第11話「正体不明の精霊」
「――あの方? 試練だと? 貴様は一体……!?」
「待って、サターン……! この女性は人間じゃありません……! サターンと同じ精霊です……!」
「そんな……バカな……!?」
手のひらサイズの大きさから本来の人間の姿へと戻り、ネメシスの前に立ちはだかったサターンは、美月が気づいた事実を聞いて、驚愕の声を上げた。
しかし、ネメシスは目の前でサターンが人間に変身しても、自身の正体が見破られても冷静なままだった。
「ほう……半端な状態であるにも関わらず、本来の精霊である彼より先に私の正体に気づくとはな……。 どうやら既にあの力に目覚めかけている様だな?」
「ど、どうしてそれを……?」
まるで自分の魔力が見える目を知っている様な言い方に焦りが募る。
この力を知っているのは、自分と父とサターン、それからリンや爺やたち家族だけの筈……。
「僕と同じ……まさか、明日斗博士が言っていた精霊たちが組織するもう一つの敵とは貴様のことなのか!?」
サターンは何か心当たりを思い出したらしく、そう口にした。
するとそれを聞いたネメシスが目を細める。
「……ふむ、どうやらその様子では、私たちについて詳しいことは何も教えられていない様だな? それに、彼女の今の状態についても……」
「どう言う意味だ!?」
「当たりのようだな……。 まあ仕方があるまい。 十年前の全ての真相を知った君にまで離反されたら彼は終わりだろうからな……」
「貴様は何を知っているんだ!?」
十年前の全ての真相?
それはまるで、サターンが教えてくれたワールドユニオンによる意図的な暴走以外にも、まだ隠された真相がある様な言い方だった。
サターンもそれを知らない様で、目に見えて狼狽えていた。
「……まあ良い。 今の君たちが気にするべきは試練の方だ……。 黒土美月の中に眠るあの力……。 そして、偽物の君が持っている本物の彼の力を見せて貰おうか?」
「――ッ!? マジカルチェンジ!」
ネメシスの言葉に対して美月以上に反応したサターンは、変身魔法を発動させ、自身の機体を巨大化させた。
魔石が美月とサターンを飲み込み、それを核とし、機械の体を再構築することで、スーパーメカニカルウィッチとなったアークサターンが現れる。
その余波で風が巻き起こったことで、ネメシスが被っていたフードが少しだけ外れ、その顔の一部が露わになった。
緑掛かった黒髪に、まるで何かに絶望している様に光の消えた緑の瞳をした女性だった。
ほんの一瞬だったが、その顔は何処かで見たことがある様な気がした。
「お嬢様の敵なら容赦はしない!」
サターンは機体の競技用のリミッターを解除し、そのまま剣を躊躇いなく敵へと振り下ろした。
しかし、ネメシスは一歩も動じることなく、自らの手をかざした。
その手に禍々しい魔力が集まり、メカニカルウィッチが現れる。
「――****」
そのまま人間の言葉ではない精霊の言葉らしきものを唱えると、その足元に巨大な魔法陣が現れる。
――その場が巨大な光に包まれた。
*****
「――な、何なんだい!?」
草刈は部下たちと一緒に、観客席で見学する生徒たちから遠く離れた場所に隠れて、美月たちの機体のデータを集める為に、バトルフィールドの『市街地』を見ていた。
そんな最中、選手用の通路から大きな音がしたかと思うと、何かが吹っ飛ばされる様にバトルフィールドにある建物へと突っ込んだ。
思わず声を上げ、慌てて目を向けると、何とワールドユニオンの自分たちを圧倒したあの美月の機体が、建物の瓦礫の中で力なく倒れていた。
一体何が……?そう考える暇もなく、続けて通路から謎の機体が現れる。
それは巨大な機体だった。スーパーメカニカルウィッチだからじゃない。普通の機体よりも一回り大きいのだ。全長二十m近くはある。
