セブンのBB入会の秘密
ニコに、アメリカでは鞭を、子どもに使った時代があるという話を聞かせた、とローランドから聞いたシンイチは、面白がってゲーム内の厩舎へ行って鞭を買い、ニコに見せた。テイマーの道具として、ダブルクリック、ターゲットして使うものなのだけれど、鞭を持っているグラフィックになるため、ニコは絶句。
その場で何もしていないのに、「いい子にしています!」と大慌てで約束したのだそう。
セブンにこれが効けば楽でいいのにとシンイチは愚痴っていた。
セブンは昨日か一昨日かに、ダンジョンでモンスターのターゲットの取り合いをやって、相手をl33tでひどく罵ったらしい。相手が日本人だったため、l33tのニュアンスが英語圏プレイヤーによりも悪く伝わったようで、向こうのギルドマスターから正式に抗議が入った。
モンスターのタゲ取りに関しては、向こうからも「こちらも指導不足で」というのでそこはいいとしても、言葉遣いが「日本人プレイヤーの品位を下げる」と言われてしまうと頭を下げるしかないだろう。
セブンはシンイチから小部屋で説教されていたし、あとから俺が相手をして寸止め抜きで一時間やっといてくれと言われて、コンボの早出しの練習を組み合わせてさせ、一時間かけて散々殺した。
セブンは一時間は逃げるなと言い含められてはいたらしく、一時間耐えて、ぷいと出て行った。今頃きっとデュエルグラウンドで発散しているのだろう。
シンイチは俺がセブンを追い回している間に、相手のギルドへ謝罪に行ったようだ。
王国内では、まあ、ぱっと見、日本人プレイヤーかどうかはわかりにくいから、日本人には使うな、英語圏のプレイヤーにはいいぞ、とかそういう切り替えはしづらいからな。
俺達が「ちゃんとした人たち」でないと、全員が何かあったときに味方してもらえなくなる。大勢で狩りに行きたいときにも、声をかけられづらくなるし、特にロックや、ニコのようなまだまだ殺されやすいメンバーが、「あの子は、あのギルドの!」とぱっと助けてもらえなくなるのは困るのだ、とセブンには言っておいた。
このサーバーにはかなりの数の日本人がいる。アルファベットの名前がついて、日本人らしくない人も多いし(それは俺達も)ギルドタグなしのサブキャラも多い。誰がどこでつながっているか、わかりにくい。たかが言葉遣いで、ではあるのだが、この王国にいる間は感情表現と言葉遣いが主な意思疎通の方法なのだから、丁寧にするのにはメリットが、罵詈讒謗にはリスクがある。
あの一時間は、まあ「罰は受けさせました」ということのためにやるわけで、俺達もセブンのあれがそうそうどうこう出来ないのはわかっている。でも、実のところあれはあれで、セブンにはいいところがある。わかりにくいけれどね。
セブンは、気まぐれだが実は結構やさしい。俺たち…正確にいうとシンイチがこの世界に来たばかりで、newbieだった時に、何度か助けられたと言っていた。セブンは誰かが見ているところでは絶対にそんなことをしないらしいが、誰も見ていない森の中や、人気のない街道沿いでnewbieを助けていたらしい。
前のアカウントの、もういないキャラではあるけれども、最初の方に作っていたキャラで森を歩いてPKに襲わせたりしてPvPの腕を磨いていたシンイチは、かなりHPが減っていた状態で歩いている時にセブンに
7L7:hey,jO ok?
…と呼び止められ、ヒールをかけられ、地面にマーカーと移動魔法のスクロールを落とされて
7L7:town marker
と言葉少なくではあるが、街へ飛びたきゃスクロール拾って飛べ、と勧められたことがあったそうだ。
PKが出やすいあたりを張っていたため、そのあとも時々会ったそうだが、いつも、hey,jo, ok?と声をかけて、PKと戦っている時にも
7L7:hey, wanna help? or not?
と聞いて、ノーと言われるとそのまま観戦、シンイチがやられたときには相手を殺して、グレーになるのに
7L7:get rez i keep all 4u
などと、lootしてロストしないようにキープしてくれたらしい。
ただし、それはいつも「誰もいないとき限定」。街のそばでやられている時は素通りだったそうだ。
セブンらしいと思う。あのnewbieがシンイチで、今その相手に説教食らってるとは多分気づいてないだろうな。きっと今も誰も見ていない所で、newbieっぽい誰かをhey DoOd, uok?と助けているのだろう。
ちょっと、日本人ギルドは堅苦しいからな。アヴァロンみたいな英語圏プレイヤーとの交流が増えたのはセブンにとってはいいことだと思う。




