092 感謝と誓い
扉を開けて入ってきたのは、たった今まで話題の中心にいた人物――リオン・コルニクスだった。
「……リオン先生」
「…………」
本人がやってくるとはと驚く俺に対し、彼女が困惑している様子はない。
事前に俺がいることを聞いていたのだろうか。
そう疑問に思う俺の横で、イデアーレがリオンへ視線を向ける。
「事前に許可を取っていた部分については説明済みよ。あとは、貴女自身の口から伝えなさい」
「――――はい」
頷いたリオンが、俺のすぐ前まで来る。
そして、漆黒の双眸をじっと向けてきた。
「私の過去や処遇については、既に聞いたのだな?」
「はい。その……」
「狼狽える必要はない。君には知る権利があるし、私もそれを望んでいた」
少しだけ、間が生まれる。
俺は改めて、リオン本人へ確かめるべく問いかけた。
「教師を、続ける気になってくれたんですね」
「……正直、迷いが消えたと言えば嘘になる。今の私にその資格があるのかも、自信がない」
一度言葉を切り、リオンは続ける。
「ただ、それがあの子と……シルクと最後に交わした約束を果たすことに繋がるのであれば、そうしたいと思った。だから――」
「っ、先生!?」
突如として、リオンがその場に跪く。
深く頭を垂れたその姿は、まるで騎士が主に対し、最上の敬意を示すかのようだった。
戸惑う俺に向けて、リオンは告げる。
「そのきっかけを作り、手を差し伸べてくれた君に、私は心から感謝している。君がこの身を求めるのであれば、どのような形であれ力になることをここに誓おう。アレン・クロード――――いや、アレン。これがあの日、君が問いかけてきたことに対する私の答えだ」
「………………」
あの日。
戦いの果てに俺が差し出した手を、彼女はようやく取ってくれた、ということだろう。
その想いの強さを、静かに受け止める。
その上で、俺が返すべき言葉も決まっていた。
俺は彼女に右手を差し伸べながら、力強く告げる。
「ありがとうございます、リオン先生。ならどうか、これからも俺たちの担任として皆を引っ張ってください……それと、できれば引き続き、剣の指導もお願いします」
――あの日、俺は確かにリオンに勝利した。
だがそれは決して、俺の方が強かったからでも、剣の扱いに長けていたからでもない。
俺を殺めることのないよう加減していた彼女の隙を突き、冥星剣エクリプスの真価を発揮した――その結果に過ぎないのだ。
それはリオン自身も承知しているのだろう。
ふっと笑い、彼女は俺の右手を掴んだ。
「いいだろう。ただし、既に私は君の本当の実力を知っている。以前までのような軽い指導で済むと思うなよ?」
「――望むところです」
軽口を交わしつつ、リオンが立ち上がる。
ただ、一つだけ確認しておかなければならないことがあった。
「あっ、でもその……俺が訊くのも変な話ですけど、左腕がない状態でも大丈夫なんですか? 確か、利き腕でしたよね」
「ああ。片腕でも、指導程度なら何の問題もない。それに後日、学園長が私専用の義手を用意すると言ってくれたからな」
「そうだったんですね。ありがとうございます、学園……」
イデアーレへ感謝を伝えようとして、俺は言葉を止めた。
「………………」
どういうわけか彼女は頬をわずかに赤らめ、口元を抑えながらこちらを見ていた。
「学園長? どうかしましたか?」
「い、いえ、何でもないわ。ただ……二人のやりとりが、想像以上に親密に見えたというか。受け取り方が、色々とありそうというか……」
「「…………?」」
小首を傾げる俺とリオン。
そんな俺たちの前で、イデアーレは「こほん」と咳払いをした。
「義手についてだったわね。ええ、任せてちょうだい。魔工学部門の精鋭とともに、元の腕以上のものをお届けするわ……少し、時間はかかると思うけれど」
「いえ、用意してくださるだけで十分です」
そう答えるリオン。
――いずれにせよ、こんな風にして。
リオンは正式に、ステラアカデミーの一員となるのだった。
◇◆◇
『パンパカパ~ン! 挑戦者の知恵を称えましょう。貴方に、奥へと進む資格を与えます』
約一時間後。
俺はその足で【英知の書架迷宮】へとやってきていた。
復帰初日ということで、リハビリ代わりに攻略済みのダンジョンへ挑戦しようと考えたのだ。
「ホホォー!」
「aaaaaA!」
いつものようにギミックを突破した先、最奥で待ち受けるのは巨大な梟――グランドオウル(レベル45)と、四方の本棚から飛び出してくる魔本――グリモアの群れ(レベル30)。
以前、中間試験の前日に一人で挑んだ時、俺のレベルは38だった。
対して、現在は44。
敵とのレベル差が6も縮まった事実は大きく、さらに不死人形によるパラメータ上昇分を含めれば、もはやこちらが圧倒的格上といっても過言ではない。
「――ふっ」
飛びかかってくるグリモアをナイトブリンガーで薙ぎ、回り込んでくる個体はプロテクトでいなす。
頭上のグランドオウルには、聖錬炎球を発射。
結果、以前は多少なりとも苦戦した相手を、今度は危なげなく――それこそ淡々と処理し切ることができた。
すると、
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
「おお、きたか」
響き渡るレベルアップ音。
恐らく以前ジュリアンを倒したタイミングで、45レベルの目前まで経験値を稼げていたのだろう。
ここでの討伐が、最後のひと押しになったらしい。
そして、本命はここからだった。
『ジョブ熟練度獲得 ジョブレベルが1アップしました』
『ジョブスキルの補正値が上昇します』
『ジョブスキル【マナコネクト】を習得しました』
レベルが45に上がったことで、ジョブレベルが上昇。
そして俺は、新たなジョブスキル――【マナコネクト】を獲得するのだった。
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アレン・クロード
性別:男性
年齢:15歳
ジョブ:【ヒーラー】
ジョブレベル:4
レベル:45
HP:3481/3330(+452)
MP:1048/1170(+396)
攻撃力:466(+82)
防御力:408(+61)
速 度:443(+78)
知 力:579(+102)
器 用:383(+66)
幸 運:421(+72)
ジョブスキル:ヒールLV10(MAX)、ディスペルLV4、プロテクトLV6、マナコネクトLV1
固有スキル:リジェネヴェールLV1
汎用スキル:ファイアボールLV7、ウォーターアローLV5、瞬刃LV6
パッシブスキル:身体強化(小)
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【マナコネクト】LV1
属性:無
分類:支援系統の中級スキル
効果:対象者との間に経路を繋ぎ、魔力の受け渡しを行う。
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