プロローグ
――時は二一〇〇年。今から少し未来の地球の物語。
二十二世紀の始まりの年に、後の人類史の技術的特異点となる、未知の新エネルギーである『魔力』が、天才科学者である地ノ星博士夫妻によって発見された。
遥か昔、迷信とされた『魔法』と呼ばれる力の源にもなった魔力は、発達した化学によってその存在を証明され、魔法と科学が融合した新たな分野として、人類史に刻まれることになったのだ。
その後、地ノ星博士夫妻の研究により、魔力は意志を持ったエネルギーであり、過去の歴史では『精霊』と呼ばれ信仰されていたモノの正体だと判明することになる。
そして、その精霊に人間の感情を学習させることで、限りなく人間に近い人格を持つ、全く新しい生命体である『人工精霊』が生み出されることになった。
この人工精霊は誕生当初、魔女狩りの歴史によって魔法を失伝したことで、魔力を操作する術を失った人類の変わりに魔法を操る存在として、人間社会の歯車として組み込まれることになった。
それは人間が人工精霊を人としてではなく、ただの便利な道具としてしか認識していないことを示していた。
人工精霊は人間と同じ存在ではなく、進化した人工知能の様な存在として扱われていたのだ。
――しかし、それから時は経ち、二一二七年。
とある事故で命を落とした地ノ星博士夫妻の研究を引き継いだ、一人息子である明日斗博士のとある発明が、人工精霊への認識を大きく変えることになる。
本来は非物質の魔力を、高密度のエネルギーの塊として物質化させた『魔石』をコアとし、魔力を動力源として動く、人工精霊用の手のひらサイズの小さなロボットの体が開発されたのだ。
それにより、今まで実体を持たなかった人工精霊が機械仕掛けの体を手に入れ、現実の世界に足を踏み入れる様になったことで、少しずつ人類の隣人として認識され始める様になったのだ。
そして、明日斗博士がその小さなロボットを、機械仕掛けの魔女の意味を持つ『メカニカルウィッチ』と名付けたことで、人工精霊も後にその名で呼ばれる様になる。
それからと言うもの、メカニカルウィッチは、多くの人にとって自分たちと同じ人間として受け入れられる様になった。
特に生まれた時からメカニカルウィッチと一緒に育った子供たちにとっては、彼ら彼女たちは正に家族であり、兄弟姉妹であり、そして相棒の様な存在として、強い絆で結ばれる様になったのだ。
――そして、そんな子供たちを含む若い世代を中心として、自分と相棒の絆が世界で一番なんだ証明する為のとあるスポーツ競技が誕生することになる。
競技用に開発されたバトル専用の武器と防具を装備した世界で一つだけの相棒と共に、普段は安全面の為に、様々なリミッターがかけられているメカニカルウィッチの機能を、安全対策が施された専用のバトルフィールドで解放させる。
最先端の携帯端末である『マジカルウォッチ』の機能により、人間とメカニカルウィッチと五感と思考をリンクさせ、一緒に戦う競技である『ウィッチバトル』は、爆発的な大ムーブを起こすことになった。
だがそれだけでは終わらない。
その後、ウィッチバトルはメカニカルウィッチを管理する組織の手によりさらなる進化を遂げることになる。
巨大なスタジアムの内部に作られた高濃度の魔力空間である特別なバトルフィールドの中で、本来は手のひらサイズのメカニカルウィッチの機械の体を、高濃度の魔力を利用し再構築させ、人間を遥かに超える巨大な機械の体を持つ『スーパーメカニカルウィッチ』へと変身させる。
まるで昔夢見たロボットアニメの様に、巨大なロボットに乗り込んでバトルできる様になったのだ。
そして、それは従来のウィッチバトルがより進化した競技である『スーパーウィッチバトル』とされ、世界的な大ムーブを巻き起こすことになった。
それにより最早、世界規模で人気を爆発させたウィッチバトルは、今世界で最もメジャーなスポーツ競技となることになった。
さらにその中でも、一年に一度行われる世界大会で優勝したチャンピオンは、世界で一番の相棒として、メカニカルウィッチを愛する多くの人の憧れの存在となる様になったのだった。
――そして、二一五〇年現在。
現代へと甦った魔法と共に生まれたメカニカルウィッチは、今や人類の相棒として、なくてはならない存在になっていた。
その裏で、メカニカルウィッチを己の目的の為に利用しようと企む者たちの存在を生み出しながら……。




