21
一方その頃グリムはというと。
他の2人よりもしばらく遅れて試合を開始していた。
こちらも初手はチェス、ナルと違い純粋にじゃんけんに勝って白駒を手にしたグリムは機械のように最適手を打っていく。
そして定石通りかと思わせたところで当たり前のように新手を打ち相手を動揺させ、そしてナルのように小賢しい手段に頼らず純粋にその腕前のみで早くも3勝を挙げていた。
「次」
短く告げるグリムの前にはナルの二人目同様トランプを手にした男がいた。
「21って知っているかい? 」
「21? 」
「ブラックジャックって通り名の方が有名か? 」
「それなら知ってる」
ならば良しと頷いた男はトランプをケースから取り出す。
しかし一つではなく二つのトランプデッキを手にしている。
「じゃあそれで勝負だ、金は持っているかい? 」
「ん」
ちゃりちゃりと金貨を積み重ねるグリム、食費に武器にと割と金遣いの荒いグリムだが蓄えはそれなりにあるのだ。
「10枚で良い」
「10枚? 」
「あぁ、チップの代わりだ。互いに勝負をしてデッキが切れるか掛け金がなくなるか、それで決着としよう。デッキが切れた場合は持っているチップが多かった方の勝ちだ。当然この勝負で勝ち取ったチップは全て勝者の持ち逃げだ」
「ちょっとなによそれ! 」
あまりにも一方的なルールの請求、それに抗議の声をあげたのはサキだった。
「勝負のルールはこっちが決めて構わないという話だったから決めたんだが、部外者はすっこんでな」
「なっ……」
「それで、いい」
言葉を失ったサキとは対照的に、かかってこいと視線で伝えるグリム。
男はニヤリと笑みを浮かべてデッキをシャッフルしようとしたところで、グリムに剣を突き付けられた。
「フォールス、シャッフル」
「……なんのことやら」
「いかさまは、無駄。それにカードの確認、まだ」
グリムの射殺すような視線に恐怖心を抱いたのか、はたまた眼前の刃に恐怖したのか男はあっさりとトランプの束をグリムに手渡した。
それをざっと見たグリムは適当な見学者にシャッフルとディーラーを頼んでゲームは始まった。
そのディーラーにも金貨を手渡した。
数えるのもばからしいが、ざっと50枚はあるだろうか。
「ディーラーも賭ける、カジノ式、ディーラーが失った分は請求しない、これで多い方が勝ち……じゃつまらない、掛け金がなくなった方の負け。でも……いかさまは、指を落とす」
きっちりと二人にくぎを刺してちゃっかりルールを追加するのだった。