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ブラックジャック

 内通者であろうと何であろうと容赦はしないという脅しだったが効果的だったのだろう。

 2枚の金貨を賭けたグリムに対して男は1枚であり、ディーラーはデッキを木箱の上に置き指で一枚ずつずら滑らせるようにしてカードを配っていった。

 そして全員の前に二枚のカードが並ぶ。


 グリムは8と4、男に2と7、ディーラーの札はオープンになっている物が8で伏せられているカードが一枚。

 ブラックジャックは2~9の数字札はそのままにAは1か11で好きに選べる。

 それ以外の絵札と10のカードはそのまま10として計算して合計で21に数字を近づけるゲームだ。

 ただし21を超えれば必然的に負けとなる。

 細かいルールを言うのであればディーラーとプレイヤーの勝負であり、ディーラーは16以下の数字の時は必ずカードを引かねばならず、17を超えたらどれだけ確率があろうともそれ以上カードを引くことは許されないのだ。


 ゆえにこのゲームはカジノや賭場では珍しくプレイヤーが有利な状態で進める事の出来るゲームである。

 少なくとも丁半博打やポーカーなどに比べれば十分勝ちの目があると言える。

 またプレイヤーはカードを引く際に四種類の宣言ができる。


 まずヒット、これはカードをもう一枚引くという宣言でありスタンドというこれ以上カードを引かないという宣言と同様基礎中の基礎である。

 次にヒットの発展形が二つ。

 ダブルと宣言すれば掛け金を二倍にして一度だけカードを引くことができる。

 このルールの肝は、一度ダブルを宣言すればそれ以降カードを引けないという点。


 確率的に言うのであれば絵札が全て10として扱われる以上3分の1の確率で10の数字が手元に来るため10か11で宣言すれば3割の確率でほぼ負けない手札が作れる。

 そのかわり2や3と言った低いカードが来た場合はディーラーがバスト、21を超えてしまう事を祈るしかない諸刃の剣である。


 これは好みにもよるが11では不足と見て12~14でダブルを宣言する者もいる。

 この場合3割近い確率でバストするが、9~7の数字であればそこそこの手札を作れるという利点がある。

 が、やはりAや2、3、といった低い数字を引くと首を絞める事になる。


 そして最後にスプリット。

 同じ数字、例えば8が二枚手札に来た場合などに宣言できるものであり場に出している掛け金と同額をその場に置くことで手札を二つに分けてしまう事を言う。

 掛け金が倍になるという点は同じものの、その実態はだいぶ違ってくる。

 まず手札を二つに分けてしまうため、一人で複数の手札を展開しなければいけない。

 先程の例を引き継ぐのであれば8が二枚、ゲームとして16という手札は最弱ではないが最悪と言える。


 理由は前述のディーラーに関するルールだ。

 ディーラーはかならず17を超えるように手札を作らなければいけない。

 つまり確実に相手は自分の手札の数字を超えてくる。

 ディーラーの手札を見て勝てる数字はバストのみ、引き分けはありえず、17~21は敗北と言う状況でありながらこれ以上カードを引いてもバストする可能性が相応に高い手札である。


 10の数字を求める場合は3割近い確率で、9や8と言った数字を含めてそこそこの手札を狙うのであればさらに確率は上げられるがこちらはA、2、3、45の5つしか許されない。

 13枚のうち5枚、こちらも10の数字が手札に来るのと同じく三割近い確率だがバストの危険を考えるとこれ以上のヒットは危険と判断すべき数字である。

 その可能性を排除できるのがこのスプリットであり、手札を二つに分ける、16の手札を8で始動する手札に変えてしまうのだ。


 そうなれば、再び微妙な数字を引き当てない限りは安泰である。

 うまくAでも引き当てれば手札は19になり、ゲームの名称ともなっている21、つまりブラックジャックや10を二枚重ねられない限りは負けないのだ。

 またこれは比較的まれなケースだがAが重なった場合や2、3といった低い数字が重なった場合、そしてそれなりの確率だが数字札の10と絵札が重なることもある。


 そのどれもがスプリットの宣言が可能である。

 10と10のスプリット、つまり20の手札で宣言する意味があるのかと言われれば……実のところさほど意味はない。

 もはや好みの問題であり、その状況でスプリットを選ぶのであれば安定した勝利を捨てての博打と言っても過言ではない。


 さて、これらがカードを引く際のルールだがもう一つだけ重要なルールがある。

 それはインシュランスという物であり、ディーラーは一枚目のカードはオープンにするが2枚目は伏せている。

 つまりプレイヤーはそのカードを見る事ができないのだ。

 その場合で相手の数字が今どれほどなのかを予想するのも醍醐味だが、Aがオープンになっていた場合3割の確率で自動的にプレイヤーの敗北が決定する。


 そうなってしまえばかけた金額は無駄になるのでそれを防ぐ仕組みであり、掛け金の半分を支払う事でディーラーは伏せられたカードを確認することができる。

 その場合10の数字であれば掛け金と支払った金額分が返金される事になるが、このルールにも落とし穴はある。


 支払ったところで21になっていなければインシュランスに使った金は没収される。

 そして布施札がAでありオープン札が10であればインシュランスはできないという点だ。

 また確率は3割であるためインシュランスをする必要性が確立上では乏しいというのもまた重要な点である。


 特定の場合、例えば自分が既に最初に配られた二枚で21、ブラックジャックになっている場合はインシュランスをする意味はそれなりにある。

 まずインシュランスで見事的中させることができれば、今のグリムのように2枚の金貨を賭けていた場合1枚を支払い3枚のキャッシュバックとなる。

 そして引き分ければ掛け金は手元に残るため実質勝利する以上のバックが得られるのだ。


 ではインシュランスを外した場合はどうなるか、この場合最悪のパターンはディーラーの布施札が5以下の時であり、その状態から自力で21、ブラックジャックに到達されることだ。

 そうなるとインシュランスの金貨1枚は没収され、掛け金は手元に残り結果金貨1枚の損となる。

 ではインシュランスをしたうえで勝利した場合は、金貨1枚はそのまま没収される事になるが掛け金の金貨2枚を貰えるため金貨1枚分得をすることになる。


 では他の場合ではどうだろうか。

 例えば手札が8と8、16の場合ではどうか。

 スプリットから8始動の手札に変える事を見越しているのであればインシュランスにチップを使うよりもスプリットの為に残しておく方がいささか健全である。

 つまりインシュランスの価値というのはゲームを盛り上げるためのルールであり実際のところはあまり使われることのないルールである。

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