復讐者
俺、ナリタ マサトはイラついている。
今現在俺を含む勇者チームは、以前実戦訓練で訪れたダンジョン、つまりあの『神の箱庭』でダンジョン攻略をしているはずだ。
しかしこいつら......いや、こいつときたら!
「みんな! このモンスターは危険だ! だからここは俺達でやるから下がって!」
そう、元クラス委員長のカミタニコウキだ。元が付く理由は簡単......ここは地球じゃないからだ。
そんな元委員長様は、危険なモンスターが来るとこのようにクラス全員言い、主力メンバーだけでモンスターを倒している。
主力メンバーはリーダーのカミタニ、副リーダーのハトバ、近接担当のアカバネとクロサキ、そして回復役のフユジマだ。
しかし今日はフユジマは来ていない。
気になったのでその理由を訊いてみると、なんでもお姫様と会うらしい。更に内容を聞こうとしたがなぜかはぐらかされてしまったのだが、今もどうでもいいことだ。
フユジマの場合理由があるのだが、もう一人このダンジョン攻略に積極的じゃない奴がいる。
「クロサキ君! 君が奴の手足の腱を切って動きを止めてくれ!」
「......」
カミタニの声が聞こえていないのかどこか遠い目をしている、というよりもいつもこんな感じだ。
それを見て一瞬カミタニは、眉を顰めていたが今度は更に声量を大きくして呼びかけようとしたところで、
「おい! 聞いているのか!?」
「ん? なんか言ったか?」
そこになって初めてカミタニの声が耳に入った様子だ。
ダンジョン攻略に積極的じゃない奴、そしてカミタニに注意された男、クロサキシュンのことだ。
こいつについては、俺はよく知らない。ユウトが言うにはときどきこちらを見ていたらしいが。
「モンスターの手足の腱を切り動きを止めてと言ったんだ!」
「......あぁ、分かった」
その指示にクロサキは、一瞬だけ呆然としながら聞いていたが、すぐに軽く頷きながらそう答えている。すでにこの時点でやる気なのなさは明白だ。だが奴が主力メンバーに抜擢されている、その理由は単純明快。
「瞬歩」
そう言った瞬間には、すでにモンスターに肉薄している。そのスピードは、約三ヶ月前のあのダンジョンでの実戦訓練をした際に見た、団長に迫ろうとするほどのものだ。つまり強い、だからクロサキは主力メンバーに選ばれたのだ。
そんなクロサキの剣は、滑らかな曲線を描きながらモンスターの手足の腱を見事に斬ったのだが、更に驚くことにその斬られたモンスターは、そのことに気づいておらずその斬り跡からは、少しの血が滲み出る様子しか見ることができなかったのだ。そこになって初めてそのことに気が付いたのか、そのモンスターはその巨体を地面に落とすかのようにして倒れ込む。
その様子を少し離れたところで見ていたカミタニは、指示通りに動いたクロサキに感謝のつもりなのか、手を軽く上げている。
そして徐々にカミタニの握る剣に魔力が集中し始めるのを如実に感じ取る。以前何度かこのスキルを見たことがあるのだが、一言で感想を言うのであれば強力だが、燃費はかなり悪いだな。
「『光竜咆哮!』」
周囲に誰もいないとの知っているのか、カミタニの持つ剣は金色の光を纏い始める。そして目標となるモンスターが少し距離があるのだが、それを斬るかのよう振り下ろした動作をした。その瞬間、今まで以上の光を発し、その斬撃といえばいいのだろう、それに合わせるかのようにして一匹の大きな、と言っても10メートルほどの光の龍が現れ、そのモンスターに飛び掛かるようにして纏わりつく。当初は、そのモンスターもどうにかしてその龍を振りほどこうとしていたが、その体が徐々に光の粒子に変わり始めると、そのことに気づく前にそいつは全身を光の粒子に変え、その巨体を俺達の前から消したのだ。そのことを確認したのか、その龍は空気に溶け込むようにあのモンスター同様、自身の体を光の粒子に変えて見えなくなってしまった。
そのモンスター倒し終えたカミタニは、思い出すかのようにしてクラスメイト達の安否を心配するかのに、そいつらの方を見るかのように振り向きがなら、
「みんな大丈夫だったか!?」
そんなカミタニの質問に他のクラスメイト達は、
「かっこよかったぜ! カミタニ!」
「助かっぜ委員長」
「ありがとうカミタニ君!」
......なんだこの茶番劇は、というか俺は何を見せられているんだ?
