日本ギルドとアメリカンギルドの差
結局、招かれたスパーリング大会にはニコもロックも参加せずに帰った。
それ以来、アヴァロンの城では外からお客が来ると必ず、アヴァロンの案内役がぴったりつくことになった。
アヴァロン中で「お手伝いに来て、待機していたらassasinに殺されそうになり、それを返り討ちにしたladyがいた」という噂になってしまったのはちょっと面白かった。
忍者ギルドのマスター、サイゾーはこの事件以来、日本人の知り合いが出来たことを喜んでしょっちゅうBBを訪れた。
ニコは、このサイゾーという外人プレイヤーに、あそこであんなにニコが動転していなければ、多分その場でサイゾーと女王の両方に謝罪をしなさいとギルマスから言われたであろうこと、実際に襲われただけで責任がなくとも、お客に行った先で失礼をしたという扱いになって、絶対(少なくとも表向きには)叱られただろうことなどを話して、日本文化は真似するのは難しいと感心された。
もちろん、そこでニコとロックが謝罪をしたら、相手が日本人ギルドであれば、ギルマスは恐縮しつつ謝罪を受け入れ、謝罪を入れ返して、自らのギルドのルールと慣習により、majereとRichardの処罰を確約するのがお約束だ、とギルマスが付け加えると、かなり考え込んでいた。
BBのrules and customsは、どうなっているのかと聞かれたので、もし、ニコがmajereのような真似をしたら、
1:体力がゼロになってSTAが多分残してもらえて10ぐらい、
2:当然その場で真摯に謝罪をさせられる
3:その後にギルマスの手によって瞬殺で町まで幽霊マラソン
4:もちろんギルドハウスで泣くほど説教される
5:ついでにバンクアクセス禁止の外出禁止に、さあ…何日なるか。
6:それで済まなければKOSでギルド追放になるだろう
――というような話も教えたら驚かれた。そこまできっちりとギルド員を教育しているアメリカ人は少ないからな、そんなものだろう。
日本人はチームワークとグループの規律と評判を大事にし、外向けの対応には気を遣うからそうなるのだと言われたサイゾーは、アメリカ人プレイヤーではそれは無理だろう、とあきらめたらしいが、日本人のギルドを紹介してもらって、しばらく在籍、異文化を楽しんだ。
チームワークを駆使した、前もって作戦のあるダンジョンクロール、全員がちゃんと提出した後、頭割りで公平に分けてもらえるゴールド、マジック武器などのアイテムをギルド幹部が采配して割り当てるとか、話し合いで譲り合いをするのが当たり前の日本人ギルド。
比べて、個人の技量と判断で適当に突っ込み、早い者勝ちで戦利品やゴールドをしまい込み、自分が使わないマジック武器をギルドメイトに高く売りつける…というような典型的な、力が全ての戦い系アメリカンギルドにしか所属したことがなかったサイゾーは、その違いにいたく感動していた。
日本人としての評判と、自分のギルドタグの評判を落とすような行為は「みんなに迷惑であるから」厳しく糾弾されて罰則規定があるとか、BPKをしたら追放されたり、日本人の情報網で、PKや、looter、詐欺をするプレイヤーの情報が共有されている…というような話もある。
それを聞いたますますサイゾーは日本びいきになり、自分そういうギルドを作るのだと張り切って、「まず、人を選べ」と助言されていた。
その後、小さな忍者ギルドを作り直したサイゾーは、無事アヴァロンと同盟を結び、assasinsだとか、covert workだとか…というようなロールプレイヤーたちとして活躍した。
真っ黒な服を着た忍者集団は、目立っちゃダメなんじゃ…というBBの助言により、式典に出るときは一般向けに変装している、なんていうことになっていたのがとても面白かったが、時々夜に、"good night m'lady *runs past*"なんて言う黒服キャラクターが城内に出没したとか、しないとか。
小さいながらも存在感のあるギルドとしてBBはますます評判が高かった。同盟ギルドが増えて、ニコの知り合いはどんどん増えていった。
PvPが嫌いで弱いプレイヤーだからとニコのことをあんまり買っていなかった俺は、弱くてもやりようがあるんだなあ、とちょっと感心した。
もちろん、練習といいつつ、時々ギルドハウスで殺すことにはしている。いつまでも死ぬのを怖がっていたらどこにも出られないからな。
あんまりいじめすぎるとニコがミサやシヴァに言いつけて、特にミサには追いかけ回されることになるけど、ほんとに、ニコはPvPがうまくならない。
生産系のスキルだけがガンガンあがっているので、本当に向いてないんだろうな。
さっきもちょっとノリでreskillかけたら、あとでギルマスに怒られた。やりすぎだってさ。