本体は白を基調とし、緑の装飾が入った騎士の様な機体で、翼にも見えるマントの様な外装と、その身の丈に迫る一本の十字架の様な長剣を装備していた。
「リーダー。 あれが例のワールドユニオンが用意した戦力ですか?」
「あの美月様の機体を圧倒するなんて……とんでもない強さですやんす!」
一目見ただけで分かる別次元の強さを見て、何も知らされていない一隊員に過ぎない水島と炎炉が呑気にそう口にする。
でも、部隊のリーダーとして知らされている自分はそれどころではなかった。
「……違う」
「「リーダー?」」
「アタシが見た映像では、人型でない異形で、もう一回り大きかったけど……あの機体色と特徴的な剣は間違いない……! あれは……宇宙ステーションでの作戦で、別の特殊部隊を文字通り全滅させた……皆殺しにした機体だよ……」
「「え……?」」
その正体は、明日斗博士を確保する為の作戦を妨害し、本来ならば破壊がほぼ不可能な筈の魔石ごと、中にいる人間諸共ワールドユニオンの機体を葬り去った機体に間違いなかった。
*****
「お嬢様、ご無事ですか!?」
「うぅ……」
サターンの心配する声によって美月は目を覚ました。どうやら数秒の間、意識を失っていた様だ。
確か……スーパーメカニカルウィッチ?へと変身したネメシスの攻撃を防御したけど受け止めきれずにそのまま……。
安全な筈の魔石の中にまでその威力が伝わって来る程だった。
『美月、大丈夫!? 何があったの!?』
「――ッ!?」
焔からの通信で、今の周囲の状況を思い出す。
不味い。ネメシスの機体は父が作った実戦仕様の機体すらも圧倒する力があるのだ。
今一番危険なのは自分よりも、普通の機体に乗っている焔たちの方だった。
「焔! みんなも! 早く逃げて下さい! あの機体は正体不明機……テロリストです!」
お嬢様人格に切り替える暇もなく美月は周囲に警告を飛ばす。
しかし、それとほぼ同時にネメシスは十字架の様な剣に魔力を集めると、荒れ狂う暴風と轟く雷を纏った魔法の斬撃を飛ばして来た。
周囲の建物を破壊しながら飛んで来る斬撃を、咄嗟に盾で防御するが、その衝撃が中にまで伝わって来る。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」
「くっ……!? お嬢様!?」
『美月!? 止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!』
美月の悲鳴を聞いた焔は、ブラッドマーズを敵の元へと突撃させた。
『マーズ、アイツを止めるよ!』
『ああ、もう! 仕方がないわね! 行くわよ、焔君!』
『『マジカルスキル! 幻影の炎! さらに、マジカルスキル! マーズファイア!』』
焔たちは機体を影分身させ、敵を取り囲むと四方八方からマーズファイアを撃ち込んだ。
さらに……。
『『簡易変形! 吸血鬼モード! そして、マジカルスキル! マーズブラッドサイス!』』
機体の翼を展開させて、血の様な赤い鎌を作ることで、近距離戦闘に特化した姿となり、敵へと斬りかかる。
多数のマジカルスキルを使った連続攻撃。普通の相手ならこれを防ぐのは容易ではないだろう。でも相手は普通じゃない。
「焔、ダメです! それは意味がありません!」
自分も同じだからこそ、最初の短い攻防だけ分かった。こちらの動きを予測する様な動き。ネメシスは自分と同じ、人工精霊以上に魔力が見える目を持っている。
つまり、自分が対処できる攻撃はネメシスにも通用しない。
美月が必死に叫ぶがもう遅い。
『そんなもの……私たち相手には、意味をなさない……』
『――ッ!?』
ネメシスは迷うことなく本物のマーズファイアを片手で受け止め、そのまま握り握りつぶした。異常なまでの防御力だ。
さらにその剣に暴風と雷を宿す。さっき見た技だ。
『邪魔をするならば容赦はしない……』
そのまま至近距離から魔法の斬撃を放とうとする。
