20話
柳花は謝砂が陣を連発して傀儡を封じ込めている間に邪気を中和させていた。
袖で口元に流れた血を拭い、剣を鞘に納めて呪符を用意してタイミングを計る。
そして謝砂の数えている声を合図にし「ご」のタイミングで柳花が呪符を飛ばした。
呪符は背後から羅衛に衝撃を与え鞭が煙に戻り消えた。
爛は巻きついていた鞭が消えると残った煙を振って払う。
爛は謝砂が気になっていたが柳花に目で合図を送ると柳花は頷き謝砂の元に行く。
呪符に気を取られている間に爛は剣で羅衛の手を切り落とす。
血と一緒に腕輪も流れるように羅衛からすべり落ちる。
落ちた玉の腕輪に呪符をいくつも飛ばしてぐるぐるに包んで封じた。
飛ぶのに必死だった謝砂は鞭が消えたあとの見えない縄を飛ぼうとした。
だが、「ろく」を言う前に飛んだ時に左足の裏で右足の甲を蹴るように当たった。
当たったのは足の裏ではなく鞭が足に当たったと錯覚が起きた。
そのまますとんと地面に右足を下敷きに左足をのせて着地する。
右足が重たいのは鞭にあたったからだと思い込んだ。
重さが加わっただけと普通なら気が付くが謝砂は冷静じゃない。
「もうだめだ」
襲ってくるはずの鞭に頭を守るようにその場にしゃがんだ。
(右足がすでに重たいし痺れてきたのは腐ってきたからなんだ。どうすればいいんだ)
泣きそうな謝砂の隣にすっとしゃがむ気配を感じた。
「ご安心ください」
落ち着いた声に訊き返した。
「うん?」
「柳花です」
腕の隙間から覗き込むと柳花の顔があった。
謝砂は警戒していたが安心して足を伸ばして座り柳花の袖を握りしめた。
「頑張って飛んだのにこの足で立てないんだ。右足が痺れてる」
「謝砂様。気を確かに。毒には当たってないというか縄にひっかかってもないです」
「そうなの?」
「はい。見ていましたが謝砂様はご自身の足が当たっただけなのでご安心を」
「よかった。縄みたいな鞭が当たるのも触れるのも怖かったから必死で避けてたんだ」
安心して右足を見るが甲に足跡の泥が残っていただけだ。
「あっ、袖握ってごめんね」
握りしめていた手を離すと袖はシワになりパンパンと片袖づつシワを伸ばして詫びた。
「気にしないでください。爛様から謝砂様の体に招魂されたことを聞いています」
意外だった。思わず話してしまったということだろうか柳花は目を泳がせた。
「爛から聞いてたのか。姜はまだ黙っていて。知らないんだ」
姜にはまだ伝えるときじゃないと思った。だから爛も黙ってるのだと。
「私が話してしまったことも爛様には秘密に」
「了解。この持ち主のことを何も知らないから記憶を引き継げなかったんだ」
意外だったみたいで柳花は目をパチパチさせ謝砂を見つめた。
「そうだったんですか。術の正確さは以前の通り見事でした」
「わかんないけどありがとう」




