以上この国に居られるのは邪魔だし、いつか何か変なことをしそうだから連れて行って欲しい。肉壁にはなるでしょう。


 とのことで、儂等の旅に同行することになった。ルシフェルへの確認無しで半強制的に。


「そりゃあ、だって、なぁ?」

「うん。やらかしてるし、被害者いるし、反省してないし」

『やらかした、と言う意味ではワタシ達もそう変わりませんが、悪意も敵意も無い純然たる善意でやらかしてますし』

{エンデールに近付くな実験動物}


 言葉の嵐が地に降りた天使を襲う。そして怒神の『やらかした』という言葉に目を付けたのか、全力の反抗を示す。


「やらかしたって、やらかしたなら何したんだお前ら!!そんなに言うなら俺よりもマシなんだろうな?!」


 ルシフェイルがまず儂に視線を向けた。下手に誤魔化す必要は無い。少なくとも凍える前は一切犯罪行為は行っていない。


「儂は特に……いや、無許可で遺跡や国の物を収集してしまっているか」

「窃盗じゃねぇか!」


 そのツッコミが儂の胸を貫く。実際してしまっているので弁明の余地は無い。遺跡の物を自己判断で収集していることを考古学者の友人が知ったら、確実に取り乱すだろうな。


 儂の犯罪行為で勢いをつけたのか、今度は怒神に視線を移す。


『ワタシはマスターの攻撃命令で国を1つ消し飛ばしましたね』

「……ヤバ」


 無自覚で個人テロを引き起こしたルシフェイルですら唖然としている。無理もない。大規模戦術ゴーレムの方の怒神を知っている儂が良く分かっている。魔法具が主要産業で遥か上空にある天空の国でも、怒神の遠隔攻撃で撃ち落とされるだろう。それくらいの危険度をかつて持っていたのだ。


 ルシフェイルは唖然としつつも、視線をエンデに向ける直前でエンデの頭に乗っかっているファザーに目が行った。まぁ、気になるよな。


{我は悪魔だ}

「お前悪魔かよ。そこのバケモノの使い魔って思ってたんだが」


 驚愕というより、納得の顔でそう言った。儂等と違い、ファザーは人型ですら無いからな。


 満を持して、エンデに視線を向け、エンデは言いづらいような様子で口を開く。


「私は……数千年周期で世界中暴れまくってて、壁画に私のこと描かれてるし、滅ぼした国や街なんて多過ぎて数えてない……」

「ま、まさか……魔王エンデールって……」

「私」


 なんと、ルシフェルはエンデが暴れていた時代の当事者か。




「そう言えば、ルシフェイルは最初私たちの質問知らないとか、分からないとか応えてたけど、本当に知らないの?あの時は確認する時間とか惜しかったけど」

「あ?あー、本当に知らないぞ。俺は基本的に武力担当で、何も無い時はぐーたらしてたからな。大賢者とは少し話したし、石板についてとか知ってるが、その他のことはさっぱりだ。俺を造った魔法使いは俺を最強の個体として調整したらしいが、代わりに馬鹿とか言ってたな」


 確かに……コーヒーを飲み苦しみ悶えていたであろう天使に、コーヒーが原因でそうなっているとは知らなかったらしいし、王族に対しても特に考えず逆恨みな状況になっていたから、まぁ馬鹿と言えば馬鹿か。確かに。


「おい。確かに、っていう顔するんじゃねぇ!」


 そんな顔をしていたのだろうか。全員していたな。儂含め。




 取り敢えず近くの町に行くことにし、その町まで歩いているといつの間にか夕方になっていた。慣れている儂とエンデと怒神は野営の準備を。ファザーは特に何もせず。ルシフェイルは凍えていた。


 ガタガタと震えその場にうずくまっている。そう言えば天使の服装はあまり厚手では無かった。どちらかと言えば空を飛びやすいように軽装な方だったはずだ。つまりルシフェイルは全く防寒対策をしていない。凍えるのも無理は無い。


「替えの防寒着をやるから、今はこれを着ててくれ」

「羽が出しづらそうな服だな。それよりも魔法で暖かくしてくれよ。空よりも地上の方がとてつもなく寒くて凍えてるんだぞ!凍死するぞ可哀想な天使が!」


 侮蔑の視線がルシフェルを襲う。


 可哀想という言葉に引っかかりを覚えつつ、近くのエンデと目を合わせる。仕方なさそうに肩を下ろし、息を吐き、手から炎を放つ。既に集めていた薪を、まだ少々早いが火を着けるやり方にしたようだ。暖める方法としては無難だな。もっと過激な方法を取るのかと一瞬思ったが。