美月の魔力が見える目がその一手先の未来を写した。魔石ごと真っ二つにされたブラッドマーズの姿を……。
このままでは焔たちは……死ぬ。
「止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーー!!」
一瞬見えた最悪の未来を阻止するために、周囲の時間がスローモーションになる中、反射的に体を動かした。
「マジカルスキル! サターンスラッシュ!」
サターンから機体の制御を奪い取って、その補助なしにサターンスラッシュを起動させる。
光の剣が生成され刀身が伸びていく途中のまま、アークソードをネメシスへとぶん投げる。
追尾魔法でも何でもないただの剣の筈なのに、まるで導かれる様ににピンポイントにネメシスが発動しかけた魔法の斬撃へと命中し、強制的に暴発させると共に、軌道をずらす。
それにより威力が減衰し、本来の軌道とずれた魔法の斬撃がギリギリの所で焔たちの機体を掠めた。
その余波で翼ごと左腕が破壊されるが、マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になっただけで、焔たちは無事だった。
今はまだ……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」
「お嬢様!?」
今のはあくまでも一手延命させたに過ぎない。戦闘不能になったブラッドマーズからネメシスを引き離さなければ、状況は変わらない。
美月は機体にアークシールドを構えさせると、大型ブースターを点火させ突撃した。
ここでようやく思考が追いついたサターンが、美月の捨て身とも言える行動に悲鳴を上げる。
『まだだ……まだ足りない』
しかし、ネメシスはまるで瞬間移動するかの如く、攻撃をあっさりと躱すと、そのままガラ空きとなったアークサターンの背後に回り込んだ。
『もっと力を見せてみろ。 でなければこのまま死ぬぞ? 黒土美月?』
「あ……」
「――ッ!? 美月!?」
ネメシスの剣が美月がいる魔石へと迫って来る中、サターンの必死な声が聞こえた。
死の気配が迫る中、スローモーションになっていた世界は、まるで時間が止まった様に色を失い灰色になっていた。
その中で魔力だけが色を放ち、いつも以上にハッキリ見える様な気がした。
まるで自分が魔力に溶けていく様な、一つになる様な、不思議な感覚だった。
――そして、扉が開きかけた……その時だった。
視界に魔力でできた氷の矢が映り込んだ。
その矢がネメシスの剣に命中すると、色が戻り、止まっていた時間が動き出した。
『小春、今だ!』
『分かってるよ、冬馬!』
ゴーレムジュピターが美月たちと焔たちの機体を守る様に間に割って入って来る。
『あたしの友達に何してくれてんの!?』
『お前だけは絶対に許さない……!』
建物の上から弓を構えるウルフマーキュリーの姿が見える中、もう一機飛び込んで来る。
『私の大事な生徒に生徒に手を出すなッーー!! ベル!』
『うん、教子!』
『『マジカルスキル! 鈴の音の領域!』』
普段の優しそうな様子から一転して、激しい怒りの声と共に、鈴鳴先生たちの機体が現れた。
そのまま辺り一帯の魔力を変質させると、巨大な鈴が現れ、敵を閉じ込める。
『四人とも無事ね! ここは先生に任せて早く逃げなさい!』
『で、でも……!』
『心配しないで、緑木さん! これでも先生、昔プロにスカウトされたことだってあるんだから! それに学園の警備員もすぐに来る筈だよ!』
『わ、分かりました!』
鈴鳴先生に促され、小春は機体に急いでアークサターンを担がせ、ついでに足元に落ちていたアークソードを拾い上げると急いで焔たちの元へと移動する。
「小春、放して! 相手は普通じゃないんです!」
『ダメだよ、美月ちゃん!? 今は早く逃げないと!』
