塵家の生霊
妖鬼は妖龍が吐いた妖影だった。
謝砂が黒豆でほとんどが消えたが塵家の生霊だけは消えずに残っている。
「生霊は桃展と桃常頼む。ちょっとここから離れてしばらく相手して」
桃常は謝砂が言ったことに「はい」と短く返事をした。
桃展は「なんとか頑張ります」と話し剣を握りなおして生霊と顔を合わす。
言われたとおりに生霊を引き連れて湖の左隅へと移動した。
向き合った塵家の門弟たちは携えていた剣を爛のように招剣し手に握った。
「魂だけで実体がないのに剣が扱えるんだ?」
桃常は近くにいた門弟の眠ったままの体を見ると有眉の姿があった。
門弟の一人ずつに呪符を貼っていた。
「体の目を覚ませようとしましたが呪符では魂は戻らないようですね」
塵有眉が門弟の体がある場所に飛んできたらしい。
「仙剣は霊気で扱えるものだからですよ」
「塵家の門弟の方たちは剣術は得意ですか?」
桃展は有眉に尋ねた。塵家と手合わせをしたことは数回程度で門弟とはしたことがない。
なるべく失礼のないように実力を聞いたつもりだ。
「いいえ。桃家の公子たちに剣術で及びません」
あっさりと自分のところの門弟に毒づいているように聞えるのはなぜだろう。
心優しそうな顔には似合わず身内にとっても辛口みたいだ。
「情けないですがこの者たちの霊力は低いです。しかも剣の扱いはヘタです。だからとっさの時に剣を抜けないぐらいです」
門弟に同情した。自分のことを言われているように思えてきた。
そのぐらいにしてあげて欲しいが有眉は言い続ける。
「私が祠に結界の陣眼を作るために一応連れてきたのですが、剣術ができる者は塵昌と外に残してきました」
突然赤い目をしたまま剣を展に振り下ろしてきた。
ぐっと剣で受け止めたが力が強い。ぐっと体の反動を使って払いのけた。
「そういわれますけど、手加減できないぐらい強いですよ」
桃常に剣を突き刺す早さは勢いがいい。
「妖龍の力が注がれているから持っている霊力よりも格段に上がったんだ」
「僕たちも力加減が難しくて斬ってしまうかも」
「大丈夫です。まとめて動きを封じてから結界で大人しくさせればいい」
「簡単に言いますけど何で縛るんですか? 魂の状態ですよ」
桃常が剣をよけながら有眉にきく。
「捆仙縄で捕えます。門弟がもってる仙剣でも切れないから時間は稼げます」
「「えっ?」」
桃展と桃常は同時に訊き返した。
「お二人は生霊になった門弟を一か所に集めてくださいますか?」
塵有眉の手には梱仙縄をすでに持っている。
「他家に口をはさみにくいのですが門弟を梱仙縄で捕えていいんですか?」
「はい。もちろんです」
捆仙縄は仙人も捕えれれる高価な仙器の一つだ。
悪鬼などの鬼や妖獣をとらえるのに主に使われる。
「ほんとうに?」
「悪さをするまえに捕まえないと。気にしないでください。普段からとらえるのに使ってますので」
有眉に言われるがままに塵家の生霊を桃常と桃展は囲むように挟み込んで集めた。
「離れて!」
有眉の合図にその場から後ろに離れ距離を取ると上から捆仙縄をかけて捕えるとそのまま縛る。
ひとまとめにされた生霊たちを引きづった。
「ご協力に感謝します」
有眉は両手を胸の前で合わせて礼をして手に生霊をとらえたまま縄の紐を握りしめている。
生霊も状況が分かっていないようで大人しいままだ。
そしてポイっと隅に投げて知らない間に陣を作っていた結界の中に入れた。
桃常と桃展は自分が桃家でよかったと心から思った。




