12話干からびた屍
泣き続ける謝砂は放置されたまま三人は冷静に屍を観察していた。
柳花は屍の側に座り目をつむり屍の額の上に指を二本出した。指先から目で見える電波のような霊力で探っている。
(あれが霊力を使う仙術というものなのかな)
謝砂は目が覚めてから見えなかったはずのものがこの世界にも適応したのか姜が送ってくれた霊力を感じてからというものサングラスをはずしたように鮮明になっていた。昔に封じていた霊感があふれだしたように敏感になっている。
「残像が見えません。血や生気を吸う妖獣や邪霊の類ではないようです」
「魂ごと吸われたのか。魂を喰うのは上級だ」
柳鳳が答えた。
「食魂獣なら普通は体も食べるのに美食家だな」
「爪がえぐれてる。老三が聞いたとひっかく音ってこれじゃない?」
姜は倒れている手の爪を指さした。こわばったまま固まっている。
(物騒なことを聞えるようにいわないでくれないか)
声に出して文句も言えずにぐっと震えに耐える。両手を合わせて握り締めるがブルブルと小刻みに震えてる。
「ふっ」
隣で爛が小さく咳込むように笑った。
口元を隠し目を反らすが明らかに謝砂を見て笑ったようだ。
(今更笑われてもなんとも思わないさ)
「一人だけじゃないはずだ。他にもいるはずだがどこに消えたんだ?」
柳鳳は辺りを見回すが気配は感じられないようで視線をまた横たわる屍に戻す。
「服も所々擦り切れてる」
生身の死体ではないのでその屍は作りもののようで現実味がなかった。その屍に煙が入りかすかに指が動く。
謝砂の反応が素早く爛が剣を抜いたのと同時にすっと手を伸ばして柳花の腕を引っ張った。
「離れなさい」
謝砂が引っ張ったのと同時に爛が言った。すぐに姜と柳鳳も離れて構えた。
人と人ではない物の区別もつく。煙や人じゃない存在が見えてしまっていた。
腕を引っ張ったまではよかったのだが、力の調整ができずに謝砂は足がもつれて尻もちをつく。
頭を通さず勝手に口から出た言葉だったが反応は早かった。
屍は生き返ったように柳花の首を狙って手を出した。
すばやく爛が呪符を飛ばすと手に張り付きパンと衝撃でその手は爆発したが、封じ込めず呪符は燃えつきる。
もう片方の手を伸ばして再び襲ってくる。
柳花は自分で剣を抜きその腕を切り落とし謝砂を起こした。
どさっと地面に落ちた腕を見てしまい柳花を掴んでいた手はすでに力が抜けていた。
「傀儡か?」
「「「うぉぉぉ」」」
なんとも言葉にならない叫び声のような雄たけびのような声が屋敷に響いた。
部屋の中や廊下からも屍が足をぎこちなく動かせて一斉に襲ってくる。顔は青白く目も白いがさっきの屍と明らかに違うのは吸われているのが魂だけで屍の体が干からびてないことだ。謝砂にとっては恐怖が倍増し涙も引っ込んだ。
「キョンシー!」




