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34 異星文明の痕跡

日本圏は順調に発展していて問題となっているのは勢力圏の拡大に比して人口増が追いつかない事だ。

まぁ、そんな事とは関係なく宇宙探査は続いていた。

そしてとうとう知性体の痕跡をある地球型惑星にて発見した。

惑星全土に広がっている様な痕跡ではなくて惑星の数ヶ所に点在する痕跡だ。

植民の為の基地みたいな感じで実際にそうだったんだろう。

それ以外には文明の痕跡が全く存在してはいなかった。

調査しても惑星にそれらしい知性体はいなかったから植民に失敗して撤退したのだろうな。


「それで何か進展は有った?」


「この惑星に基地を造った生物は地球人よりも少し小さめですね。地球人が使うには基地の作りが小さい」


「まぁ、それは見れば分かるよ。地球人が使うには天井が低いし廊下も幅が狭い。細長い蛇の様な種族でもない限りは我々よりは小柄だろうな」


「姿形は既に分かっています。彼等は石像を残しているので」


「それが彼等とは限らないだろう?」


「人の手に相当するものが有るのでまず間違いありません。蹄では機械は造れませんからね」


異星人の基地には宇宙船の残骸や動力装置などが放置されていた。

地下施設には密閉状態のままで中身が保存されている物も有ったりして様々な用途の機械が発掘された。

異星人の骨も散見されて石像が生前の異星人の姿形を現す物であることも確認された。


「機械か……それで魔法を使った痕跡は有ったのか?」


「全然ありません。動力も全て科学技術的に作り出していますね。魔法を利用していた痕跡は有りません」


「それは素晴らしい。何処から来たのかは分からないが魔法を使わずに宇宙を渡ってきたと言う事だな」


「その可能性が高いですね」


「その技術は手に入れたいな。我々は魔法なしでは何処にも行けないからな。このまま魔素乱流期に突入したら惑星から出れなくなる」


「それは少なくとも五万年は先の話です」


「地球はそうだけど宇宙中で同じとは限らないだろう?それにしても何故植民が失敗したんだ?魔素乱流期であれば生態系が魔法を使って拒否する事も無いよな。ロシアの失敗の時みたいに逃げる必要は無いと思うんだが」


「それこそ宇宙中で同じでは無かったからではないですか?彼等が魔法を使わずにこの惑星に来たからと言ってこの惑星の生命が魔法を使えなかったとは限らない」


「ああ、そうかそうだな。確かに昔がどの様だったかはまだ分かってはいないな。その辺りも含めて引き続き調査を進めようか」


それで調査を進めたのだがこの惑星では魔素乱流期そのものの痕跡が無かった。

地球で何度も起きている魔素乱流期に伴う生物相の入れ替わりが地層の化石を調べてもその痕跡すらないのだ。

生物相の入れ替わりは緩やかで大絶滅とかの痕跡は全く無い。

これは惑星の生態系が魔法で守られていて隕石等の外部からの影響が少なかったものと推定される。

そしてこれを踏まえて他の地球型惑星の地層を調べると同様に魔素乱流期の痕跡は無かった。

調査した限りでは地球が特殊なのだ。


「報告書を見る限り、この惑星では魔素乱流期が無かったと考えるのが妥当だな」


「はい。その点を除けば地球と変わらない様ですが」


「生物相は地球で言う恐竜の類が隆盛しているんだよな」


「動物で生態系の上位を占めるのは地球で言う所の鳥類か恐竜類ですね」


「知性体はいそうかな?」


「群れて集落らしきものを造る生物はいますが我々並の知能が有る生物は見つかってはいません」


「これからなのかこのままなのかは分からないが要観察だな」


「魔法は地球の動物並には使われていて観測済みなので人並みに使用する生物が発生するかどうかですね」


「それは分からないよ?魔法を使わずにこの惑星に来た異星人の痕跡が有るのだろう?もしかしたら魔法ではなくて道具の方が進歩するかもしれない」


「それは無いと思います。魔法が使えるのに魔法なしで道具だけ進歩するのは異常です。魔法を使わずにこの惑星に来た異星人は魔法を使えない状況で文明を築いたか種として魔法が全く使えなかったかです。魔法が全く使えない生物は現状では確認されていないので魔法が使えない状況で文明を築いたとするのが妥当でしょう」


「だとしたら彼等は何処から来たんだろう?宇宙で魔素乱流期のある地球が特殊な事は分かってきただろう?この惑星系の近辺にそれらしき惑星は無いぞ?」


「まだ見つかっていないだけでしょうね。きっと地球みたいな惑星が有るんですよ。もしかしたら魔素乱流期が続く魔法が全く使えない惑星かもしれませんよ」


「それは問題だな。宇宙に魔法が使えない領域が有るって事だろう?我々はその領域に入った時点で遭難する」


「それについては異星人の技術を利用すれば問題はないです。幸いな事に我々の培ってきた技術で再現が可能な技術の様ですし」


「それは少し違うな。科学技術的な再現はもう少し時間が掛かりそうだ。魔法を併用すれば再現が可能なんだがな」


「機械の作成過程で魔法を使っても出来上がった機械が同等の性能であれば問題はないと考えますが?」


「取り敢えずはそれで良いけど出来得る限り魔法を使わずに再現したいんだよ。それを実現した異星人がこの宇宙のどこかに居る訳だろう?魔法なしでも同等の力を保持したいんだ。何処でどの様に彼等と接触しても我々が後れを取らない様に」