こいつらは本当に魔族と戦う気があるのか? そもそもその前にそこいらのモンスターにでも殺されるんじゃないのか? 言っちゃ悪いがその方がいいような気がする、それが嫌ならあの日以降城の自室でいもっているお仲間を見習うんだな。あいつらの方がある意味懸命だからだ、あそこなら死ぬことがないんだからな、逆にこう中途半端だと返ってめんどくさい。
俺がこれだけ言うのには理由がある。それは、今この場を取り巻いている環境を作ったのがこいつらだからだ。
事の発端は、ユウトの一件が起きた後に、もう一度訓練ができそうなメンバーだけでこのダンジョンに潜ったことがあるのだが、その際にある奴が一匹のモンスターに攻撃され、それで重傷を負ってしまったのを、カミタニが見てしまったすべての始まりだったのだ。その日以降、強いモンスターが現れればカミタニがこいつらを下げて戦うというスタイルの繰り返しだ。やる分にはいいかもしれないが、そいつらの何故か俺が含まれてしまっているので、こちらをとしてはたまったもんじゃない。少なくともそのカテゴリーの中に俺が入っていなければいいのだが、何故かカミタニが頑なに主力メンバーだけで対処すると言って認めないのだ。それがダメなら、戦えてない奴は城でいもれっていう話なのだが、生憎そいつらは上昇志向がすごいようでまったく城にいもってくれないのだ。
だから俺は諦めるしかないのだが、この戦闘スタイルは、誰かが反旗を翻さなければずっとこのままだろうな。
だから一度だけ俺はメンバー追加の話をカミタニにした際に、加えてなぜそのようなやり方をするのか、と訊いたことがある。
その時あいつはこう答えた。
「僕は委員長だ。だからみんなのことを守らないといけないんだ。もうリンドウ君のような目に誰も合わせたくないんだ。君もそう思わないか?」
それを聞いて、俺はこう思った。
思わねえーよ! 何なんだこいつは! 頭がお花畑なんじゃないのか!? こんな奴ラノベのご都合主義野郎だけで十分だわ! ......それに仲の良かったユウトはもういなんだ、自己中だが俺には関係ない。
このように実際目にすると同じ人間なのか疑ってしまうレベルだ。
俺はここで再度こう思う......あんな奴の相手するとか、アカバネもハトバも苦労しているんだろうな。
「コウキ、今の動きはよかったぜ!」
「コウキ君、流石に偶には彼らにも戦わせないといけないわ」
カミタニに対してアカバネはサムズアップして、ハトバは彼の戦闘スタイルに対して注意している。
訂正、どうやら苦労人はハトバだけだったようだ。アカバネはただの脳筋だったのを忘れていた。
「諒太ありがとう。ところで由衣、なんでみんなを危険な目に会わせないといけないんだ?」
「......はぁー、もういいわ」
ハトバは言っても意味がないと理解したのか、溜息を吐きながら諦めていた。
「ん? そうか」
当の本人であるカミタニはキョトンとしている。
こいつホントに頭いいのか? IQが高いがEQは低いんじゃないのか?
そのことに気が付いていない彼はすぐに視線を移動させながら、
「ところで気になっていたんだけど......」
そう言ってカミタニはある人物を見つめる。
「ここ最近身が入っていないんじゃないのか? クロサキ君」
それについては俺も同意見だ。あのダンジョンでユウトが死んでしまって以降、クロサキはずっとこんな状態であるからだ。ユウトは知らないと言っていたが、クロサキは何かユウトと関係があるのか?
「......別に、いつも通りだ」
クロサキはいつも目線を外し、こう言ってはぐらかしている。
「はぁー、分かった。何かあったらいつでも言ってくれ、力になるから」
カミタニは説得が無理だと諦めたのか、溜息しながらも元委員長としての役割を果たそうとしているが、すでにクロサキの目線はカミタニを見ておらず、
「あぁ、分かった」
どこか気だるげな感じでそう答える、そしていつもこの二人の会話はこのように終了するのだ。
「はぁー」
俺もカミタニ同様つい溜息を出してしまった。だがカミタニと同じような気持ちではない、それにはカミタニ自身も含まれているからだ。
俺は魔族を滅ぼさないといけないのに、なんでこんな奴らと一緒に訓練をしないとけないんだ? ......まあこいつらのことはどうでもいい。
あの事件以降の初日に、この状況に陥ったのを見た俺はすぐに自分一人で実戦できる場所を探し、そこで訓練しているのだ。
俺は自分のステータスを開いて見た。
名前:ナリタ マサト
年齢:17歳
種族:人族
性別:男性
天職:聖騎士
レベル:56
体力:3400
攻撃:3400
防御:3400
俊敏:3400
魔力:3400
魔抗:3400
知力:3400
運:800
スキル:光の雨 黒い雨 滅魔球 言語理解 鑑定
称号:異世界人 復讐者 女神の加護
復讐者;大事な者を奪われ復讐を誓った者が貰える。復讐対象との戦闘の際ステータスが大幅に上昇する。
俺は再度周りの奴らを確認し、溜息をしながらステータスを閉じた。