美月の魔力が見える目は閉じ込められた巨大な鈴の内部で、剣を地面に突き刺しているネメシスの姿が見えていた。
「鈴鳴先生ッーー!?」
美月が叫ぶのと同時に、巨大な鈴が破壊され、ネメシスの剣を中心とし、辺り一面に暴風と雷の嵐が巻き起こった。
その衝撃波により周囲の建物が倒壊していく中、敵が突然鈴鳴先生たちの目の前に現れる。
『……邪魔をするな』
『『――ッ!? マジカルスキル! マジカルシールド!』』
『無駄だ……』
鈴鳴先生たちは咄嗟に杖を構え、デフォルトで搭載されている防御魔法を展開すると、全力で後ろへと飛び退いた。
しかし、ネメシスはマジカルバリアとマジカルシールドの二重の守りを一振りで破壊し、戦闘不能にする。
魔石の表面に傷をつけられた鈴鳴先生たちの機体が地面に倒れ込む。もし後ろに飛び退いていなかったら今頃……。
『くっ、先生! マーキュリー!』
『任せろ、冬馬……!』
『『マジカルスキル! マーキュリーアロー!』』
こちらへと合流しようとしていたウルフマーキュリーが足を止めて、敵に氷の矢による狙撃を放とうとする。
『……同じ手は通用しない』
しかし、ネメシスは鈴鳴先生たちの機体を片手で掴み上げると、そのまま冬馬たちのいる方へと投げつけた。
『――ッ!? ぐわぁ!?』
『冬馬……!?』
それを見て思わず攻撃を中断した冬馬たちのいた建物に、鈴鳴先生たちの機体が突っ込んだ。
その衝撃で建物が崩れて、冬馬たちの機体も飲み込まれていった。
スーパーメカニカルウィッチを片手で持ち上げ、あれ程の威力で投げつけるなんて……。そのパワーも桁違いだ。
『そんな……冬馬! 鈴鳴先生!』
「小春、後ろ!!」
『――ッ!?』
小春がその光景を見て、一瞬茫然としていた間にネメシスはもうすぐそこまで来ていた。
スピードも異次元すぎる。魔力が見える目のお陰で、かろうじて風の様な超スピードで動いているのが分かるが、他の人からすれば瞬間移動している様にも見えるだろう。
『ごめん、美月ちゃん! 投げるよ!』
「小春!? きゃっ……!」
ゴーレムジュピターは担いでいたアークサターンとついでに拾ったアークソードを、咄嗟に背後へと投げ飛ばした。
そのまま後ろにいる美月たちを庇う様に立ち塞がる。
『ジュピター! あたしたちがみんなを守るよ!』
『わ、私も……頑張るよ、小春ちゃん……!』
『『マジカルスキル! ジュピターウォール!』』
ゴーレムジュピターが両腕を地面に突き刺すと、地面が盛り上がり壁となり、さらに樹木が生えて絡みつくことで、自然の力で作られた巨大な盾を生成した。
『無駄だと言った筈だ……』
ネメシスは再び魔法の斬撃を放った。
木と土、風と雷、自然の力を宿した魔法がぶつかり合うが、ほんの一瞬拮抗しただけで、直ぐに暴風と雷が巨大な盾を破壊する。
かろうじて威力こそは減衰させているものの、それでも大きな衝撃派が小春たちの機体に遅い、その鈍重な機体を吹っ飛ばす。
『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?』
『小春ちゃん……!?』
「小春! きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」
「お嬢様!?」
それを見た美月は咄嗟にアークサターンで受け止めようとしたが、そのまま巻き込まれる形で一緒に吹き飛ばされた。
二機は建物へと突っ込み、ドミノ倒しの様に連鎖する形で周囲の建物も倒れ、辺り一面は土煙に包まれた。
*****
「お嬢様!? お嬢様!?」
「うぅ……私……また……。 そうだ、小春は!?」
再び数秒の間意識を失っていた美月はサターンの声で目を覚ました。
慌てて小春を探すと、少し離れた場所に戦闘不能になったゴーレムジュピターの姿を見つけた。
盾を含めた機体本体こそはボロボロになっていたが、魔石本体は無事に見える為、その中にいる小春はとりあえずは大丈夫な筈だ。
