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洞窟の中

謝砂は一心不乱に走った。

足が速かったことに感謝した。

こういうときになぜ御剣して逃げないのだろうか。

せめて呪符で動きを止めたりすればいいのに。

鬼も俊敏でぴったりと一定の速さで追いかけてくる。

「やはり祠に連れて行くんですね」

 追われているうちに山の中に入り上流に向かっているようで川幅が細くなってる。

 松明の灯りが見え、灯りに照らされて人の姿が見えた。

「あれは塵家の門弟じゃないか?」

桃常が指さす方を見ると薄いクリーム色に金粉が散りばめたような服を着ている人がいた。

「祠は近くにあるようです。塵家と合流しますか?」

桃常は爛に聞いたのだか、先に謝砂が「うん」と返事をする。

「追いかけてくる鬼は塵家に任せないか?」

 謝砂は提案した。

 ガサガサと足音を立て謝砂が騒ぎながら走っていたので塵家は気づいたようだ。松明の灯りで謝砂たちを照らした。

「桃家の公子殿だな。何を連れてきた?」

 尋ねた人は呪符を四方に飛ばして剣を地面に突き刺し結界を張った。

 叫び声は聞えるが入っては来れないようでうろうろとその場を彷徨って歩いている。

「あれは元村人だ」

 謝砂の短い説明に塵家の門弟たちは試されているのかと疑ってごくっと唾を飲んだ。

 桃常が補足して説明をした。

「鬼です。聞いた話では近くに村がありその村人が鬼となり祠に誘導するというのですが本当でした」

「爛様と謝宗主もご一緒だとは気が付かず失礼いたしました」

 剣は鞘におさめ持ち両手を胸の前で重ねて挨拶をした。

「塵家の塵昌じんしょうです。師弟たちとお待ちしておりました」

 宴のときはいなかったが謝砂を敵視したり睨みつけたりはしない。

同じ塵家でも恨まれたりはしていないようだ。

丁寧に説明をしてくれる。

「結界を張りましたが急なので朝まで持つか分かりません。張りなおすよりも彷徨ってる鬼は切った方が確かなので塵家に任せてください」

ありがたい申し出に謝砂は鬼と戦わされる心配がなくなった。

謝砂は少し落ち着いた話すことができた。

「祠の中には誰かいるの?」

「祠には姉上たちがいます」

「石像は動いたりした?」

「到着されるまで見張っていましたが石像は動きません。私たちが調べたことでは石像が動くという報告はなかったのです」

「分かった。鬼は塵家に任せて中に入ろう」

 謝砂は石像が動かないなら祠が安全だと先に中に入った。

 鬼になった村人を見ると気分が悪く吐き気で消化不良だ。

「待ってください。僕も行きます」

 桃展が謝砂のすぐあとに続いた。

 常、雪児、柚苑も謝砂を追いかけて中に入っていった。

 残っていた師弟に塵昌と一緒に見張りと鬼の始末を命じて爛も中に入った。

 謝砂たちは爛が来るのを待っていた。

 爛は顔を見るなり近づき謝砂の腕を掴んだ。

「謝砂一人で先に行かないで」

「お前たちもだ。罠が張られてたらどうするんだ」

「申し訳ありません」

「慎みます」

 素直に四人は爛に謝った。

「すぐに爛は来てくれるだろう。怖かったんだ」

 謝砂は爛が隣に来てから奥へと進んだ。

 洞窟と言っていたが蝋燭が岩壁の間にいくつもあり灯されているので明るかった。

 足元は藁で作られた敷物のおかげで滑りにくく参拝者に配慮されている。

 奥に進むと水滴がポタポタと床に落ちる音が聞こえる。

 壁はしっとりと濡れているようなところも進むにつれて増えてきた。

 謝砂には鍾乳洞のように思えた。

 壁に自然な窪みがあって謝砂は立ち止まった。

 溢れているように水が溜まっていた。

 鼻を近づけて匂いを嗅ぐと錆のような鉄臭い。湧水ではなさそうだ。

 蝋燭の灯りをゆらゆらと映す。

「思ったよりも狭いなあ」

 謝砂は小声て話したつもりだったが響く。

 洞窟を進むと扉が見えた。

「この先は用心しなさい」

 扉には呪符がベタベタと張られていた。

 中に塵昌は姉たちがいると言っていたが一本道なのに姿を見なかった。

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