後悔先に立たず
頭が真っ白になった、それにめまいもする......何となく確信していた......だが、それが現実である知ると......。
そんな様子を見てお父様が痛ましそうにしている。
そして初めに私の口から出た言葉は......。
「なんで......なんで助けられなかったのですか!? すぐに行けば助けられたかもしれないのに!」
無駄だってことは分かっている......団長である彼がそう判断した上で帰っているということは、その可能性がないことを示しているからだ。
「あの時周りの状況が分かりませんでした。まだ魔族が潜んでいた可能性もありました。なにより私達の任務は勇者様達の護衛です、これ以上の被害を出す訳にはいきません」
そんなこと知っている......それでも!
「あなたはこの国で歴代最強! そして人族で1,2位を争う実力者! そんなあなたがすぐにでも行けば間に合ったかもしれないのに! あなたには力があるんでしょ!? 何のための力なのよ!? なんでユウト様を助けようとしなかったの!」
「アリシア! アレックスも同じ気持ちなんだ! もうやめなさい!」
お父様が止めようしたが無駄だった。これを彼に言うのはお門違い、そんなこと自身でも気づいている......だが感情がそれを許さないのだ。
「私達も帰還後再度ダンジョンに潜り、彼がいると思われる場所に行きました。しかしそこには何もなく巨大な穴が開いており、それ以外何もありませんでした。隊長のダニエルから聞いた話ではキマイラに襲われて彼を囮にしたと聞きました。なのでここからは、私の推測なのですが......」
彼はその事実を言うのが苦しそうにしながらも、
「彼は、キマイラと一緒に穴に落ちたのかと思われます」
「でもユウト様ならーー」
「恐れながら申し上げます。キマイラは一匹で国一つを滅ぼすことができると言われています。そしてそれを倒せたのは先代の勇者様のチームだけでした。経験の浅いのはともかく彼は一人です。仮に生きていたとしてもダンジョンの深層部、キマイラ以上に危険なモンスターもたくさんいます。そんな状況で生き残れるのは......仮に私であっても不可能です」
彼の言葉に絶望しながらも私は他の可能性を探しのだ......もしかするとユウト様なら、そう思って。
「なら......なら外に出たのでは!?」
いつものユウト様なら、ひょっこりと笑いながら私の前に現れるような気がしてそう言ったのだが、それを否定するかのように彼はゆっくりを首を横に振る。
「外には門番がいます。訊くと彼は出てきていないそうです」
すでに私が提示できる可能性は残っていない......つまりそういうことだ。
「では、ユウト様は......」
一縷の望みも残っていない、それを知っている彼も悲しそうに目を伏せ、それに答えた。
「えぇ......亡くなっているかと」
その後のことはよく覚えていない。
気が付いたら自室の前に来ていた。
そしてベットに俯せになると、
「なんで......なんで約束守らなかったのですか......ユウト様......」
もうこの世にはいない、それが届かないと知りながらも私は、彼に一言の不満とその名を呟く。
そしてこの時になって今更ながらにあることに気が付いたのだ。
「あぁ......私、彼のことが好きだったのね」
誰かに恋をするなんて......想像したことがなかった。一国の姫である私は本来、自国の権力と釣り合う国の御子息と婚約をする運命にある。例えで挙げるなら、アスラン帝国などの大国がそれに該当する。そんなことに何の疑問も抱かなかった.....先ほどまでは。
気づいてしまったんだ......自分の気持ちに.....そして、それに気づいた今......想いを告げればと後悔するしかない......なぜならその想い人は......もうこの世には、いないから......。
その現実を認めたくなくて、私はスーツを強く握りしめる。
そんな時、以前図書館で彼が言ったある言葉を思い出した。
『大切なものは失って初めてその大切さに気が付くんだ。俺もそんな経験をしたんだ。だからアリシアは、俺みたいになるなよ』
その時の彼は、過去を後悔しているようで寂しげに笑っていた。
私は、そんな彼の過去を知りたかったのだが聞けなかった......それを聞いてしまったら、今の彼との関係が何か変わるかもしれない、そう思ったから......。だがもしそれを訊いていたならば......もしそんな小さいことなど気にしないで、いつもの調子で彼にそれを訊いていたならば......もしかしたら、彼は今ここにいることができたのではないと......またいつものように、私の隣で一緒に笑っていたのではないかと......そう思ってしまうのだ。
あの日以降、お父様が私の自室に頻繁に訪れて何か言っていたが、私はベットに潜っていたのであまりその内容を聞き取ることができなかった。
だがいつまでこんな感じではダメだ、彼に笑われてしまう、そう思ってあの日、気分転換に外を出あるくことにしたのだ。
そんな時だ、二人の男女の声が聞こえてきたのは......。
何となく気になり、王族であることを忘れて聞き耳を立てていると、どうやら訓練の話をしているようだったが、女性の方が断ったのか男性の方はどこかに歩き去っていく。
あっ! 思い出した。
「俺には雪っていう彼女がいるんだが、ほらあそこにいる黒髪の女の子がそうなんだよ。かわいいだろ?」
「そうですねー」
「あれ? なんで不機嫌? 俺何かした?」
ユウト様は私の顔を覗き込むようにして尋ねので、私はその視線から逃れるように斜め上を見る。
「......別に、何も」
そう嫉妬したのを、まるで昨日のように覚えている。
「あの~......」
気づいた時には声を掛けていた。
「あなたはたしか......」
どうやら覚えてもらっていないようだ......少しショック。
「あっ、すみません。儀式の時には会ったと思うんですけど」
私は少し躊躇いながらも一応は王族であるので、少し威厳を感じさせるようにする。
「私名前はアリシア・ユーリシア。一応この国の姫という身分です」
その瞬間彼女の表情が変わった。
どうやら思い出してくれたようだ。