この異星人の技術については研究を進めて大半の技術について実験的な再現には成功したのだが、反物質とかマイクロブラックホール生成とか兵器利用も可能な技術もあり対処を間違えると厄介な代物だ。

実用化には少し時間が掛かりそうだが技術をものにしても当面は日本圏だけで運用だな。


「早くものにしたいですね。でも異星人は魔法に対処できなくて惑星を撤退している訳でしょう?恐れる必要は無いと思いますが?」


「一万年以上前の遺跡だろう?ものに出来たとしても一万年遅れの技術だ。今頃、異星人がどうなっているかは想像もつかないよ」


「確かにその通りですね。一万年も文明が渋滞しているとは思えない。更なる発展を遂げているか将又衰退しているか。発展していると見て備えるのが無難ですが、一万年ですか。地球にはそこまで長きに亘って続いた文明は有りませんよ?」


「シナが五千年とか言ってはいるが繁栄と衰退の繰り返しで繋がっているのかも怪しい寸断された歴史だしなぁ。一万年前だと地球には真面な国が無かった頃だ。異星人が地球に来ていたら間違いなく植民されて人の歴史はそこまでだったな」


「それにしても異星人は何処から来たんでしょう?地球方面からではないですよね。地球が無事なんですから。すると銀河外縁に沿った地球とは反対側か銀河の内側からですよね」


「その辺りは宇宙探査を続けていればまた痕跡が見つかるだろうさ。地球型惑星を見つけたら丁寧に調査を進めようか」


日本は宇宙探査を進めながら異星人の痕跡を探し求めた。

そしてその痕跡の残る地球型惑星にて知性体を発見した。


「彼等は遺跡の異星人の子孫と見做して間違いはないのか?」


「石像の姿形に酷似しているからまず間違いありません。それに彼等はこの惑星の生態系に馴染んではいますが調べた範囲では類縁種が存在しないんですよ。生物種として周りの生物からは浮いているんです。これは異星から入植した者達の子孫だからだと思われます」


「まぁ、間違いなく撤退時に置き去りにされた者達の子孫だろうな。母星にしては文明の痕跡が少なすぎるし」


「でもそれにしては妙なんですよね。子孫らしき彼等は魔法が使えるんですよ。古代魔法人レベルではありますが」


「別に妙でも無いだろう?考えて見なよ。魔素乱流期の地球人が宇宙航行の技術をものにして植民を開始したら子孫は魔法を使えてもおかしくは無い。他の惑星系に行けば魔法が使えたらしいからな」


「でも突然魔法を使える様になると社会は混乱しますよ?これは我々の経験からいって間違い有りません。仮にその混乱を上手く乗り切ったとして魔法を使わない理由が分かりません。知っているでしょう?彼等の遺跡には魔法の痕跡が全く無いんですよ。魔法は便利なのに」


「母星では魔法が使えないんだろう?だったら魔法技術を発展させなかった可能性は有る」


「そこもおかしい。母星に残った者達と宇宙に出た者達とで能力に著しく差が出る筈ですよ?宇宙に出た者達は魔素生命のレコードから情報をいくらでも取り出せます。圧倒的に優位になるんです。魔法を使わないとの選択は無いと思いますよ」


「でも事実は認めないと。理由は如何あれ彼等は魔法を使ってはいなかった。地球人ではないんだ。我々には分からない理由が有ったんだろうさ」


「もう一つ妙な事が有るんです。彼等には遺跡に関する記憶がないんですよ。宇宙から来て移民した事も覚えていません。彼等の魔素生命のレコードに残っていないんです。変ですよね?彼等が子孫ならレコードに情報が残っている筈です」


「一万年の間に種の分岐でもしたのでは?それで分岐した魔素生命にレコードが無いだけの可能性があるよ」


「それも考えました。でもそれなら分岐前の魔素生命が存在しますよね?見当たらないんですよ。いるのは原住生物の魔素生命だけです」


「それなら話は簡単だ。彼等は元々魔素生命を持ってはいなかったんだよ。惑星の生態系に馴染む過程で魔素生命を創造したんだろうな。だから宇宙に出た者達と母星に残った者達との差も生じなかったし社会的な混乱もなかった。魔素生命が存在しなければレコードも無いからね。そうなると魔法を使える様になるにしても時間が掛かるだろうな。レコードが無ければ一から魔法技術を構築しないといけないからな」


「ああ、それなら充分に発展した科学技術を持っていれば魔法を態々使う気にはならないかも」


「そうだろうな。魔法を研究するのも一部のもの好きだけだろうな。我々だって魔素生命が存在しなかったら社会も混乱せずにそのままだったろう。魔法の存在に気付くのにも時間が掛かっただろうな」


