黒豆まき
「悪鬼なのか? 操られいるだけ?」
謝砂が呟くと桃展と桃常に言い返される。
「悪鬼なら別々に襲ってくるはずです」
桃展が言うと続いて桃常がいう。
「あれは妖龍が吐き出した妖気ですよ」
「同じなのに見た目の区別つくわけないだろ」
湖から現れた人の姿をしているものを爛が剣を飛ばしてかき消すが次々に現れる。
「追いかけてきた村人と同じですか?」
爛に桃展が尋ねた。
「あの鬼も妖龍の力だろう。獲物が自分から来るようにおびき寄せたんだ」
謝砂は祠を見てからずっと気になっていた。
祠から煙が出てきたのなら何か望みを叶えたのではないかと思っていた。
「祠の前で何を話してたんだ? 展、全部教えて」
「祠の前で塵家の人はどこって話を雪児と二人でしてました」
「あと展が僕たち以外にいるならはっきり確かめたいと言ってました」
「分かった。二人でお願い事をしたんだな」
「お願いごとに入りますか?」
「妖龍は願いを聞いて最初に塵家を吐き出したんだ」
爛が聞いていて口をはさんだ。
「塵有眉殿が助かったのは展と雪児のおかげだな。いい願い事したな」
「爛、褒めるところか? 願い事を叶えたから石像が動いたんじゃないか」
「吐き出したんだからいいじゃないか。願い事が叶ったんだから喜ばないと」
「そうだな」
謝砂はやけくそに返事をした。
「塵家の門弟がなぜかいます」
やたらと俊敏に動き邪魔してくるのは助けた塵家の顔だ。
「傷つけてはいけない。生霊に傷つけると魂が戻らなくなってしまう恐れがある」
「でも襲ってくるのを止められません」
剣で切りつけることもできずに防ぐ一方だが力が強くて押されている。
振りかざされた爪で穴が掘られる。
「ど、どうしたらいいんだ?」
桃柚苑が持っていた呪符を飛ばすと霊に当たってバンと呪符が燃えて煙となって姿が消えた。
妖龍と同じように謝砂たちに突進してくる。
手に持っていたのは湧水の小瓶と茶葉。
謝砂は持っていた黒豆茶の黒豆を握りしめた。
子袋の中から中身を取り出すと手のひらに小山ができた。
ずいぶんとサービスしてくれたようだ。
香ばしく炒った黒豆の香りがした。
味がよく出るように多少砕かれているが使えそうだ。
光霊石のように霊力を込める。
(黒豆って邪気払いできるって聞いたから効くかもしれない。豆まきだ)
「鬼は外!」
謝砂は叫びながら節分の豆まきをするように黒豆を撒いた。
「呪文か? これは鬼じゃないぞ。妖鬼だ」
爛に突っ込まれる。鬼も妖だろうが一緒じゃないか。
「豆まきには掛け声が必要なんだ」
謝砂を援護するように爛がさらに手を振って広範囲に豆を散らす。
黒豆は勢いをまして広範囲に当たった。
銃弾のように立て続けにあたり恐ろしい妖鬼は消えていく。
「よしっ!」
謝砂は喜んで両手を叩いた。
そのまま勢いよく黒豆は湖の中に落ちた。
黒豆は湖に潜んだ妖龍に降り注ぐ。
妖龍はもがくように湖から飛び出してきた。
うねってるのは蛇のようでぞわっと鳥肌がたった。
壁に体を擦りものたうち回るように湖の上を回る。
「あれ、なんか激怒してない?」




