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一方その頃どこぞの玉座にて。
「あれはなかなかに面白い男ですな」
「ほう、マジャクがそこまで評価をするとはな」
「いやいや、評価なぞしとらんですぞ陛下。面白い、しかしそれだけの男でございますれば」
「ふむ……して、英雄の原石は見てきたか? 」
「えぇ、残念ながら女でしたので血族の増員には期待できないでしょう……通常であればですが」
「成長促進の魔術、いや錬金術の分野だったか? しかし血の劣化までもが促進される可能性があっては無意味であるぞ」
「そこは、ほれ。もう少し時間と費用さえいただければ儂も粉骨砕身努力する所存ですじゃ」
「……抜け目のない男め。いいだろう、持っていくがよい」
「ありがたき幸せ」
「して、原石の名は」
「サキ、サキ=ミサキと名乗っておりました」
「ほう……後でハングドマンに教えてやれ。あ奴にはその原石に与える力を持たせておる」
「かしこまりました。ではこれにて」
そう言い残して転移の魔術で姿を消したマジャクに、陛下と呼ばれた男は苦々しげな表情を見せていた。
「業突く張りの糞狸が……」
小さく毒を吐きながら……。