「……そうすると魔素乱流期が有って魔素生命が存在しない惑星が有るって事ですか。異星人はそこから植民に来て失敗した訳ですね」


「まぁ、実際に如何だったかは分からないよ。全ては地球人だったらこうだろうって憶測だからな。彼等は地球人ではないからさ」








異星人の痕跡を発見し残された異星人の宇宙船の残骸やら植民基地やらを解析した結果、五年にして異星人の技術を用いた宇宙艇が開発され就航する事となった。

ワープやら亜空間航行やらが可能な優れものだ。

素晴らしいのは魔法を使わずに広大な宇宙の移動が可能なことだな。

欠点は建造費やら運用費やら維持費が膨大に掛かる事だな。

意外に早く異星人の技術をものに出来たのは科学技術を用いて魔法と同様の事が出来ないかを長年に亘って研究していた者達の御蔭だ。

研究中の科学的な推論だけであれば大量に構築されていたのだ。


そして魔法が使えない事態を前提に艦艇が建造されて乗員もその様に訓練しているのだがこれが意外に難しい。

日常生活でも意識せずに魔法を利用しているので魔法を使わずに物事を行う事は存外に困難なのだ。

ほんの百年前までは魔法が使えないのが当然だったのに。

例えばアイテムボックスへの収納は日常的に誰でも使っていて便利ではあるのだがこれを使わないとなるとまずものの整理から始めなければいけない。

そして昔の様に倉庫やら箪笥やらに物をしまって生活する必要があるのだ。

こうしないと魔法が使えない領域に差し掛かった時に亜空間内のものがどうなるか分からない。

真面な魔法回路が形成できなくて魔法が使えないとは推定されるのだが亜空間内のものはどうなるか?

人が死んだ時の様に元の場所に戻ろうとするのかあるいはその場にばら蒔かれるのかそれとも亜空間に入ったまま取り出せないだけなのか。

そう言った訳で亜空間系統の魔法については使用方法を厳格に定めて亜空間には最低限のものしか収納しないこととした。

その他の魔法についても同様に使用を制限して訓練を行っている。




異星人の扱いについて日本圏の始祖による会合が開かれた。

彼等についての調査報告が一通り済んで……


「さて彼等の扱いは如何しようか」


「彼等が遺跡の異星人の子孫で在る事は間違いないのよね」


「ああ、まず間違いない。二つの惑星系に類縁種として存在しているからな。どちらも取り残されて生き延びた子孫だろう。DNAを調べても差は交配可能なレベルの違いしかない」


「それで群れへの組み入れは可能なの?」


「日本の魔素生命に繋がれるかと言う話なら繋がれる奴もいれば繋がれない奴もいるだろうな。新たに魔素生命を創造して群れを拡大するのも手だとは思うんだが如何する?」


「彼等の魔素生命に私達が繋がれば良くない?」


「それは可能だとしても犬か猫の様になるだけだよ?上手く行っても彼等の一部が分岐して我々の従属種となるだけだ」


「それは難しそうね。地球人が彼等に対してそれ程優位に在るとは思えないし」


「一万年前なら彼等の方が圧倒的に優位だったけどね」


「対面した限りではシナ人よりは馴染み易そうなんだけど。でもこの為に新しく魔素生命を創造するのもどうかと思うのよねぇ」


「式神を使ってこちらの代表と向こうの代表は繋がってはいるから当面は良しとして如何しよう」


「良い方法を思いつくまではこの件は先送りね」


「でもなあ。探査を進めれば彼ら以外の異星人にも遭遇する可能性が大だろう?方針を決めておかないと面倒だよ?」


「だから良い方法が見つかるまでは方針も決めれないわ。当面はこのままで行くしかないのよ」


日本圏の始祖の会合で異星人の子孫については交流を深めて人として対等に扱う事となった。

知能や彼等の先祖の技術レベルで判断する限り、地球人が優位に在るとは言えないし、一万年前であれば地球人が劣位に有った事は確実だし。

それに彼等は都市国家規模の集落を惑星上に造っているので放置しても一万年後にはまた宇宙に出ている可能性も高い。

だから彼等を味方に付けておいた方が良いと判断した。

それで群れに組み入れたいので方法を模索中だ。

様々な生き物を群れに組み入れて群れを強くするのは古代魔法人から受け継いだ伝統だからな。








異星人の遺跡の御蔭で魔法を使わなくても宇宙探査が可能となった。

お金が掛かるから殆ど使われてはいないけど自由度が上がったのは確かな所だ。

日本圏以外の勢力圏へは少しづつ技術情報を出す予定ではいる。

他の勢力圏と異星文明圏との遭遇は充分あり得る話でその時に後れを取られては地球人としては困るからな。

だがこれは地球には洩らしてはならないトップシークレットだ。

もしシナ人がこの技術を手に入れたら宇宙に乗り出す事が可能となる。

シナ人が宇宙に乗り出すなんて考えたくも無い話だよな。

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