 夕食を食べ、寝袋を取り出し、寝る。


 ここ数日は本当に色々あった。天空城の存在を知り、向かい辿り着くと天使がいて、敵対して、倒して、関係は多分改善され、有益な魔法具をいくつか譲ってもらった。今更ながら、行って良かった。石板と大賢者については少し前の方の振り出しに戻ったのは残念だが。


 そんなことを考えていると、そう時間は掛からず眠気がじわじわと儂を包み、意識が遠くなって行った。




 意識が遠のき寝た時間がどれくらいなのかは分からない。だが目覚ましのように、荘厳と呼べるような鐘の音がゴーンゴーンと聞こえている……いつも以上の寒気を感じて、いつも以上に寝袋に身体を埋め……鐘の音?そう言えば石板にも鐘に関する記述が……はっ!


「エンデ!!」

「私の後ろに!」

『異常な寒波を確認!2秒後に到達します!』


 寝袋を放り投げ、この異常事態に目を覚ましたエンデの背後にすぐさま隠れる。と同時に、怒神が何がここに来ているのかを分析し、儂と同じくエンデの背後に隠れる。


 それと時を同じく、ファザーの身体が膨れ上がり、無数の手がファザーから伸びて周囲の展開していた様々な荷物を回収し魔法具のリュックに詰め込んでいく。ついでかのように寝袋で寝ていたルシフェイルも掴んでエンデの背後に放り投げた。


 そんな暇は無いのでありがたい。だがそれ以上にそんな暇が無い!


 エンデが一方の方向に可視化された光の模様が描かれた壁を構築する。盾のような役割なのだと推察するが、そんな暇が無い。直感で感じた。この数瞬の間に、寒波がすぐ目の前に迫っているのだと。


 ビュー!ビュー!ビュー!と人間にはどうしようもないほどの爆風の波が襲いかかり、エンデの魔法の盾が全力でそれを防ぐ。しかし壁の端が割れ、そこから更に冷風がそこを突き抜ける。


 耳が痛い。城壁すら壊すんじゃないかと思うほど、儂が持っている翡翠玉石によって増幅された風の魔法の比にならない威力を感じる。そしていつも以上に寒い。


 こんな状況で検証と実験をするわけにもいかない。だが、もしこの風が直撃したらどうなるのか、答えは分かっている。儂の場合は丁度溶岩の中にいたからあの時何が起きたのかを知らない。少しでも触れれば、氷像になるだろう。


 この状況下で、しかも直接触れていなくとも寒さを感じる風。これを放った張本人は、世界を凍えさせた張本人!ようやくだ、ようやく大きく動いてくれた!ここまで、何年も何十年もかかった。ようやく尻尾を掴んだぞ!


 その時、空から暗雲に沈むように、大きな何かが降ってきた。


 ルシフェイルが息を呑み、続いてエンデと怒神。そして儂も気付いた。あれは天空城だ。先程まで滞在していた天の国だ。


 この場所は天空城の転移の魔法陣からはそう離れておらず、そしてその地点の上空には魔力の反応を怒神が検知していた。見える範囲に存在したことには驚かない。しかし、この状況。動かなくなったゴーレムを何体も見た。まともに動いていたのは怒神の中にいて影響を受けなかったゴーレムと、深い深い地下にいたゴーレムのみ。


 あの時の直前まで動いていたであろうゴーレムは完全に凍えた。ならば天空城を浮かばせていた魔法具や装置が凍え、止まれば。どうなるかは想像に固くない。そして、それをもろに喰らった天使たちは……


 早くこの場から逃げなければ!エンデが限界を迎える前に!


「どうすればっ……!」


 雪に包まれた真っ白なはずの足元に、黒い何かがこの場の全員を包むほどの広さに成った。落とし穴のように、その穴は自由落下という形で儂等全員がその黒に沈む。水の中に入ったような感覚があるが、不思議と息はできるし何にも変化は感じない。しかしどうなっている?誰の仕業だ。あの風から逃れるようにして展開されたこれは、また別の誰かが引き起こしたもの。一体誰が――


{これは苦肉の策。そして悪魔からの助言だ、ここから何が起きようと、己を見失うな}

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