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勇者が世界を救ったあと、僕は国を作ることにした  作者: あおいにじ
第二章:観測される側の論理
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ステータス測定

明朝。


エルフ中枢演算塔・外縁計測区画。


都市最奥ではない。


だが十分に異質な場所だった。


白い樹木を模した建築の内部。


壁も床も境界が曖昧。


光が流れている。


固定されていない空間。



猫族が小さく呟く。


「きらい……ここ」


「落ち着かないね」


葵も同意する。


視界に基準点が少ない。


距離感が狂う。



ジーナが淡々と報告。


「空間設計は認知干渉試験用」


「やっぱそういう施設か……」



中央区画。


円形の透明床。


周囲に上位エルフ数名。


誰も歓迎しない。


誰も敵意も見せない。


純粋な観測者の視線。



ひとりが告げる。


「計測を開始する」


前置きなし。



最初の試験。


単純認知負荷。


光点が空間に浮かぶ。


無数。


規則的。


だが完全ではない。



「違和を指摘せよ」


葵は一瞬だけ黙る。


考えない。


見る。



「……三つ」


上位エルフが反応する。


「位置は」


「右奥」


「中央上」


「……あと左手前」


短い間。


光点配置が変化する。



「正答率100%」


ざわめきなし。


ただ記録。



リオの試験。


同じ光点。


結果。


「正答率100%」


当然。


エルフだから。



猫族。


「正答率27%」


気にしない。


役割が違う。



次の試験。


干渉反応。


床の光流が変化する。


重力感覚がわずかに揺れる。



通常種族は補正できる。


自分の魔法で。



葵は一歩よろめいた。


補正魔法がない。


だが転倒しない。


無意識に壁を見る。


足を置く。



ジーナが静かに言う。


「姿勢制御補助を確認」


上位エルフ。


「外部補助か?」


「違います」


ジーナは即答。


「自律適応反応です」



試験継続。


今度は集団相互作用。


ここが核心。



葵・リオ・セラ・猫族。


四者同時配置。


空間条件が連続変化する。


光流。


音反射。


距離歪曲。



通常、同期は崩れる。


各種族の最適化構造が干渉する。



だが。


崩れない。


妙な安定。


揺れながら維持される。



記録官が低く言う。


「……再計測」


条件強化。


さらに歪める。



それでも。


大崩壊なし。



ジーナが静かに告げる。


「総合干渉値を算出」


空間に初めて数値が浮かぶ。


極めて簡素。


ただの観測結果。



リオ。


干渉値:10.0


予測通り。



セラ。


干渉値:10.0


当然。



猫族。


干渉値:10.0


役割最適。



葵。


わずかな遅延。


演算再試行。


三度。



表示。


干渉値:19.2



空気が初めて揺れる。


極めて小さく。


だが明確に。



上位エルフのひとり。


「……異常」


別の者。


「単体出力値は?」


再計測。



単体戦闘値:2.8


沈黙。



矛盾。


19.2という総合値。


だが個体戦闘性能は低水準。



ジーナが淡々と補足する。


「葵の数値は単純加算ではありません」


「説明せよ」


「未分化干渉構造を確認」


エルフたちが一斉に静止する。



「特化領域なし」


「全領域へ低強度接続」


「周辺個体の演算安定率へ影響」



短く要約される。



「この個体は」


わずかな間。



「場を変質させている」



葵はぽつりと言う。


「……高いの?」


誰も即答しない。



やがて記録官が告げた。


「規格外」


感情のない言葉。


だが意味は重い。



試験終了。


光が消える。


空間が静まる。



ジーナが静かに呟く。


「計測完了」



葵はまだ実感がない。


ただ一言。



「なんか、嫌な数字だな」



エルフ側はすでに理解していた。


この数値が意味するものを。


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