美月が一安心していると、サターンが険しい目をしながら口を開いた。
「お嬢様、何をしているのですか!? 敵を前に武器を投げ、そのまま突っ込むなんて!? 本当に死ぬところだったんですよ!?」
「ご、ごめんなさい……」
サターンが怒るのは当然だ。あんなに自分のことを守ろうとしてくれていたのに、それを無下にする行動だったのは理解している。
でも、そうしなければ焔たちは間違いなく死んでいた。
だから申し訳ないと思ってはいるが、後悔はしていない。
「僕にとって大事なのはお嬢様だけなんです! 貴方さえ無事ならばそれで良い! 他の人間なんて知ったことじゃない!」
「サターン!! そんな言い方はやめて下さい!」
「――ッ!? ……幸い奴はこちらの位置を見失っている筈です……。 今のうちにお嬢様だけでもここから離脱させて……」
「待って下さい! まだみんながいるのに!?」
サターンのあまりの言い方に、美月は思わず言い返す。
自分のことを大事に思ってくれているのは痛い程知っている。だけど、初めてのお友達を……自分を助けてくれたみんなを見捨てて逃げるなんて絶対に嫌だった。
するとバトルフィールド全体に響く様にネメシスの声が聞こえて来た。
『――黒土美月、聞こえているのだろう? 逃げても無駄だ。 私はどこまでも君たちを追いかける。 それに、これ以上周りを巻き込みたくはないだろう? 私の直ぐ近くにいる赤い機体の様に……』
「――ッ!?」
全身の血が凍る。自分と小春は今ここにいるが、焔たちの機体はまだあの場にいる筈だ。
今はまだ奇跡的に誰も死んでいなが、ネメシスがその気になれば、焔たちは今にでも……。機体を動かし、落ちていた剣を拾うと、小春たちを巻き込まない様に移動させる。
これから取る行動の為に、母の形見であるペンダントに触れ、勇気のお呪いを唱えた。
「頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!」
「お嬢様!? 何をするつもりですか!?」
「わたくしはここですわ!!」
「馬鹿がッ!!」
ネメシスの狙いはあくまでの自分。周りのみんなをこれ以上巻き込ませない為にも、小春たちから離れた場所で、自らの居場所を叫んだ。
美月の行動にサターンが激怒するが、それと同時に魔法の斬撃が飛んで来て、辺り一面を吹き飛ばす。
隠れる場所がなくなり、再びネメシスと対面した。
「わたくしの命が欲しいなら、わたくしだけを狙いなさい! だから……!」
「ふざけるな!!」
続けようとした言葉は、サターンの怒りの声にかき消された。
その声には激しい怒りの炎が宿っていた。
「そんなの僕が絶対に許さない……! やっぱり……初めから間違っていたんだ……お嬢様を……貴方を……美月を戦わせること自体がッ……!」
「さ、サタ……」
サターンの本気の怒りに美月が戸惑う暇もなく、次の瞬間、サターンとのシンクロ率が0パーセントへと低下した。
「り、リンクが……!?」
コックピットにいたサターンのホログラムが消え、マジカルウォッチも機能を停止し、サターンとの繋がりが完全に途切れてしまう。
「例え美月に嫌われても良い……! それで美月を守れるなら……!」
「サターン!? どう言うことですの!?」
サターンに必死に呼びかけるも、通信すらも切られたせいで、その声は届かなかった。
一方で、その外側ではアークサターンの瞳の色が、美月の紫水晶の色と混じり合った美しい色から、サターン本来の怒りの炎の様な真紅の赤へと戻っていた。
さらに仮面が下へとスライドし、目元を顔を隠すことで、その隙間から赤い眼光が漏れ出て来る。
そして、サターンはまるで自分に言い聞かせる様に唱えながら、アークソードの剣先をネメシスへと向けた。
「――だから、僕が必ず美月を守る!!」




